
第43回東京モーターショー2013は、23日の一般公開初日から今日(27日)がちょうど中日。20・21日のプレスデイウィークエンドは早朝から取材に追われ、22日の特別招待日は骨休め。連休のウィークエンドは西ホール外の屋外展示場で開催された『同乗試乗会』で汗を流し、25日からはガイドツアーに出動した。
急遽箱根でオデッセイの試乗会がブッキングされ、6時に箱根ターンパイクに向かい、10時過ぎに小田原から新幹線で東京ビッグサイト入り。午後のツアー2回興行(各回2時間)の終わりが19時という、年甲斐もなくれれれ?な流れでa hard days nightを迎えた。
26日は夕刻17時からの一回興行ということで、事前にはちょっと物足りない気持ちがしていたが、ペース配分的にはこれで十分。あまり年齢を意識するタイプではなかったが、やはり寄る年波で2年前とは明らかに勢いが違う。んで、今日は完全off。夕刻から浅草で年末(?)恒例の『元ドリクラ』年次総会があるので、体調を整えるにはちょうど良い。明日、明後日は2回興行が予定されている。
このガイドツアー、前々回幕張メッセ最後の東京モーターショー(TMS)2009が、リーマンショックの泥障を受けて欧米勢が一斉に出展取りやめ、日本勢も自粛ムードで低迷が予想されたことから、自工会の運営事務方から日本自動車ジャーナリスト協会にガイドツアーの打診があり、ひと肌脱ごうということで依頼を受ける形で始まった。
最初は手探りの状態。自工会サイドも様子見といった感じだったが、結果は好評で前回(2011年)からは前売りチケットによる正式プログラムとして位置づけられた。09年の初回は、ガイドが指名できる事前登録だったが、前回からは日時のみの選択でガイドは先着順で決めるスタイルに変わっている。平日の5日間、1日4部で各回5組×10名ということでキャパは延べ1000人に止まる。1300円の前売り券プラス700円という比較的安価な設定もあって入手困難と聞き及んでいる。
僕のガイドツアーはこんな感じ。グループ10名の皆さんとは挨拶もそこそこに、混雑の中でも聴こえるように用意されたマイク/イヤーホンの調子を確認して即室外へ。東京ビッグサイト事務棟1Fからエスカレーターで2Fに上り東ホールを目指す。この道中、まずエスカレーターに乗るところから質問を投げかけます。「この東京ビッグサイトは日本最大のコンベンションセンターですが、さて世界では何番目ぐらいの大きさと思いますか?」
いろんな答えが出ますが、概ね10番以内、行って20何番というところです。「実は世界で68番目、多くの人が幕張メッセのほうが大きいと思っていますが、屋内展示面積は東京ビッグサイトの8万㎡に対し幕張メッセは7.2万㎡」ほとんどの人が意外という顔をする。世界のトップスリーと思っている人も少なくない。
世界最大はドイツのハノーバー(47万㎡)でここ(東京ビッグサイト)の約6倍、この9月にIAAが行なわれたフランクフルトメッセは(35.5万㎡)で約4倍強。フランクフルトショーを取材した者なら誰でも知っていることだが、ダイムラーAGを始めとするジャーマンスリーそれぞれのホールの巨大さは、3グループだけで東京全体と変わらないと思えるほど。まず勝負になりません。
日本のメディアは、東京モーターショーを世界5大ショーとしてそれなりのものだという情報を送り続けていますが、それは観客動員数についての話で、出展メーカー数や世界に情報発信されるワールドプレミアの質と量は桁違い。メッセという言葉がドイツ語の見本市を表わすように、ドイツは成熟したメッセ文化を持っている。コンベンションセンターは他にもケルン(28.4万㎡)、デュッセルドルフ(26.2万㎡)と続き、ドイツ国内には337万㎡の展示面積が備わっている。
日本はというと、コンベンションセンターの展示面積が合計約35万㎡。英国の60万㎡の約半分で、全部合わせてもフランクフルトメッセひとつに及ばない。ちなみに、フランクフルトと隔年開催のパリ(ポルトヴェルサイユEXPO)は24.2万㎡、ミラノサローネのミラノは34.5万㎡。延べ面積では米国が最大で600万㎡超、シカゴ(24.1㎡)以外はデトロイトCOBOセンターの5万㎡を始め、LAもNYもそこそこのサイズだが、その4つの拠点で行なわれるモーターショーはいずれも国際と名のつくもので毎年開催となっている。
アジア最大は中国の広州で、今年はTMSと同時期に開催されている広州ショーの会場は33.8万㎡、上海は新たにNホールが加わって25万㎡以上になったはずだし、北京だって10万㎡を超える。中国全土では500万㎡近い展示場面積があるという。アメリカと同じ広大な国土を持つことから、考えてみれば納得できるが、日本全体の展示場面積が広州ひとつにも及ばないという事実は考えなければならないことだろう。
僕は少し前に広州ショーを取材したことがあるが、当時は4棟ある内の2棟のみが完成していて、1棟だけで中日米欧の結構なメーカー/ブランドを呑み込んでいた。広州ショーは毎年開催、上海/北京が隔年開催されていて、出展メーカー数ではTMSの比ではない。
しかも、中国の3大ショーにはいずれも国際(International)のタイトルが付いている。TMSは過去42回一度も国際を名乗ったことがなく、今回もパンフレットのどこにもInternationalの文字は見受けられないはずだ。
毎年開催のジュネーブショーが行なわれるPALEXPOは、5大モーターショーと言われる中でも、もっともコンパクトで中立で華やかで取材が楽しいショー会場だが、それでも10万㎡。
毎年日本のメディア/ジャーナリストは各国各地の国際モーターショーに出掛けていて、それらの事実を知っているはずなのに、本拠の東京モーターショーの現実をきちんと批評、批判することをしない。
この辺を枕にツアーを始めて、会議棟から長い長い通路を歩いて東ホールに至るまでに話して、さあ‥‥という具合に各ブースを巡る。もちろん2時間ですべてをカバーすることは不可能なので、そこは僕の独断と偏見にお任せ願うことになる。スバル、レクサス、BMW、ミニは軽くスルーしたいがそれぞれにワールドプレミアがあるんだよね。
トヨタのステージに飾られた近未来の4台はジュネーブショーでワールドプレミアしたFT86オープンコンセプト、パーソナルモビリティのi-ROAD、2015年に市販を明言したセダンのFCVコンセプト、そして東京オリンピックを視野に入れたLPG+ハイブリッドのジャパンタクシー。いずれも魅力的な展開で、ここは触れずにはいられない。
今回のTMSでの一押しは日産のIDx FREEFLOW/NISMO。ジェネレーションZと呼ばれるデジタルネイティブ世代の嗜好を抽出したファッションとゲームの2つの異なる方向性を打ち出したコンセプトモデルは、70年代の記憶を留める熟年世代のハートにも響いた。510ブルやローレルなどのデザインエッセンスを現代解釈させたルックスは、若い世代に新鮮に映ると同時に、オールドタイマーの共感を生んだ。

