2009年01月01日
年越し『朝生』③
日本の自動車産業は、グローバリズムの奔流に呑み込まれるように、欧米追従路線に走り、世界生産の約3分の1という圧倒的なシェア(というか生産規模)を獲得しました。
短期間での拡大路線が、急激な市場収縮によって、1年前のウハウハとは真逆の真っ青状態に陥った、とまあそういうことでしょう。
んで、『朝生…』に話を戻すと、誰かが「日本には燃料電池車とかEVなどといった、世界最先端の自動車環境技術がある……」などと発言し、技術で世界をリードできると息巻いていた。
こういう番組で自動車が話題に上ることが少なくないが、なぜそこに自動車ジャーナリストがいないんだ? イロモノ扱いでも良いから、「いや、それにはこういう問題があるんですよ…」ぐらいのこと言わなくちゃ。
T型フォードに始まるモータリゼーションの進展は、石油の生産/供給の確立と表裏一体の関係にあります。その視点でみて行くと、FCV(燃料電池車)は水素、EVは電気の安定した供給が不可欠なのは自明です。
それを、クルマの技術だけでなんとかなる……なんて。その辺の自動車評論家みたいなことをしたり顔で言われても困る。クルマはガソリンで走るのです……と同じようにFCVは水素で走る。本質が見えていない意見はお粗末です。
FCVやEVを、これまでのクルマ(ICE)と同じ文脈で語ることはそもそも間違っています。使用するエネルギー源が異なるということは、まったく別の概念の乗り物ということなんです。
まあEVの電気については家庭用の電源が使えますが、この場合従来型のICE(内燃機関)車の燃料に掛けられているガソリン税に相当する税金はどうするのか? ほとんど一般レベルでの議論にはなっていません。
FCVの場合はさらに問題は深刻で、ホンダやトヨタや日産がそれぞれ技術開発競争を展開していて、現時点ではFCXクラリティのホンダが一歩リードといった印象を与えています。
確かに、クルマというハードのシステム開発は進んでいます。しかし燃料電池のエネルギー源となる水素の生産/供給体制の整備はほとんど進んでいません。
今年は三菱のi-MiEVやホンダのFCXクラリティがリース販売されることになりますが、いずれも販売先はフリートと呼ばれる公官庁や企業に限られます。税制の論議も表に出ることなく、水素を戦略的に考える方針も打ち出されていません。
何で俺に売らないんだとか言っている場合じゃなく、低炭素化社会から水素社会に移行する筋道があるのかどうかを問う必要がある。
アメリカは06年のブッシュ大統領の一般教書に「2015年までに、水素エネルギーの実用化が可能かどうか調査研究し、結論を出す」というプロジェクトをちゃんと予算をつけて進めています。
FCVを次世代エネルギーのエースと考えるのならば、ビッグスリーは一旦精算して、雇用体制を含めて一からやり直すほうが合理的だと思うのですが、アメリカはまだ水素化社会へと完全に舵を切った段階ではありません。
カリフェルニアにおけるFXCクラリティのリース販売は、すでに5台がハリウッド女優や映画プロデューサーなどの"市民"を対象として行われている。カリフォルニア州のLA界隈には数ヶ所の水素ステーションが実用化に向け用意されている。
FCXクラリティのリース料が、日本の10分の1以下(約6万円)という事実は、普及に向けてのインフラ作りを含め、アメリカのほうが先を行っていることを物語っている。オバマ次期大統領も次世代エネルギー車の開発を急ぐとみられている。
今回の『朝まで生TV』には数々のなるほど…があり、ヒントを発見することができました。時代は大きく動きますね。
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Posted at
2009/01/01 17:26:55
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