
SUV(Sport Utility Vehicle)という言葉が普通に使われるようになって10年くらいになるだろうか。ヨンク(四駆)、4WD、オフロード車、クロカン、RV……いろんな呼ばれ方をして何か締まりがない。アメリカではエスユーブイだと知って、これは便利と使い始めた。
もともとJEEPやピックアップトラックベース(ということはフレーム付き)の4WDモデルで、アプローチアングルやデパーチャーアングル、最低地上高、などのクライテリアが存在し、条件のいくつかを満たしたものをSUVといい、長い間税制面での優遇が与えられた。

存在としては日本における軽自動車のような側面があり、ピックアップトラックをネガティブな存在とは捉えず、むしろタフネスの象徴として好まれる、世界随一の農業国らしい風土が生んだアメリカの特産品。これを世界的なブームとして広めたのが、RAV-4やCR-Vといったアメリカ文化を日本の風土に合うコンパクトサイズにまとめたクルマ。それが世界に羽ばたきグローバルな存在となっていった。

もう一つのエポックメーカーとして挙げられるのは、乗用車ベース(モノコックボディ)のクロスオーバーSUVというジャンルを提示したレクサスRX(ハリアー)だろうか。アメリカ発祥で、日本でアレンジされた文化的な存在がもともとランクル、サファリ、パジェロで世界的な認知を得ていたヘビーデューティオフローダーの技術力と合流して、21世紀に入って欧州をも巻き込んグローバルなムーブメントになった。
相対的に大きくて重くて総じて大喰い。エコだ省資源だ環境だと難しい世の中になって、舗装率の小さい途上国ならまだしも、先進国を中心とする都市化が進んだ国々でそれはどうなの? かなり怪しい厄介者であるはずなのだが、世界中で人気が衰える気配が見えない。

先頭を走る日本はすでに衰退して久しいが、ヨーロッパでのキャシュカイのヒットに始まるSUV人気は、『今頃?』保守性の裏返しで、変化のスピードの遅さに驚くほかはないが、ジャーマンプレミアムは20年前はほぼゼロだったこのカテゴリーにご執心。世界中で人気なのだからしかたがない。
少し前までの世界のトレンドセッター米国では、燃料価格に敏感で路上の景色はオイル次第という感じだが、本音はSUV大好き。政治的には反目するがクルマの好みではアメリカの忠実なフォロワーとなる中国もSUVはこれから。

アメリカのジープ、日本のランクル・サファリ・パジェロ、英国のレンジ/ランドローバー、そしてドイツのゲレンデワーゲンがルーツのG。それらは、フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニにジャガー・アストン、コルベットなどといったハイエンドスポーツと双璧を成す魅力的なクルマの代表例。頭じゃ、そんな反エコなクルマ…と思ってはいても、ワイルドな身体感覚を直接刺激するスタイルに抗するのは難しい。
G63に乗った。細かいリポートはしない。馬鹿力に雰囲気のあるミリタリーな四角いボディになんとかかんとか現代の技術で帳尻を合わせるハンドリングと乗り心地。どう考えても、自由奔放に走らせたら5㎞/ℓ以上に伸ばすののは指南の技。まったく正しくなく、時代に合わない印象が強いが、しかしこれを駄目というのは忍びない。
クルマは所詮アンピバレンスの塊。18歳で免許を手にした頃は高度経済成長の反動で公害と交通戦争でクルマは目の敵。そんな逆風の時代にレースに目覚め振り子のように心は千々に乱れた。まあ、コンパクトFRに活路を見出す思考が根付いたのも、そんなこんながあったから。今までの行き掛かりをそのままにして、対症療法で凌ごうとしたら、結局何も変わらない。常識を疑うところから未来への展望は開けるはず。
メルセデスベンツのGクラスは、この魅力を越えないと新しい時代は築けないということを思い知らせる存在という意味で貴重だ。V12ツインターボのG65のように3千万円超の値段でアナザーワールドだと実感が湧かないレベルに行ってもらえれば気は楽だが、1000万円台だとバリューフォアマネーで「いいじゃん!」となる人もこの日本には相当数いるはず。
精々そういう人々には格好良く乗りこなしてもらって、路上を華やかにしてほしいもの。しかし、G63を手にすると、やっぱり"ベンツの人"になりがちですなあ。あの偉くなったような感じってどこから来るんですかね。クルマに詳しくない人でも分かるあの感覚。なかなか厄介であります。
タイトル画像はML350。六本木ベースの試乗会でどこまで行ける? 写真を取る手間を考えつつチャレンジして辿り着けたのが羽田の国際線ターミナル。クロスオーバーSUV、それもプレミアム系のメルセデスの作りとなると、十分セダンの代わりになり得る。でもなあ。
Posted at 2012/10/25 23:28:54 | |
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