ルマンチャレンジのデルタウィング由来ともいえるEVのブレードグライダーともども日産にカムバックした田井悟デザイナーの作となるそうだが、日産デザインに新境地をもたらす展開には要注目だろう。

ここから西ホールのホンダS660までは一応触れて回るが、ワールドプレミアを中心に軽く軽く。途中曙ブレーキなどに寄ったり、ポルシェはやっぱりいいねとか言いながら。ケン・オクヤマ(奥山清行)のブースにはKODE9というオリジナルの2シータースポーツがあって、これもじっくり行きたいところ。1200万円で売る、ただし僕(奥山さん)が気に入った人にだけ‥‥というコメントを得ているが、何か良いじゃない?



パビューンと駆け足で巡った最後は西ホールの奥のおくにあるBEWITHというハイエンドオーディオのブースで30分位ゆっくり掛けて締める。ここにはパガーニ・ウライアという今回のTMSで販売されるクルマの中では最高値1億5千万円以上というスーパースポーツが展示されていて、じっくり鑑賞しつつ同車にオプション設定(500万円以上という)されたオーディオのデモ(ヴェルファイアーに装備された100万円のシステム)で心を落ち着けてもらう。

コンベンションセンターの器の小ささと動線の悪さ、見る者より主催者の都合ばかりが先に立ったショー運営にはメディアはもっともっと積極的な批判を試みる必要がある。何たって、国産勢を中心とする出展内容は世界のどこに出しても恥ずかしくないクォリティとレベルの高さを備えるもの。LAや広州と開催期間がバッティングし、国外に発信するための海外プレスを呼び込めない現状は憂うのが当然で、盛り上げましょうの掛け声だけで済まされるような問題ではない。
今回ガイドツアーをやっていてしみじみ実感したのは、結局のところ国際モーターショーという気概を持って開催されているショーではないな、ということ。観客動員数を気にするのはけっこうだが、大事なのは訪れる人々の満足だろう。
世界に冠たる日本の自動車産業の一大プレゼンテーションでもあるモーターショーが、他の国際ショーとは比べようもないせこいスケールで行なわれている事実。誰も声を上げないが、そこを改めるところから次なる発展の道筋が見えてくる。そもそも一極集中の東京でやる必要があるのだろうか? 諸々含めて考え直すところに、我々は差し掛かっているように思う。今回のガイドツアーでは、クルマの明るい未来とともに違う視点を示している。あと2日4回の興行が残っている。もう少しブラッシュアップしないとね。
Posted at 2013/11/27 17:06:45 | |
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