2009年07月19日
人は人と出会うことで変っていく。もしも、あの時あの人に出会わなかったら……人生にタラレバはない。人は会うべくして人に会っている。
何らかの意志とそれに共鳴する思いが重なって、人は人と会う。人と人の出会いは、時として偶然を装うが、その時の偶然もあとからゆっくり振り返ると必然だったりする。僕はとくに運命論者ではないけれど、良い出会いもそうでない場合も予め用意されていたような必然性を伴って訪れ、今につながる道程を生み出している。
僕の興味は常に未来に向いている。過去のあれこれは今さら何を言っても元には戻せない。ただ、振り返ることで自分を再確認するのは、これから考える上では無駄ではないだろう。70年代、80年代、90年代、そして21世紀の1st decade……たくさんの人に出会い、いままだ旅の途中だ。
音楽を志していたYT、整備士で身を立てる道を選んだ元生徒会長YK。誰でも最初は狭い世界から始まるものだが、彼ら高校の同級生との出会いがクルマの道に誘った。1970年代の入り口にこの二人と会っていなければ、今日までの道筋はなかった。
GSに配布されてきた一冊の本は、直接の人ではなかったけれど、生きる方向性に決定的な影響を与えた。GSのおやじさんや無償でマシン運搬トラックを貸してくれたお客のヤスキさん。ショウジさんサトルさんツーチャン……チームの面々との出会いも鼻の奥がツンとくる懐かしい記憶だ。
僕が今この仕事をしているのは、GSの顧客にいた二人の自動車雑誌の編集者との出会いがきっかけだ。当時D誌5日号キャップのIさんとCT誌副編のOさんがGSの近くに住んでいて、時折来店した。
しばらくしてガレージでマシンの製作が最終段階を迎える頃(だったかな?)、Iさんが素性を明らかにしながら話しかけてくれるようになった。そして、ある程度戦績を残すようになってからかな、『よかったら、雑誌の仕事手伝ってみない?』その誘いが、今に繋がっている。
77年には、富士のフレッシュマンクラスとしてはまあまあ存在が知られるようになっていて、東名自動車の社長の運転手として鈴鹿まで出掛けたりもしていた。CT誌のOさんつながりでは、たしかこの年か76年、グラビア3ページで僕のページが作られた。
レースに挑戦するスタンドマンみたいなページだったかな。CT誌(本誌)では以来一度も仕事をしたことがないけれど、僕の雑誌デビューは実はCT誌なのですねぇ。取材に来たのはオレンジ色のサーブに乗るカメラマンのノブさん。
同じ頃、D誌にライターとして寄稿していたKさん(故人)の取材で週刊時事という固めの雑誌にも登場した。Kさんは『復讐するは我にあり』のSR氏とは八幡製鉄時代の同僚で、九州の人らしい四角い感じの好漢だった。
D誌での僕は、現役レーサーということで最初から定地テストのテスターなどの扱いで、バイトの小間使いはほとんど経験していない。
初めて書いた原稿は、77年1月にEFI(電子制御燃料噴射装置)装備によって51年排ガス規制をクリアして2年ぶりに2T-Gを復活させたTE51だったか、翌年4月3元触媒とO2センサーの装備によって大難関の53年排ガス規制(和製マスキー法とも言われた)に合致させたTE55型レビンだったか。
多分そのリポートはバックナンバーを調べれば出てくるはずだが、読みたくないなあ。3行と進まぬ内に顔から火を吹きそうになると思います。
自慢ではないけれど、僕はIさんに誘われて仕事をするようになるまで、一行も文章など書いたことありませんでした。学校時分、たとえば夏休みの宿題で読書感想文などがあってもまず書かなかった。
書いて行くことより、授業中1時間立たされていることを選んだ人間です。もう随分になりますが高校の同窓会で仕事を問われたときなどは、誰も信じませんでした。あの光景を見ているからね。
TSサニーを売り払い、フリーのライター稼業で行ってみようと決めたのは78年の9月のこと。やって行く自信? まったくありませんでした。Iさんの『これからはまちがいなくフリーランスの時代だから』という言葉に背中を押されたのと、(レースの世界に近いところに居れば、チャンスが訪れるかもしれない)そう考えての決断でした。
今思い返しても、よくやって行こうと考えられたものだ。我ながら感心します。最初の数年間はもう駄目ライターの見本みたいなものです。自分としては『あたりまえだ』と思ってました。文章経験ゼロなんですから。でも、いつの頃からか不思議と『何とかなるのでは?』根拠のない自信が芽生えはじめたのを覚えています。その話はいずれ記すことになるでしょう。
不純な動機ゆえの、難行苦行の始まり。僕が30年以上この仕事を続けられる。あの当時の僕を知る人は誰一人思わなかったはずです。
Posted at 2009/07/20 20:59:54 | |
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