2015年12月末に発売開始された新型アルトワークスに試乗する機会を得ました!
2015年3月に
アルトターボRSを試乗したのですが、「コレはマニュアルを出てほしい!」と願ったとおりマニュアル車で、しかも久々のワークスとして復活です。
アルトワークスの復活(=登場)を願った人は、私以外にも少なくないハズ。
スズキがそうしたユーザーや市場の声に耳を傾けたと思いたいですね。
試乗する前から期待していたのは、先に世に出ているNAの36アルトバンの車重610kgという驚異的な軽さを生かしたターボ&マニュアルのポテンシャル。
試乗したのは、もちろん5MTで、駆動方式は2WD(FF)。
ちなみにアルトワークスの車重は、2DWの5MTで670kg。
今時、700kgを切る車重のクルマなんてないですから、当然、軽さが速さや燃費に直結するのは言うまでもありません。
新型アルトワークスには、マニュアル設定だけでなく、RS同様5AGSの設定もあります。
RSと基本的に装飾以外ボディ形状は変わらないのですが、RSで670kgだった車重が、ワークスの5GASだと690kgとなっています。
試乗時、店員さんが同乗され、「コースはどうしましょうか?」と言ってくださったので、「直線をダラダラ走っても何もわからないので、ワインディングを走ることができればその方がいいです。」とリクエストすると、希望を叶えてくれました。
乗車すると、最初に感じたのがシートの硬さ。
アルトワークスでは専用のレカロシートが奢られているわけですが、このシートの硬さは嫌いじゃありません。というか、むしろ好き。
Keiワークスを新車で購入したとき、シートの硬さが「おっイイネ~!」と思ったのですが、今回のアルトワークスのシートも好印象。
柔らかいシートは乗り心地がイイと思うのですが、私の場合、「乗り心地がいい=柔らかい」とは限りらないのです。
万人受けはしないと思いますが、私にとって走る気にさせるシートは、「座り心地」というポイントも欠かせないので、少し固めに感じるシートの方が良い場合もあります。
レカロのセミバケット形状でホールド性の高いシートなので、体が沈み込むような柔らかいシートよりもカチッと剛性感のあるシートの方が運転時の高揚感も高まるというものです。
それはシートに限らず足回りのセッティングについてもそう。
フワリフワリした感触の足回りよりも、多少路面のギャップを拾ってコンコンと感じるようなクルマであっても、シャキッと引き締まった足の方が好みですから。
メーター、ダッシュボード、コンソール周辺は、コレといって煌びやかな感じはなく、よくいえばシンプルで、ストレートにいえば簡素という表現が当てはまるのですが、私は某T社が得意とする内装の高級感をクルマのメインに求めているわけではないので、この辺は、大きな問題ではありません。
それよりもメーターの視認性、前方視界、後方視界といった運転時の項目の方が重要。
それらについては、RSを試乗したときと同様に、特に不満を感じませんでした。
クラッチペダルを踏みながらプッシュスタートのボタンを押してエンジン始動。
クルマを動かす前に、私がいつもやる儀式(?)がシフトの入りの確認。
新車なのでシフトの入りがよくて当然なのですが、ミッションオイルが温まっていないときには、この儀式をやらないと、なんとなくミッションを痛めそうな気がするので、私のクルマはもちろん、特に他人のクルマを運転するときには行っています。
この儀式の最中に感じたのが、シフトのカチッカチッと入るカッチリ感。
シフト操作時に節度感のないフニャフニャのシフト操作感のクルマとは大きく異なり、優等生的なシフトフィーリング。
その感触とシフトゲートの感覚を感じ取りながら、試乗開始。
新車なのでクラッチも軽く、シフトもカチっと入ります。
この日の試乗は、私が最初とのことだったので、ミッションオイルが温まるまで丁寧なシフト操作をしましたが、ミッションオイルの温度上昇とともにシフトの入り具合も変わってきたので、早めのシフトアップ・ダウンに操作を切り替え。
比較的交通量が少ないコースを試乗させてもらえたので、この辺も確認できたのがありがたかったです。
シフトアップ時にすぐに感じたのが、いい感じのクロスレシオによってもたつく感じがしないこと。
加えて、軽量ボディなのでストレスなく80km/hくらいまで一気に加速します。
同じマニュアル車でも、燃費重視のクルマだとギアが離れていて萎えてしまいますが、加速感が止まらないのは、思わずニヤッとしますね。
一般道路で、もたつくことなく80km/hくらいまで軽く出るクルマなので、正直、鈍重な普通車が前にいたら「もっとキビキビ走れよ!」って思うくらいの軽快感です。
専用開発のクロスレシオ5MTと軽量ボディの恩恵で、常にパワーバンド内で加速していくので、そんなに飛ばさなくても気持ちいい。
4~5速でダラ~っと走っても、NAの延長線上にあるような感覚で乗れるので、乗り手を選ばないと思います。
わかっていましたが、軽いっていうのは本当に強みだと思いますし、低速域でのトルクが力強くて扱いやすいので、市街地では、スパンスパンとシフトを変えていくと不満なくキビキビと走りました。
