気持ち悪い」異質さにSNS熱狂 TBSアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」
〈ポップカルチャー最前線〉
2024/3/14 11:00
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三宅 令
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第9話から、イサミ(左)とスミス
第9話から、イサミ(左)とスミス
木曜深夜に異変が起きている。1月に新設されたTBSのアニメ枠(毎週木曜午後11時56分)で放送中のロボットアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」が交流サイト(SNS)を中心に大人気だ。近未来を舞台に宇宙からの侵略者と戦う主人公とロボットという王道の設定だが、放送後になぜか視聴者が毎週のように「気持ち悪い」と大喜び。そのネガティブな単語には明らかに愛情や感嘆が込められており、屈折した反響の大きさに制作側も驚いている。
令和のロボットアニメ
陸上自衛隊の主人公、イサミ(鈴木崚汰)が、人型ロボットのブレイバーン(鈴村健一)の協力を得て、米軍のスミス(阿座上洋平)とともに侵略者と戦う。ロボットアニメを多く手掛けてきた大張正己監督のもと、丁寧な構成、美しい作画、鮮やかな演出で、従来のアニメファンのみならず、幅広い視聴者から高い評価を得ている。
制作するサイゲームスピクチャーズの竹中信広社長(42)は「令和のロボットアニメを作りたかった」と胸を張る。企画は5年前から。コロナ禍を挟んだこともあり、「世の中に光り差すような明るい作品を」と願って、「主人公の成長」「男の友情」「勇気」を描く骨太の物語を目指した。
ただ、「情報があふれ、エンターテインメントにあふれている令和の世の中で」、勇気がテーマの巨大ロボットにはリアリティーと新鮮味がない。視聴者に受け入れられるかたちを考えたとき、第1話では現実と地続きのミリタリーな世界観を描いたうえで、それとは水と油の「ブレイバーン」を地球の危機に華々しく登場させる。そのギャップ、あえて「異質さ」を楽しんでもらおうとした。
キービジュアルは、昭和から受け継がれてきたロボットアニメの因子を令和にブラッシュアップした
キービジュアルは、昭和から受け継がれてきたロボットアニメの因子を令和にブラッシュアップした
キャッチーな愛情表現
大当たりだった。事前情報を絞っていたこともあり、シビアな現実を切り裂くようにして現れた、往年のスーパーロボットを彷彿とさせる「ブレイバーン」の爽快感に視聴者は熱狂。放送後にはX(旧ツイッター)のトレンド首位に。現在に至るまで、快進撃は続いている。
一方、序盤からブレイバーンがイサミに対して、理解不能なほど熱烈な好意を示したことで、その「異質さ」が「気持ち悪さ」として受け止められた。「クセになる」「知らない人から一方的に思いを寄せられるのって迷惑なんだな」などの感想が並び、「気持ち悪い」は最もキャッチーなファンからの愛情表現に近いワードとなった。竹中社長は「『異質さ』を描いて『気持ち悪い』といわれるのは予想外だった」と困惑気味だ。
「異質さ」を描くにあたり、決して笑いだけを求めて「ふざけているわけではない」という。熱烈な好意の理由と同じく、視聴者を驚かせたイサミとスミスが上半身裸で手を重ねるエンディングテーマの演出も含めて、全てに意味があるといい、「最終話まで見てもらえれば、分かってもらえるはず。それを知った前後で全く印象が変わる」と説明する。
◇
「勇気爆発バーンブレイバーン」について、TBSアニメ事業部の渡辺信也部長に話を聞いた。
事前情報あえて制限
--本作の位置づけは
「今年1月に新設したアニメ枠(毎週木曜午後11時56分)の最初の作品。この枠は、アニメファンが視聴しやすい時間帯に全国の系列局で同時放送されることもあり、TBSアニメにとって非常に重要なリソースだ。本作は、この新枠ができたことを全国に広く周知する意味でも重要な作品だと考えていた」
--放送前の期待は
「新枠の最初のタイトルなので、インパクトのある話題性を期待していた。本作は原作がないオリジナル作品であるため、事前の宣伝が簡単ではなかったが、放送前に出す情報をあえて制限することで1話放送後の驚きを引き出すなど、PR戦略も見事にはまり、SNSを中心に圧倒的な話題性を作ってくれたと感じている。結果としてこの枠の認知度も上がり、大変有り難く思っている」
海外を強く意識
--TBSアニメといえば日5枠(日曜午後5時)が有名。昨年10月からは日曜午後4時半からのアニメ枠となり、系列で日曜夕方に全国ネットアニメ枠が1時間連続する構成になった
ブレイバーンの造形について、竹中信広社長は「僕の中で何かの作品を意識したことはない」と話す。「作り手の意識の中で今まで脈々と受け継がれている」ものが発露した
ブレイバーンの造形について、竹中信広社長は「僕の中で何かの作品を意識したことはない」と話す。「作り手の意識の中で今まで脈々と受け継がれている」ものが発露した
「日曜夕方は毎日放送(MBS)の日5枠と合わせて1時間のアニメゾーンとなっているが、今年4月にはMBSの木曜深夜0時26分枠も開設され、(午後11時56分枠とあわせて)木曜深夜にもアニメが1時間連続する編成になる。さらに日曜午後11時半に中部日本放送(CBC)発の全国ネットのアニメ枠も新設され、ジャパン・ニュース・ネットワーク(JNN)系列で言うと全国で見られるテレビアニメ枠が5つになる。この面の大きさも生かしつつ、系列局でも連携し、『全国で同時に』『テレビで』アニメを見る楽しさを視聴者にお届けできたらと思っている」
--今後のTBSのアニメ展開で何を重視し、どんな作品を扱いたいか
「日本国内でご視聴いただくことはもちろんだが、『海外』を強く意識した作品編成を心掛けていきたい。2020年に深夜アニメ枠で放送した『地縛少年花子くん』は、国内のみならず北米で大きな人気を博した。そのグローバルな盛り上がりを受け、同作のアニメプロジェクトは継続中で、現在新シリーズを製作中だ。同作に限らず、TBS発のアニメが世界に届くことを強く意識していきたいと考えている」
Posted at 2024/03/15 01:33:27 | |
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