シャビーな道具箱と祖父

とある大きな買い物をすべきか悩み中に、気持ちを落ち着かせるべく脇見していて見つけた中古の道具箱。

ちゃんとした道具箱は昔から憧れがありましたが、その頃は入れるべき道具を持っていなかったし、いざ自転車の工具が増えてくるとガーデンバッグに放り込んでいたので、道具箱への想いを忘れていたのです。

で、この道具箱は「シャビーな道具箱」とキャッチフレーズが付けられた、スチール製の二段式。グリーンとグレーのツートーン・カラーに何故かグッと来てしまったのです。

ポチッとした後に、なんで道具箱に憧れていたんだっけ？と思い返してみたら、母方の祖父の顔が浮かびました。

祖父は材木屋の次男ゆえに置屋の長女に婿入りした人ですが、手先が器用でちょっとした工作や料理が上手かった。その祖父のところに預けられていたのは、弟が生まれる4歳くらいの頃や小学生の夏休み。時には材木屋の仕事場にも連れて行かれたので、材木置場が遊び場でした。今でも（少なくなりましたが）材木屋の前を通ると、材木の香りに郷愁を覚えます。

祖父の家では鶏が飼われ卵は朝獲れだったし、小さな畑で野菜も育て、風呂は薪で焚いて、水は井戸水でした。ホワイトカラーのサラリーマンはまだメジャーではなかった時代。その祖父がいつも道具箱を手元に置いていたのです。そして何かあると道具箱から何かを取り出して、チャチャッと片付けてしまうし、夏休みの工作もそれで手伝ってもらっていたと思います。どんな形や色だったかは記憶にないのですが、幼い自分には材木の香りと道具箱が祖父の優しい顔と一体化していたのでしょう。

大人になって赤いスチール製の道具箱を東急ハンズで見た時、中途半端にグッと来たのは、たぶん赤いカラーのせい。祖父の道具箱は決して赤ではなく、そもそも木製だったのかもしれませんが、使い込まれてシャビーだったからもっと地味な存在だったはず。

比べればこのグリーンも結構派手かな？笑