久しぶりに長谷川きよしを聴いた…いや観たというべきか。近頃はTVを見る時間はめっきり減って、夕食時に惰性で見ることはあっても、これを観なければ一週間の区切りがつかないということもなくなった。
今宵も夜半まではPCに向かってこのところのお楽しみに耽っていて、トイレに行こうと階下に下りた際に何となくTVをつけたらNHKでプロフェッショナルをやっていて、日本で有数の心臓外科医の見事な仕事ぶりに感銘を受け、しばし呆然としていたら引き続いての番組はSONGS。
誰かと思って食い入ると、何十年ぶりだ? の長谷川きよしだった。デビュー43年であるという。そうだったね、たしか最初に聴いたのはラジオの深夜放送で、まあ受験生の砌(みぎり)であったわけですね。あの頃はラジオの深夜放送が大きな存在感を発揮した時代。セイヤング、オールナイトニッポン派いろいろあったと思うけれど、僕はもっぱらTBSのパックインミュージックだったな。
由紀さおりの夜明けのスキャットに新谷のり子のフランシーヌの場合、千賀かおるの真夜中のギター…世代が違うとおっさん何の話してんの? だろうが、今でも耳に残り、心に響き、イメージが脳裏に鮮やかに浮かぶ深夜放送発の歌のあれこれがある。そして、そのきわめつきが長谷川きよしの
『別れのサンパ』。
たしかデビュー当初はTVの出演なくて、盲目でギターがべらぼうに巧いという音声情報を俄かには信じられなかったけれど、やがてTVに出演して目の当たりにしたその演奏と歌のレベルの高さには心底驚いた。そのはるか40年以上前の記憶が瞬時に蘇った。
別れのサンパに
黒の舟歌、エディット.ピアフの愛の讃歌にジュディー. ガーランドのOver the Rainbow……。今は京都に暮らすという長谷川が京の風情の中でバリッとパフォーマンスを決める。しかし、地上波は時折深夜に思わぬ好番組を流すから油断ならない。夜中のお昼を過ぎてからの2時間足らず。また睡眠不足かと舌打ちをしつつ、良いものを観たという満足は深かった。
それはそうと、標題の86vs991であります。いうまでもなくトヨタ86とポルシェ911タイプ991のバーサスっちゅうことでありますが、黄金週間の入り口の4月28日に筑波サーキットで例によって発作的な『筑波でなんとか…』という某大学自動車部の新入生歓迎イベントに招かれつつ乱入するという話はここに書きました。
急遽86を借用し、黄金週間のタイミングに合わせて試乗する予定でした991ともども連休の難しい時期に繰り出すことにしたわけですが、実を言うと両車をほぼ同時に乗り比べての印象が非常に興味深かった。馬力ににして200psと400ps、同じ水平対向NAエンジンの4発と6発であり、エンジン搭載位置は前後逆、価格は1対6と好対照を成している。
でね、ポルシェはポルシェで見て触るだけでもオーラを感じる圧倒的な存在感があるわけですが、86の身体がすっと伸びる機能拡大装置としての秀逸度ということでは一歩も引かない。スピードのレベルや仕立ての高級感などに歴然たる差を意識しつつも、勝負は微妙な判定で甲乙つけがたいというなかなか面白い対決ものになっていました。
991はここまで重い存在でなくてもいいなと思う一方で、86はもう少し見た目とタッチで"イカせてよ"といいたくなるお手軽コンビニ感覚が惜しい。991はオプション込みで1900万円を超える。頑張って300万円の86が位負けするのは当然といえば当然ですが、倍のコスト(+300万円)を乗せて鳥肌もののエモーションを身につけるセンスがT社にあるか?
性能はテクノロジーで克服することは容易だろうが、人をその気にさせる"センス"の領域は学びではなく遊びから導き出される感覚が勝負の分かれ目だ。
トヨタが一足飛びにポルシェの領域にジャンプすることは、不可能とは思わないがリスクを引き受けて責任を取る体制になっていない企業風土を見るにつけ難しい。
991と86はいずれも余裕があったらすぐにでも手に入れたいと思っているクルマ。そのリアリティはまったく別れのサンパと黒の舟歌の曲調と重なる切実さを伴うものだが、ない袖は振れないのだ。現代のスポーツカーにとって、ひいては現代のクルマにとって頃合いというのは一体どの辺りに求めたらいいのか。
まだ上手くまとまっていないので、今宵はここまで。911と86数字が車名のこの2台。真剣に比べっこするとけっこう本質が見えてくるように思えるんですな。スポーツカーって、やっぱり相当面白いです。
ところで、来る7月7日の七夕に念願のメルマガを創刊します。詳細は追って……ご期待ください。
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2012/05/18 03:46:07