
昨日に引き続き朝から恵比寿。今日は横浜線~東横線~日比谷線と電車ルート。前日に軽くレクチャーを聞いていたので、多少理解が深まったのは役得か。このところ日産関係のイベントの比率が非常に多いが、今回も広い意味では日産絡みではある。
余興のヘッドフォンを含め、最新のオーディオの進み具合に古ぼけた頭を切り換える必要があると、改めて実感。恵比寿からマーチ試乗会が行われる日産横浜本社は中目黒で東横線に乗り換えるだけでほぼ一本。多少時間的に余裕があったので、ベイクォーターのマックでヤフーBBに繋ぎながらひと仕事。目の前に日産本社が見えるここは、たまに仕事を持ち込む出先スペースなわけです。
振り返ってみると、新型マーチは3月のジュネーブショー以来何度も取材対象として接している。追浜とサンダーランドという日英の拠点を、より収益性の高いBセグ以上のモデルに移管し、タイ、インド、メキシコ、中国という自動車工業的には新興国に全生産を振り分ける。
グローバルな競争が常態化し、円高の為替環境が固定化した現在、日本の自動車産業がサバイバルする方策としては納得の行く展開だが、過去2世代にわたって10年のライフサイクルを維持してきたマーチだからこそ思い切った転換が可能になったということもできる。
今度のマーチの凄さは、その生産拠点の全面的途上国シフトだけでなく、入手可能な鋼板などの現地調達率を念頭に置いた車両設計や、先進諸国で獲得したマーケットを守りつつ、価格競争力が問われる途上国への対応も怠らない点にある。燃費ナンバーワンを第一の目標に、プラットフォームの新設に始まって、エンジン/トランスミッションの新規開発を、あと2機種を想定しながら行っている。その周到な計画は、リーマンショックという予期せぬ(?)出来事で一気にアドバンテージとなった。
問題はその出来栄えだが、敢えてプラットフォームを新設し、1.2ℓ3気筒に副変速機付きCVTという燃費を最優先に開発されたパワートレインを組み合わせ、さらにその新開発CVTを有効利用してアイドリングストップ機構を日本国内向けのアピールポイントとしてきっちり追加。データ的にまず納得できるレベルに到達させている。26㎞/ℓは、このクラスのピュアICEとしては現時点で最良ということになっている。
問題はその走りにあるわけだが、ドアを開けシートに収まって雰囲気を確かめるプロセスの中で"これは出来てるね" 第一印象で響くものがあった。それは、すでに海外モーターショーや事前撮影会などで経験していたものとは違って、オープンロードを走る直前だからこそ感じられる、極めて感覚的なものだ。
まず3気筒エンジンのN.V.Hに注目した。前後に取り付けられたバランサーの効果が最大関心事立ったのだが、これは正直驚いた。回転/パワーフィールともにペロンとしてた3気筒感覚がなく、ある意味大人だ。副変速機つきCVTについては、事前説明会を中心に「ちょっとマユツバじゃねーの?」怪しんでいたのだが、パワースペックの数字とは異なるパフォーマンスのあり方に「おっ?」と思った。
165/70R14という、なにやら郷愁を誘うタイヤサイズが与えられながら、まずはメカニカルグリップと空力ボディで不安要素を取り払い、足腰の弱さをドライバーに意識させることがない。ヒップポイントのベースがやや高く、もう少し収まり感のあるセットアップのほうが親切とは思ったが、デザイン、ヴュー、タッチともに一定以上の評価が与えられる。
一応テストなので、トップエンド領域の能力を確かめた上での評価だが、新型マーチはここしばらくこのクラスのコンパクトカーの走り、パッケージング、デザイン感覚などのベンチマークになると思う。ビジネスモデルを含むトータルパッケージで、このクルマに比肩し得るクルマは、現時点では皆無。とくに新興国と先進諸国に同時に対応できる能力の高さは、全世界メーカーに強い衝撃を与えることになるのではないだろうか。
試乗を終えると、例によって開発者に囲まれた。思った通りのことを述べ、いつものように煙に巻いて退散しようと思ったところへ現代の名工褒章拝受のK.Hさんの登場である。(面倒臭せぇなぁ)と思いつつ、今回は「日産が戻りつつある」(要約)みたいな感想を述べた後、話をあっちゃこっちゃに飛ばして、事なきを得た。クルマとして予想以上に良く仕上がっていたと思ったのは本当だ。
JUKEとこのマーチで、なんとなくだが日産はいい方向に転がり始めたような感触を抱いている。売れる売れないについては語らないのがポリシーだがこれをきちんと評価できないようでは相当まずい。あと一世代はこのままやっていける。新型マーチを手にした率直な感想です。
Posted at 2010/08/02 04:08:09 | |
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