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伏木悦郎のブログ一覧

2009年11月04日 イイね!

ピークアウト

ピークアウトそうなって欲しくないとは思っていたけれど、一刻も早くそうすべきだとは思っていた。トヨタのF1撤退の話である。昨年の、サブプライムローン問題に端を発する金融危機は、9月15日のリーマンショックでその全貌を露にした。それまでの、アメリカの金融工学を駆使した超特大のバブル経済は、過去数年間の繁栄が何だったのか具体的な形で示しながら弾けた。

専門家は誰もそうなることを予測出来ず、ただひたすら好景気に酔い痴れていたフシがある。こんな状態がいつもでも続くわけがない……SUV人気やクルマの大型化、高速化、高級化、高品質化などの過剰性の横溢に、常に警告を発していたつもりだが、結局のところ何の役にも立てなかった。忸怩たる思いとはこういうことを指すのだろう。

僕は悲観論を撒き散らそうと思っているわけでは全くない。できれば明るく笑っていたいとは思うけれど、事態はそんなに楽観できるところにはない。2007年、日本の自動車産業は全世界で2200万台の自動車を生産した。この数字は全世界生産の3分の1ほどに達していたはずである。

国内消費は軽自動車を含めても600万台足らずだろうか。都合7割以上が国外消費であり、利益のほぼすべてが海外に依存していた。日本国内はもとよりだが、見せかけの好景気を背景にした米欧のクルマの爆発的な消費増加(同じく2007年の米国の自動車販売台数は空前の1750万台に達していたはずである)は、金融工学を駆使した結果もたらされた好景気によってもたらされ、その破綻とともに露と消えた。少なく見積もっても、アメリカ市場だけでも500万台近いクルマの需要が蒸発した。

それはシンプルに蒸発したのであって、全世界でみても6000万台以上あった需要の内、1000万台ほどは蒸発したと見ていい。従来型のクルマであるかぎり復活の見込みは多分ゼロだろう。資源と環境の両面で、(とくに先進国においては)従来型の(石油)エネルギー多消費型のクルマが過去20年間の活況と同じレベルで増大する見込みはないだろう。

目下の状況の変化は、そのくらい劇的で不可逆的で厳しい現実を伴うものなのだ。のほほんとこれまで通りであろうとしたり、牧歌的なクルマ好きを語るのは勝手だが、プロフェッショナルな認識を持たない拝金の徒はこの際自らの不明を恥じて廃業することを薦めたい。そのレベルで必死で生きている人より恵まれた境遇を得てはいけない。

問題がどこにあって、それは如何にすれば解決策が見出せて、好ましい方向に進むことができるか。皆で智恵を出し合って考える必要がある。官でも、産でも、学でもなく、基本的にはあまり存在価値のない報道(メディア)でなければできない仕事を今こそ成すべきだろう。これだけ四六時中自動車のことを考えられる境遇にあるのに、自動車が直面している問題の解決にほとんど関与できない。寂しいし情けないではないか。

僕は、過去6年間にわたって、年50万台のオーダーで生産設備を世界中に作り上げてしまった日本のリーディングカンパニーの現状と近未来が気になっている。存亡の危機というのはショッキングな言葉遣いだが、あながち否定し得ない状況に直面しているのではないかと思っている。

1000万台に迫る900万台超で世界一になったのも束の間、目下のところ200万台以上の生産能力の余剰と設備の過剰を抱えている。我々はなかなか海外の現状、状況を知り得ないが、状況証拠から類推して、簡単な状態ではないことは、少なくとも僕は理解していた。今日のF1撤退の記者会見は、いろんな意味で日本のピークアウトを象徴していたような気がする。

技術もあれば、人的資源でもまだまだ世界をリードし得る。その意味では下を向く必要など全くない。ここからが勝負時と考えて、人類の繁栄に貢献する……そんな気概でもって進んで行くべきだろう。俺に何ができるか分らないが、とりあえず必死に考えて、本質を追求したり、あるべき姿の理想を語って行こうと思う。

TMG会長の山科忠 トヨタ自動車専務取締役は、中嶋一貴と小林可夢偉の今後の処遇に対する質問に感極まって泣き、豊田章男社長は無念の思いを噛みしめつつ記者会見に応じた。

生きている以上は、何とかしないとね。

Posted at 2009/11/04 22:58:54 | コメント(5) | トラックバック(1) | 日記
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