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伏木悦郎のブログ一覧

2011年02月19日 イイね!

クルマで動くということ。

皆が口を揃えることは、基本的に怪しい。立場が異なれば、意見に相違が生じるのが当然で、余程のことがないかぎり判で押したような言説にまみれることはない。多くの場合は誰かの受け売りで、利いた風な口ぶりにつづくのは身も蓋もないヒューマニズムと相場が決まっている。

その先の自分の言葉で語る意見ならば傾聴に値するけれど、大方は紐付き話で眉に唾したくなるものばかり。何も正解を求めているのではなく、なるほどと思わず膝を叩きたくなるアイデアやそうなったら面白いだろうなあと思わせる夢や希望に満ちた話なら、たとえ間違っていても、若気の至りであっても、受け入れることができる。

安全なクルマの話。もっともっとコメントが集まってもいいかなとは思いましたが、予想通り"紛糾"(笑)しましたね。なかにはムカつく記述もありましたが、異論や反対意見には、自らの考え方の至らなさを思い知る示唆に富むものが多いのも事実です。余程のことがないかぎり、そのまま掲載ということにしたいと思っています。ただ、基本的なルールとして、匿名というフェアでない立場からの発言には節度を求めたいですね。

僕はですね、クルマは単にクルマだけではクルマにはなれない……またまた理屈を、と言われちゃいそうですが、基本認識をそこに置いています。これも、もう何度も書き連ねてきたことですが、クルマはハードウェアの"システム"として自己完結しています。しかし、そこにあるだけではクルマとしての機能を果たし得ません。

運転するヒトがドアをバタンと閉めて、シートに収まり、エンジンに火を入れ、クルマのシステムに主体となるヒトが組み込まれることで動くことが可能になります。マン-マシン・システムですね。しかし、それでもまだ不十分です。

man-machine.systemが、走るという本質的な機能を発揮するには、道路を初めとするハード面の社会インフラや交通法規をはじめとするソフトウェアの充実がないと複雑多岐にわたる混合交通は成り立ちません。それらを僕は便宜的にフィールドと呼んでます。man-machine-field、それぞれのsystemが互いに重なり合った三重のシステムになることで、はじめてクルマはクルマになる。

僕はこれを『人・道・車=3重のシステム』という語呂合わせで自分の考え方を整理しています。完全にあたりまえの話なので、ここであらためて声を大にして言うようなものではないのですが、この発想を得てからもうすでに四半世紀を迎えようとしています。それが今の時代に合っているかどうか。

僕はかなり普遍性を持っているように思うのですが、日本(の自動車産業)は、長い間クルマが走る環境としてのフィールド(道路、法律)の至らなさやそこに生きる人々のスキルの不足を、クルマというハードの技術の一点突破でバランスを取ってきました。

その突き詰められた優秀なハードとしてのクルマが、すでに一定以上の人的・社会的環境を有していた欧米先進国にフィットし、日本よりも遅れている途上国や後進国にも十分受け入れられることになったのは、当然でしょう。

いろいろ自虐的な意見を見聞きしますが、日本車のグローバル生産はピーク(リーマンショック前)の2200万台からは凹みましたが、依然として2000万台の大台をキープして世界第一位の座を守っている。競争の激しいフラットなグローパル化の時代。モノが良くなければ、これだけの生産設備を維持しながら販売が持続することはあり得ない。将来に暗雲が垂れ込めているのは確かですが、自ら卑下する必要はどこにもありません。

僕はクルマで旅することが大好きです。この頃はなかなか余裕がなくて叶いませんが、日本の47都道府県はちょいと走ったのも勘定に入れれば完全踏破しています。立派な高速道路も増えたし、大規模な橋やトンネルのインフラも充実してきました。もちろん、日本のクルマのレベルアップも目覚ましい。

でもね、僕がクルマに乗り始めた41年前も今も法定最高速度は100㎞/hのままです。現実の路上ではもう少しペースが高い場合もありますが、堅苦しく言えば違法行為です。もちろん、100㎞/hの速度はけっして低くはなく、判断を誤ると危険な状態に陥るのは間違いありません。でも、現代の日本車でその速度を維持するのに困難を感じるクルマはありますか?

ここから先は何を理想とするかでしょう。僕が求めているのは自由なモビリティです。自由には、当然のことながらそれを得るために守るべき義務が生じます。安全や環境保全に対する配慮はもちろん、そのためのスキルアップは欠かせません。人間、基本的に嫌なことはやりません。クルマに乗るのは間違いなく面白いからで、程度の差こそあれ好きなのではないでしょうか。

日本が法治国家であることに疑いを持っている人は少ないと思います。しかし、現実の路上の曖昧さに満ちた光景は何とも不思議です。法定速度は反則金や罰金を徴収するのが目的のようにすら感じられる。日本中が法定速度に厳密に対応することになったら、どうなるか。法を作る者も法を守る者も法に従う者も、誰一人としてその様な事態が現実的だとは思っていないフシがある。

制限速度を上げるか、クルマの性能を抑え込むか、ドライバーのスキルを高めるか、道路インフラなどの"性能" を改善するか。それぞれのバランスを取りながらということになると思いますが、クルマの問題はクルマ以外の要素のほうが大きいことに気づかされます。それはきっと、国のあり方や都市の問題、高齢化社会などといった、もっと大きくて本質的なテーマにつながっている。

それはともかく……みたいな感じで、どう踏ん張ってもタイヤ性能のバックアップシステムに過ぎない安全デバイスに問題を矮小化しかねないところが、僕の違和感の原点です。この国が自動車の生産にかなり依存しているのは間違いないし、世界的な評価も悪くはない。

でもね、ドイツのアウトバーンやアメリカのフリーウェイ、イギリスのモーターウェイなどを度々経験している身からすると、やっぱり日本の道路の体系はシステムとしてクルマを活かすようにはなっていない。世界的な評価を得ている日本車を、その作られる本国で試してみたい……たとえば、30年近く前の僕がポルシェに象徴されるドイツ車に憧れ、その生まれ育った環境として当時速度無制限を謳歌していたアウトバーンを走ってみたいと思ったのと同じように、日本を走ってみたいと思う外国人がどれほどいるだろうか?

アウトバーンもフリーウェイもモーターウェイも原則無料で、高速道路と一般道が有機的に結びついている。一定以上のスキルの持ち主なら、そのまま溶け込める環境とシステムが用意されている。日本の自然環境や歴史的な都市空間は、観光資源という視点から見ても世界に誇れるレベルにあります。

しかし、自動車生産のトップランナーになって久しい日本をあえて自分の運転するクルマで旅しようと考える外国人がどれだけいるだろう? 有料道路を利用する困難は、言葉の障害が大きいフランスなどを走れば実感します。原則日本発行のクレジットカードでしか利用できないETCは、事実上外国人旅行者を阻んでいます。世界最大の自動車生産国でありながら、クルマを使うことに異常と思えるほど冷たい。あまつさえ、無料化に反対という利用する立場からは信じられない意見が正義を装って流布している。

道路特定財源だったガソリン税が一般化されて2年。暫定税率は復活したままで税に税を掛けるタックスオンタックスもそのまま。財政逼迫とこの話は別問題ではないか。多くの人々が自動車で食べさせてもらっていることを考えずに、クルマを食い物にしている。日本の自動車はまだまだ伸び代を持っている。道路問題についてはまだまだ学ぶべきところが多いとは思うけれど、発想の転換が急務ではないかと強く思っています。さらにご意見を頂ければ幸いです。
Posted at 2011/02/19 23:58:59 | コメント(12) | トラックバック(1) | 日記
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