意識向上「9割以上の減災効果」 福島県の地震・津波被害想定
2022年11月26日 08時50分
浜通りで15日に行われた広域津波避難訓練に参加する子どもたち。防災意識を向上させる継続的な取り組みが求められている
県が24年ぶりに全面的に見直した地震・津波被害想定。大規模な被害予測を受け、行政や防災組織の関係者は危機感を強める。一方、対策を講じれば大幅に被害は軽減されるとされ、想定を機に住民の意識を向上させようと備えを急ぐ。
「避難しようとする意識があり、逃げることができれば、津波の犠牲者を少なくできる」。相馬市岩子地区の自治会長で、自主防災組織の会長を兼ねる山下利雄さん(71)は、意識向上などにより、「9割以上の減災効果がある」とする県の想定に納得する。地区は東日本大震災で大きな被害を受けた。鮮烈な印象は残っており、住民は強い避難意識を持っている。最大震度6強を観測した3月の地震でも「みんなこぞって高台を目指した」という。
一方で、震災の記憶が風化し、避難意識が薄れることを警戒。新型コロナウイルス禍の今年も規模を縮小して防災訓練を実施するなど、意識向上に向けた取り組みを続ける。山下さんは「訓練を継続することが、ますます大切になる」と話す。
会津盆地東縁断層帯には、鶴ケ城や多くの学校がある会津若松市中心部が含まれる。市の住宅耐震化率は2020年の推計値で約86%。市は工事費を補助するなど耐震化を促進しているが、市危機管理課の担当者は「中心部には耐震性能が不十分な古い住宅が多い。高齢者も多く、積雪時に大規模な地震が起きれば大きな被害が出る恐れがある」と危機感を示す。
市中心部の鶴城地区は災害への備えが進んでいる地区の一つ。「要支援者」を誰が助けるか町内会ごとに話し合っているほか、県の防災マニュアルを基に地域独自のマニュアルを作成、住民に配る準備をしている。ただ、同地区区長会の松島武司会長(77)は「(地区を流れる)湯川の氾濫による水害を想定した準備が最優先で、地震の対策は進んでいない」と説明。「予測可能な水害は事前避難もできるが、地震は予測できず、よりスピード感を持った避難が必要。水害対策で精いっぱいなのが現状だ」と頭を悩ませる。
市の担当者は「東日本大震災や3月の本県沖地震で、会津は浜通り、中通りに比べ被害が少なかった。防災への意識は町内会によって温度差がある」と指摘。「県から具体的な被害想定が示されたことで、市民の防災意識が高まればいい」と話した。
福島市も耐震診断や古い住宅の建て替え費用の助成などで耐震化を促進している。同市東浜町会自主防災組織には約500世帯が加入。組織を班分けし連絡責任者を決め、有事に備えた伝達訓練などに取り組んでいる。昨年2月の本県沖地震では地区集会所に対策本部を設置、被害情報を収集した。加入世帯に大きな被害はなかったが、円滑な情報伝達に日頃の訓練が生きた。渡部展雄会長(75)、菅野芳雄防犯・防災部長(70)は「まず、それぞれが自分の身を守ることが一番」とした上で、いつ起きるか分からない災害に「日頃から備えるだけ」と強調する。
Posted at 2022/11/26 10:12:39 | |
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