ラムサール条約に意欲 猪苗代湖登録へ野鳥の会、地元の賛成鍵
2023年10月21日 09時55分
冬鳥の飛来地として知られる猪苗代湖。関係者がラムサール条約登録に向けて動いている
美しい湖を次世代に―。国際的に重要な湿地を保全するための「ラムサール条約」に猪苗代湖を登録しようと、県内で動きが本格化している。準備を進めてきた日本野鳥の会郡山、会津の両支部は登録に向け、来月上旬までに猪苗代、会津若松、郡山の沿岸3市町に要望書を提出する。登録されれば、環境保全だけでなく、国際的な認知度アップへの期待も高まる。関係者は「猪苗代湖は地元の誇り。子どもや孫に美しい猪苗代湖を残すためのきっかけにしたい」と意欲を見せる。
国内でのラムサール条約の登録には〈1〉国際的な九つの基準のいずれかに該当すること〈2〉自然公園法や鳥獣保護管理法など国の法律で将来にわたって自然環境の保全が図られること〈3〉地元住民などから登録への賛意が得られること―が条件に挙げられる。
日本野鳥の会郡山支部は、猪苗代湖は9基準のうち、生息するコハクチョウの個体数が基準を満たす可能性があると分析。さらに磐梯朝日国立公園の第2種特別地域のため、国の法律で将来にわたって自然環境の保全が図られており、地元の賛成が得られれば、全ての登録条件を満たすことができるという。
環境省によると、ラムサール条約に登録されることによる何らかの追加規制はない。水鳥の生息地としてだけでなく、産業や地域住民の生活とバランスを取りながら「恵みを持続的に活用すること」が提唱されている。国際的に重要な湿地と認められることで国内外から注目を浴びれば、観光や学校教育向けにエコツーリズムなどの需要が高まり、地域活性化につながる。さらに、地域の農産物や水産物に「ラムサール・ブランド」として価値が生まれ、経済効果も期待できる。
日本野鳥の会郡山支部は、独自にラムサール条約に関する勉強会や登録基準を満たすか検証を重ねてきた。湯浅大郎支部長(63)は「渡り鳥の飛来地として多様な生物がいる環境を将来に向けて保全したい」と思いを込める。
日本野鳥の会と話し合いを進めてきた他団体も期待する。猪苗代湖の自然を守る会の鬼多見賢代表(76)は「自然形態を良好な状態に戻すことが願い」、NPO法人輝く猪苗代湖をつくる県民会議の藤田豊理事長(73)は「猪苗代湖は福島県の宝。県民が自分ごととして環境保全を考えてほしい」と話した。
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ラムサール条約 湿原や湖沼、河川などの湿地の保全と賢明な利用を目的とする条約で、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年、イランのラムサールで開かれた国際会議で採択され、日本は80年に加入した。今月現在、締約国は172カ国で登録湿地数2494カ所。このうち国内は53カ所で、本県関係では尾瀬が登録されている。
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