
先月のCAN-GATEWAY ECUに続き、今月もトヨタ86ネタでFSW(富士スピードウェイ)。取材のオファーは、driver誌からの86連載絡みで、インタビューと試乗の2本柱。今回の86インタビューは86の…というよりこれからのトヨタのダイナミックパフォーマンスの核心技術となる空力技術のパイオニアが相手。
その前に今回のFSWグランプリコースでの試乗メニューのひとつエアロスタビライジングフィンという小さいけれど滅法効果のある空力パーツの装着/非装着の比較試乗を行った。媒体枠と個人枠を駆使して2度のトライとなったが、率直にいって1回目は要領を得ず。率直にそのことをエンジニアに伝えてヒントを得る。
2度目で違いを把握することはできたが、それがどのようなメカニズムで生れるのか分からないので、表現できるかどうかという難問が存在することに気がついた。これまでなんとなく理解していた空力とはまったく異なる、そもそも空力でハンドリングバランスの基礎を得てしまう、バネ/ダンパーやタイヤを含むシャシーのセットアップよりもまず空力というところに時代は進みつつあるという。
インタビューで聞く新たな視点、空力を単純なダウンフォースとかゼロリフトとかドラッグなどといった括りではなく、ラテラルあるいはヴァーチカルのボルテックス(渦流)を活用し積極的にパワーを生み出す方向に進化している。その雛型は大海を130㎞/hで飛ぶように泳ぐ魚の研究に端を発するという。
現在分かっている地球最速の魚は何だと思いますか? カジキマグロなんですと。そうあの細く鋭い角の様な鼻先…実は上顎で吻(ふん)と言うらしい…のマーリンなどと呼ばれるマカジキ、クロカジキなどの6つに類別される。このカジキがなぜ水中を自らの筋肉だけで高速移動できる?
まだ完全には解明されていないというが、あの体型と背や尾のフィンが単に水を掻いて推進力を得ているのではなく、渦を発生させてそれを推進力に変換するメカニズムを備えている。生体模倣技術(バイオミメティクス)はまだ端緒についたばかりのようだが、吹いている風を味方にするだけでなく、空気を積極的に利用する世界がすぐそこまで来ているらしい。

86の凄さというか面白さは、単なるFRスポーツという古典的な枠組みを超え、あらゆるところにこれからのクルマ作りの起点となる技術要素が散りばめられている。いっぽうで、アップルのi-Phoneに学ぶ、クルマそのものの面白さをベースにi-Tunesやappなどの周辺環境を整え、21世紀型のモビリティを模索する。
driverの連載がどのようなまとまりになるか、自らの表現力が問われるが目から鱗の『今クルマはこうなっている』は、エアロスタビライジングフィンの試乗インプレとともに読み物として面白いのではないかと人ごとの様に期待している。
こういう独創の技術を持ち寄ってチームニッポンで、ガチンコの勝負を迫りつつある外国のライバルと対峙する。旧通産省の護送船団方式に護られここまで生き延びられたメーカーも、あの頃の夢をもう一度と考えているのだとしたらそれはない。
乗るか反るかはここ2、3年の勝負。メディアの体たらくも含めて皆が正気に戻ってマンパワー勝負を勝ち抜く。それをやらないと、自動車産業も家電メーカーが直面した苦境に陥ることは避けられない。いや、今日はとても刺激的な取材のひとときだった。
Posted at 2012/10/19 01:20:38 | |
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