参考までにカタログに掲載されている変速比を紹介します。
◆FF(4WDも同様)・5MT
1速:3.545
2速:2.105
3速:1.521
4速:1.148
5速:0.897
ファイナル:4.705
◆FF(4WDも同様)・5AGS
1速:3.818
2速:2.277
3速:1.608
4速:1.161
5速:0.783
ファイナル:4.705
※5AGS(RSにも採用されているオートギアシフトの略。
RSの試乗記に記載しているので詳細割愛)
足回りは、RSと同じくKYB製ショックアブソーバーを採用し、ワークス専用チューニングを施されているようです。
どの辺が専用なのかわかりませんが、試乗した印象としては硬い足に慣れている私でも「硬さ」を感じたので、一般の乗用車に慣れている人だと「ちょっと硬い」と感じると思います。
段差乗り越え時、特にその硬さを感じますが、ワインディングやコーナリング中はその硬さがロールを抑え、無用なステアリング舵角を求めなくていいので、ワインディングこそ、その性能を発揮してくれると思います。
タイヤサイズはRS同様に165/55R15で、BSのRE050A。
正直、このサスペンションにこのタイヤは、キャパ不足と思いました。
街中でまっすぐ走るだけなら問題ありませんが、ワインディングになるとタイヤの役不足が顔をのぞかせるので、ノーマルのままでも走りを楽しむならば、セカンドラジアルタイヤくらい奢ってあげると、より運転が楽しくなると思います。
それくらいワークス専用開発のKYB製ショックの懐が深いということです。
ここまでベタ褒めですが、ここからは費用対効果について。
5MTと5AGSで価格は同様。
2WD(FF)が1,509,840円(8%税込)で、4WDが1,617,840円(8%税込)。
RSの2WD(FF)が1,293,840円(8%税込)で、4WDが1,405,080円(8%税込)。
その差は、2WD・4WDともに約21万円。
RSのポテンシャルから考えれば、RSの価格帯は割安と思いましたが、ワークスだとどう感じるか・・・。
少し割高に感じるところがありますが、RSとは別で専用にワークス専用でチューニングが施されたR06Aエンジンのことを考えると、妥当な価格設定なのかもしれません。
カタログ数値では、最大出力64ps/6,000rpm、最大トルク10.2kg・m/3,000rpmとなっていますが、数値以上に体感できる加速フィーリングを味わえるので、決して高い価格ではないと思います。
何より現行の軽自動車で純粋にドライビングが楽しめるクルマの対抗馬が、198万円~200万円以上するS660と、180万円~200万円超のコペンローブとなると、貴重な箱車と思います。
クルマを運転する楽しさは、速さだけではないのは私自身よくわかっていますが、ノーマルで乗るならば、3車の比較だと、軽量車重の恩恵もあり、アルトワークスが頭一つ抜けて速いと思います。
第三者的な見方をすると・・・
軽自動車をひっくるめて「所詮、軽自動車」という見方しかできない人にとっては150万円という価格は高いと思いますし、「150万円出すならコンパクトカーを買う」という人もいると思います。
でも、よく考えてみてください。
コンパクトカーの半分にも満たない排気量で、アルトワークスの走りのパフォーマンスを真似できますか。
そもそもクルマに求める方向性が違うので、そんなところを比べることがナンセンスとも言えますが、「クルマを単なる移動手段ではなく、走りを楽しみたい」という人にとっては、
これほど面白い素材は、新車で買える他のクルマを探してもそうはありません。
どんなクルマでもケチをつければキリがありません。
新型アルトワークスも例に漏れず、コストダウンや軽量化のために安っぽく見える箇所もあると思いますが、新型アルトワークスの
「いま、マニュアルに乗る。」というキャッチコピーのとおりクルマを操る楽しさを味わうことができると思います。
スポーツドライビングを楽しめる貴重な存在として、アルトワークスはこの業界を牽引していく
「ア・ツ・イ存在」になると思います。
最後に「スズキの戦略として、こういうやり方もあったのでは?」と思うことを書きます。
5AGSはRS一本とし、ワークスは5MTのみの設定にすればよかったのではということ。
アルトターボRSユーザーの中には、「なんだよ、ちょっと待てばワークス出たのかよ!」と思う人もいるのではないかと思います。
加えて、RSとワークスの価格の上昇にしても普通の人にはなかなか理解しにくい。
スズキの現行軽自動車の中で、スポーツドライビングを楽しむクルマの頂点に位置するのがワークスで、RSがスポーティな走りを充分味わうことのできるクルマという位置づけにするという戦略もあったのではと思います。
そうすれば、ワークスとRSの価格設定について21万円も差をつけずに、もう少し抑えることができ、よりS660やコペンローブとの価格帯のアドバンテージを儲けることができたのではと思うわけです。
まぁ、最後は大人の事情を知らない戯言になりましたが、いずれにしても、新型アルトワークスは、「買いの1台」と思います。