
久しぶりに厚木のNTC(日産テクニカルセンター)を訪れました。
要件は、フェアレディZ34の湯川伸次郎CPSとのインタビュー。彼とはLAオートショーに於いてすでに話をしていたのですが、特集本で取材の日程が組まれていたので仕切り直しということになりました。
NTCへのアプローチは、赤坂門という名の正門に限られます。その入り口で乗ってきたクルマの登録というか受付をし、奥の院を隔てる山にくり抜かれたトンネルを進むと、そこは雪国ではなく秘密基地の雰囲気を醸し出す広大な敷地の中にある大きなビル群。
ここの雰囲気は、小松左京の『首都消失』というSF小説に描かれています。小松さんはNTCを取材して、あの小説の中でけっこう重要な位置を占めるあるメーカーの総合研究所という舞台設定を考えたわけです。
前回訪れたのは1年位前だったと思いますが、今回総合受付のあるビル棟に入ってビックリ。デザインの中枢が入っているということを考えれば当然ですが、建物の内装が非常に洗練された造りになっていて、ちょっと感動するスケール感とセンスの良さがある。
ボクの見るところ、日産はまだまだ復活したとは言えませんが、本来持っていた企業力が発揮できる端緒には着いたという気はします。
新型Zは、いろんな意味で注目する必要のあるクルマです。テーマは『ジャンプ』だと湯川CPSは言っています。Zらしいデザイン、同セグメントトップのパフォーマンス、そしてアフォーダブルなプライス。
初代S30が築いた造形-性能-価格のトライアングルで勝負するDNAに立ち返り、現在実現可能な最高のZを提供する。S30を彷彿とさせるZ34のデザインは、とても郷愁を誘う素敵な雰囲気を持っている。
動力性能は史上最強レベルにあり、当日やはり取材対応で顔を見せていた現代の名工加藤博義さんの力量は信頼にたるものだと思う。
コンバチは最高にカッコイイですよぉ、と目を細めるCPSの言葉に(欲しいかも…)と思ったのは事実。
でも、何となく納得が行かないのは、370Zには未来が感じられない……という本質の部分かなあ。もっと軽く、もっとスリムに、もっともっとエコに。そういうジャンプなら分かるが、20世紀型の『上を向いて歩こう路線』ではね。
9月のリーマンショックは誰も予測できなかった。自動車メーカーの人々は口を揃えるが、世界最大の自動車市場アメリカが、相当浮世離れした歪(いびつ)な世界だったことは、皆知っていたはずだ。
370Zのようなスポーツカーを、ボクは否定しません。Zenith(頂点) of Z-nessという今度のZ開発理念は、現存するZユーザーへの対応ということを考えれば、非常に納得の行くものです。
でも、ボクが考えるFR再生のイメージとはかなり異なります。ICE(内燃機関)で走るクルマが生き残るには、ハイブリッドやEV、FCVなどの次世代エネルギー車群に拮抗し得るコンセプトが不可欠です。
ダウンサイジングと軽量化はmust。走りのパフォーマンスの源となる動力性能を下げても(ダウンパフォーマンス)魅力を持ち続ける必要がある。走りの面白さを留保した上で、それを実現する手段としてFRは有効だ……というのが、ボクがずっとお話している『FRでなければならない理由』です。
効率で推し進めるなら、FFでも何でもどうぞ。より効率が問われるハイブリッドやEV、FCVならそうするのが当然です。
でもICEのクルマは面白さが基本。そう考えたらダウンサイジングしかなく、それによって弱まる商品的魅力を補うのがdesignではないか、と考えているわけです。
Zは素敵なクルマに仕上がっているけれど、次が見通せない。そこが切ないですね。
質問3、4への回答ありがとうございました。
馬力値は、エネルギーの消費量という観点からみると、その増大はエコは反比例の関係にあります。すべては量の問題に帰結しますが、全体像としては、単純なスピードアップのためのパフォーマンスは下げる必要があると思います。
さらに重ねて質問です。
質問5:あなたの好きなクルマ像に相応しい駆動レイアウトは何ですか。
質問6:(FRが好ましくないと考える方へ)その理由を教えてください。
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2008/12/07 03:32:48