ツイッターで面白い呟きを見ました。
「私の乗るクロモリフレームは全パイプが丸断面だから全方位風の抵抗が小さいから、ある意味エアロ!」
たぶん、本気で言ってないでしょうけれど面白い発想だなと思いました。
風って正面から吹く事なんて稀ですからね。
そこで、エアロロードって主に正面からの風と、メーカーによって検討の差異はありますが12°くらいのヨー角から吹く風なども考慮したりと様々な検証を行って、その検討・検証結果から最適な形状を見つけて現行のエアロロードは生まれています。
どういう経緯であれ、大なり小なりカムテール形状と言われる翼断面形状のしっぽを切り落とした様なカタチのパイプ形状をしている事が多いです。
これじゃあ横から風吹いた時は、確かに丸パイプで製作されたクロモリより風の抵抗大きいだろう!
と考えるのが普通です。
では、何故エアロロードは全てあんな形状になっているんでしょうか。
まず
風速が何m/sになると、どれくらいのキツさなのか?という定義みたいな表を見つけたので先に参考で貼っておきます。
私も実際にロードバイクに乗ってロングライドに出掛けると、強風の日は「うわっ!」と驚く様な横風を喰らう事があります。
正確な風速はわかりかねますが、さきほど貼った表からしてそういう驚く風ってのはむっちゃ強い時でも「5.疾風」くらいじゃないでしょうか。
わからんけどw
実際、台風などが上陸して8.疾強風あたりの風速になると身の危険を感じるじゃないですか。
歩けない事もないけど、安定性でロードバイクより優るママチャリだって乗るのは躊躇われます。というか、まともな神経していたらこんな日はチャリには乗らないでしょう。
そこで、ある程度の目安でしかないんですけど「5.疾風(8.0~10.7m/s)」が、普段ロードバイクに乗っていてキツめの横風に晒されたと仮定します。
ロードバイクって主に「走ってます」よね。
当たり前ですけどw
じゃあ、走ってる時の「秒速」ってどれくらいなんでしょうか。
30km/h巡航で約8.33m/sです。
常に疾風くらいの速さで、私みたいな貧脚ホビーライダーでも走っている。
という事です。
横風が吹く時間とは一体どれくらいでしょう?
時々瞬間々々吹くだけの日もあれば、長めの時間風が吹く日もあるでしょう。
しかし、そんな自然が発生させる風ってよほど強風の日以外は常に同じ強さ・時間で吹き続けるでしょうか?
そうやって優先順位を考えていった時に実際の走行で得られる性能期待値が最も高い形状として、現行のエアロロードは設計されています。
こんなの研究・開発されるような人たちは我々なんかよりも賢いですからねw
ただ、たまに信じられないミスをされている時もありますが。
そして風は必ず水平に吹いているという解釈も間違っています。
吹いてくる方向が違うように、それは平面的な方向だけでなく高さ方向にも変わります。
主に地形が作用します。
それを踏まえて次に、丸断面パイプだから全方位同じ断面!と言っても、それはパイプに対して直角方向に風が吹いた場合のみ真円であって、フレーム形状を横から見たらわかりますが、全部のパイプに角度ついていますよね。
トップチューブがホリゾンタル設計だったら水平ってだけで。
そこもスローピング構成だったら水平ですらありません。
丸を斜めから切ったら思い切り楕円形状ですよ。
だから丸パイプ形状は空気抵抗が見た目よりも非常に大きいのです。
1.6mmの直径を持つ丸断面形状のモノと、幅24mmの翼断面形状のモノと空気抵抗は同じです。
その差は何倍でしょうか。
15倍もの差があります。
なので走行している限り、最も影響の大きい進行方向に対する空気抵抗を最も減らせる形状をエアロロードは採用しているのです。
次に、正面からの風だけの研究ではないと最初の方で書きました。
自然界の風が常に都合の良い方向から吹くわけではないからです。
それに対して、エアロロードはどうなっているのか。
S-Works SHiv
これはトライアスロン用TTバイクですが、わかりやすい説明書いてあるのがコレだけだったんで、これを転用します。
横風が抵抗になるんじゃなく、推進力に変わるんですw
こういう話題を以前ちょっとだけ話した時にみん友さんが「ヨットの帆と同じ原理ですかね?」とおっしゃってました。(雨男さんです)
素晴らしい推察だと思います。
たぶん、そうだと思います(知らんけどwさーせんw勉強しておきます)
UCIの厳しい規定に縛られているロードバイクは、SHivのようにより伸び伸びと設計できるワケじゃない為にここまで露骨じゃないですが、あまりはっきりと公表していないだけでエアロロードも各社少し差はありますが、若干SHivに近い狙いで単純なカムテール断面形状じゃない形状を落とし込んでおられます。
それが先ほどの丸パイプもパイプに対して直角に切断すれば真円だけど…
というのがヒントです。
パイプに対して、最も多く吹くだろう横風方向と、高さ方向の角度からカムテール断面形状のパイプを切断すると、SHivのように横風が巻き込んで推進力を発生させる空力に「なるべくなるように」設計されているんです。
なので、また再び試乗させていただいて体験してみますが横風に対して割と強いんです。
私が所有しているAllez sprint comp discは、ポルシェのヒエラルキーと同様に価格なりに妥協している性能があるのがわかったんですよ。
以前、琵琶湖ライドいった時に「ドン!」と来る横風に弱いと記事書いたと思います。
それはCL50 discのせいじゃなくて、Allez sprint comp discのフレーム形状に秘密があったんです。
設計年次がVenge Viasくらいの頃のエアロ形状をベースとし、ハイドロフォーミング製法でアルミ離れした断面形状を持つフレームとは言え、やはりそこはアルミ。
コスト抑えながら実際にカタチとして作れる限界があります。
それが「ドン!」と横風来た時はそれなりに衝撃を受ける。という事実なんだと想像しています。
風強くてもじわーっと吹いてから強くなったり、常に横風みたいなシチュエーションだとハンドル取られたりとかそういうのは普通のフレーム形状であるemondaより安定して走れるので、「あともうちょい」という差なんでしょうね。そこが。
カーボン成形だとその「あともうちょっと」という複雑な形状も実現しやすいんだと思います。
なんでこんな話題を書いたかというと、お世話になっているショップの元実業団選手の方がMadoneでわざと強風・横風吹いてるところを丹念に走ってみてください。
重心の低さと、横風が若干推進力に変わっているようなフィーリングを感じられて今乗っておられるロードより安心した上で更なるスピードが出せますよ。
とおっしゃってくださったんですよ。
今から試乗が楽しみです。
それにしても、クロモリフレームの空力のツイートは面白かったw
ユニークな発想だと思います。