生乳廃棄のおそれ再び 春休みと大型連休、学校給食なくなる度の懸念
3/26(土) 16:00配信
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朝日新聞デジタル
大規模牧場の牛舎で飼料を食べる乳牛=2022年3月22日、北海道上士幌町
春休みや大型連休で学校給食がなくなる5月にかけて、牛乳の原料となる生乳が余り、廃棄されるおそれが再び浮上している。飼料や原油の高騰に苦しむ酪農家からは悲鳴が上がる。年末年始に続き、学校が休みに入る度に「余剰廃棄」が懸念されるのはなぜか。背景を探った。
【ひと目でわかる】新型コロナ感染拡大以降の生乳生産の推移
「苦労して搾った生乳を捨てるなんて、あんなつらい思いはない。廃棄は絶対やりたくない」。全国の生乳生産の半分以上を占める酪農王国・北海道。上士幌町で約4300頭の乳牛を飼育する「ドリームヒル」の小椋幸男社長(70)はそう吐露する。
官民一帯となって生産拡大、大規模化路線を進め、ここ数年は前年比3%増が生産目標に掲げられてきた。牛を増やし、設備投資にも力を入れてきた。一方で、配合飼料の価格は原料のトウモロコシの需要増や原油高の影響で、2年前から約3割上昇。ウクライナ情勢などを背景に、4月からはさらに値上げされる。
そうした中、「ホクレン農業協同組合連合会」などは生乳廃棄を避けるため、生産抑制の旗を振り出した。「これまで生乳をつくれつくれと言っていたのに、今度は余ったから生産を抑えろと言う。そんなにコロコロ変わる農政はおかしい」と訴える。
■酪農家激減、増産転機はバター不足
国内の酪農家数はこの半世紀で、約30万戸から約1万4千戸まで激減した。朝夕と毎日搾乳をしなければならない労働環境の過酷さや、新規参入の難しさなどが主な理由とされる。農林水産省の統計によると、生乳の生産量も1996年の約866万トンをピークに減少傾向が続いてきた。
増産に踏み切る転機となったのが2014年に深刻化したバター不足だ。国内の生乳の生産量が減り、クリスマスケーキなどへの需要が高まる時期を見込んで農水省は緊急輸入してしのいだ。その後、同省は酪農家の設備投資を支援する事業を開始、生産量は18年から増加に転じた。19年度には、飼育頭数を増やした酪農家への補助金も設け、増産を後押ししてきた。
そうした状況下で、コロナ禍が起きた。外食を中心に生乳の需要は冷え込み、20年は業務用に回る牛乳やヨーグルトの量は前年の約87%に減少。観光も下火となり、ミルクを使ったお土産需要も激減した。
20年3月の全国の小中高での一斉休校もあり、業界は保存の利くバターや脱脂粉乳などの増産で対応してきた。だが、コロナによる需要減は長期化し、昨年末、この春休みと学校給食がなくなる度に、余剰による廃棄が懸念される事態に陥っている。
Posted at 2022/03/27 09:00:29 | |
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