2012年01月01日
こんな夜更けにするのもなんですが、あらためまして新年のご挨拶。明けましておめでとうございます。しかし、また同じような時間帯にグラリと来ましたね。震度4というわりにはよく揺れたし、長くて大きく感じられました。年明け早々に気合入れるなんて、地球も日本人の気質をよく御存知なようで。
朝方近くまで福島からの生TVを観てしまったので、昼夜が逆転気味というここ数年のパターンにはまってしまいました。まあ元日ぐらいはいいか……と気を抜いていると、もうすぐデトロイトNAIASのスケジュールです。今年は9、10日と幾分早めなので週末には機上の人になる予定。安いフライトが往復ともにJFK経由でNYCステイとなるので、すこぶる寒いマンハッタンで気合を入れ、さらに寒いミシガンでの即入稿スクランブルに対応するつもり。
年が明けたので、86とBRZの話をジワジワ盛り上げたいですねぇ。クルマはいったい誰が作るのか。それは法律とユーザーだよ……という話はこれまで何度もしてきました。新しい2ℓFRスポーツカーは、プランニングから具体化のプロセスで山場があり、具体的な開発に入ったところで剣ヶ峰を経験し、量産に入る直前まで最終調整に追われたそうだ。まったく同じハードウェアを共有し、タイヤまでコンセプトに忠実に揃えたのに、出てきた答えはとても興味深い個性の違いとして立ち現れました。
開発者というメーカーの人々といえども、少しアングルを変えれば誰よりもそのクルマを欲しがるユーザーだ。人間の官能に根ざす感覚性能が最大価値のスポーツカーともなれば、作り手は最初のユーザーになりたがる存在でなければおかしい。異なる企業風土に育まれた感性は、まったく同じアーキテクチャー、メカニズム、レイアウトで走るクルマにも異なる感覚性能を注ぎ込む。
いいですねぇ、こういうお為ごかしのヒューマニズムではないヒューマンなストーリー。どっちが良い悪いではなく、俺はこっちが好き、あっちは口に合わない……違って当然なことを、ありのままに言える語彙と感性だけはちゃんと用意して臨まないとね。
まだ発売まで一月以上あるので、この際だから生(ナマ)の比較評価(評論)じゃなくて、どういうクルマがあんたの理想なの……みたいなプライベートな感覚をまず語りたい。そもそもクルマの評価なんてすべてが主観に基づくもの。その人の人生観が投影されている評論こそが、合っている間違っているを超えて面白い。そうなんですよ、今やクルマを正しい間違っている(正しくない)で評価することにほとんど意味はない。それが面白いか否か。
正義をベースに語ろうとすると、クルマはあっという間に論理矛盾の塊になっちゃう。ちょっと環境とか安全とかにはうまくねぇんだけど、こんなにも人々の人生を豊かにしてくれる、楽しみをもたらしてくれる。面白さは、反面罪なところもあるけれど、だからこそ何とか罰が当たらないように努力もできる。無闇にスピードを競い合うなんてことはほどほどにして、自らの肉体で対応できるレベルを必死で高めることに楽しみを見出してみたいもの。
人生何があるかわからない。この先大金を掴む幸運に恵まれたとしたら、密かに高嶺の花のスーパースポーツを手に入れて世界中を走り回るなんていう夢が実現するかもしれない。だから、間違っても超プレミアムスポーツブランドを貶めるような物言いだけはしたくない。でも、デイリーに楽しむことができて、しかも社会に対して敵対的にならないようなクルマがあって、しかもそれを上手に使いこなせるスキルとマインドを持つ人が増えて行くとしたら、多少なりとも都市空間はカラフルでデザインに満ちた、見ているだけで元気になる、砂漠ではない密林のような存在になるのではないでしょうか。
クルマが動いている(走っている)のではなくて、人がクルマを操っていることが視覚的に分かるようなモビリティのありようが理想だなあ。抽象的すぎて、反論の余地が山ほどあることを承知の上で、今までと違うアプローチを考えてみたいですねぇ。
とにかくトヨバルスポーツ86BRZは、ここしばらくはクルマの本質を語る最良の教材になり得るクルマ。いやいや最長不倒のNCロードスターがあるではないか……という向きもあるでしょうが、4シーターであることで必然性を帯びる2ℓFRスポーツの86BRZと違って、本来の出自がライトウェイトスポーツであるNCはやはり育ちすぎてしまった感が強いわけです。大急ぎでオリジナルの世界に戻してやりたいところですが、グローバル市場に開かれたクルマの難しさは簡単に時計の針を戻させてはくれません。
先日のTMSでちょっと残念な話を聞きました。NCは日欧で施行される直近の歩行者保護規制に対応するためにフロントバンパーをリデザインすることが決まりました。けっこうな投資が必要なこともあって、向こう2年間はFMCが難しくなったということです。NDの構想は固まったようですが、まだ画にもなっていない段階。早くて3年後でしょう。その前にND開発のための原資が必要で、SKYACTIVの成功なしには先に進みそうもない。トヨバル86BRZがNAロードスターが生み出した世界的な潮流の起爆剤になって、フォロワーがあちこちから出てくれば、スポーツカーの未来は少しだけ明るくなる。
そうしなければならないんだよ!!って自分に叱咤激励しているわけですが、すぐに対応できそうにない己の情けなさよ。顔上げて、前に進んで行きましょ。どうせなら楽しんだ方がいい。まだまだ終わったわけではないし、終わるつもりもない。そんな青臭いことを考えた還暦間近の年男のお正月でした。
再度あらためまして、皆さん本年もよろしくお願いします。
Posted at 2012/01/02 01:28:24 | |
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