
本拠地らしい威厳に満ちた巨大なホール1でいつもの力強さを取り戻したメルセデスベンツ。2度目のホール11で着実に前進していることを印象づけたBMW。ホール3.0にグループ6ブランド、中庭のFORUMにはかつてのBMWを彷彿とさせる"サーキット"付きのテンポラリーホール(20億円とも噂された)をAUDIのために用意したVW。
ドイツ民族系3グループの勢いに、かつて感じたことのない意気込み、誇り、自信を深く刻み込まれた。いよいよ具体的な形を成してきた……その意味では強い圧迫感を覚えたが、その行き方がすべてかというと、ちょっと違うのでは……と思った。
存在感を強く印象づける圧倒的な3グループのイメージは、まさにドイツ流の理想追求を世界にアピールするプロパガンダではあるけれど、それが世界に普遍的に通じる行き方かというと、かなり無理がある。凄いけれど、それが現実化した暁の世界の有り様がこっちかな……とは思えない。はたして、第64回IAAでドイツが示した具体的な方向性は実を結ぶか。これからの10年間はその真偽を知る歴史の積み重ねということになるのだろう。
相対的に日本メーカーのプレゼンスは劇的に低下してしまったが、それはドイツ価値観との対比の結果として生じたことだと捉えたい。力で押し倒す西欧的な科学主義的アプローチとはことなる自然観に基づく柔らかな現実対応。自然をパワーで克服するのではなく、自然には抗えないという前提に基づいて柔軟に対応して行く日本独特の価値観が根底に流れる『洋魂和才』とでもいうべきモビリティの創造。
いまはまだ世界に通じる価値観の体をなしてはいないけれど、すでに日本のクルマシーンでは現実のものとなっている(軽とミニバンが象徴する)柔らかい人とクルマの関係。ドイツを坂の上の雲と見なすのではなく、いろんな意味でタイトな日本の環境から世界に向けて発信できるはずの、ドイツ流とは違うクルマのあり方の提案。それが、たとえば次の東京モーターショーで打ち出されることを切に願う。
プレスデイ初日が終わった後、パーキングにアクセスするホール11のエントランスに足を運ぶと、モーターショーでしか顔を合わせることのないカースタイリングの藤本さんと元オペルの児玉英雄さんとバッタリ。何やら受付をしているので「何をなさってるのですか?」尋ねると、「designer's nightですよ。よかったらjointしますか?」ドライバー編集部のKA君とカメラマンのKU君を伴ってご相伴に与ることに。世界にはこんなにも多くのデザイン関係者がいるのか……ここに集う人がすべてであるわけもないが、その盛況ぶりに改めて世界の自動車産業の広がりを思い知った。
もちろん日本メーカーのデザイン関係者の知った顔も多かったのだが、デザイナーズナイトは昨年のLAショー以来2度目のアウェー状態。傍観者の雰囲気で会場の隅に潜んでいると、メイン写真の中村史郎さんが捜し当ててくれてひとしきり"熱いトーク"。お題は『軽とミニバン』の日本のクルマシーンの是非という絶好のオヤジの酒飲み話ネタ。
その状況どこが悪い、欧州車の理想主義的な一面を披瀝し翻ってニッポンは……という論調の日本の自動車メディアの現実は問題だとする中村説と、その通りだけど軽とミニバンというモビリティの実需だけではつまらない、自動車はもっと楽しい人生を豊かにする道具であるべきという俺説。根っこでは同じことを言っているのだけど、ちょっとお酒が入ったおじさんトークはとめどもない。
翌プレスディ2日には改めてインティニティブース内で恒例のcarviewモーターショートークwith Shiro Nakamuraを収録を収録したのでご覧ください。前夜の過激さはありませんが、エッセンスは感じ取って頂けると思います。

ドイツを初めとする欧州勢の壮観に対して、日本メーカーのプレゼンスが本当に小さくなってしまったのは気掛かりですが、ここは楽観ということで明るく行きたいと思います。ただ、今回もニュースがあるのでよろしく!……とチーフエンジニアが言っていたFT86-Ⅱコンセプトは色が変わっただけ、SUBARU BRZプロローグもほぼジュネーブのままのスケルトン・アーキテクチャーの展示に留まった。正式発表3ヶ月前のタイミングでの足踏み状態に、あれれ?な印象を受けたのは僕だけでしょうか?


Posted at 2011/09/16 13:40:34 | |
トラックバック(0) | 日記