ノーベル化学賞 北川進さん会見 京都大学理事
2025年10月8日午前11時43分
(2025年10月8日午後8時15分更新)
ノーベル賞2025
ことしのノーベル化学賞の受賞者に「多孔性金属錯体」と呼ばれる極めて小さい穴を多く持った材料を開発し、材料科学に新たな分野を確立した京都大学理事の北川進さん(74)ら3人が選ばれました。日本からのノーベル賞受賞は個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、6日に生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文さんに続いて30人目です。
目次
3項目
注目会場の電話インタビュー 北川さん「大変栄誉に感じる」
日本のノーベル賞受賞者は30人目
【北川進さん会見 ライブ配信】
「大きな名誉をいただき非常に感激」
北川さんは会見の冒頭で「私がやっているのは新しい材料作りで、新しい機能の材料開発をしてきました。新しいことにチャレンジするのは科学者にとって醍醐味です。つらいこともありますが過去30年楽しんできました。大きな名誉をいただくことになって非常に感激していますし、一緒に進めてきたみなさんに感謝を申し上げたい。そして当然、支えてくれた家族にも感謝しています。退職しても研究させてくれた京都大学には感謝しています」などとあいさつしました。
「勧誘の電話 またかと思った」
北川さんは会見で、受賞の連絡を受けたときのことについて「私の居室でちょうどたまっていた仕事を片付けていたとき午後5時半ごろに固定電話にかかってきました。最近、勧誘の電話がよくかかってくるのでまたかと思い、少し不機嫌に電話をとったら選考委員会からでびっくりしました」と振り返りました。
「この化学が認知され非常にうれしく思う」
北川さんは会見で「受賞で報われたというより、この化学が認知された。一般の人に理解してもらうのはなかなか難しいですが、こういう認知をしていただいたことは非常にうれしく思う」と話しました。
「多孔性金属錯体」 と呼ばれる材料開発
北川さんは京都市出身の74歳。京都大学を卒業したあと、近畿大学の助教授や東京都立大学の教授を経て1998年に京都大学の教授となり、2017年からは京都大学高等研究院の特別教授を務め去年、京都大学の理事・副学長に就任しました。
北川さんは有機物と金属を組み合わせた化合物の研究に取り組む中で、極めて小さい穴を多く持つ 「多孔性金属錯体」 と呼ばれる材料を開発しました。この材料は穴の大きさを分子レベルで思いどおりに変えることができるため、特定の気体を閉じ込めたり、目的の物質だけを取り出したりすることが可能になりました。
この技術を使うことで▽工場や車などから排出される有害ガスの回収や▽燃料電池に欠かせない水素の安全な貯蔵が効率的にできるようになるとされるなど、さまざまな分野で実用化にむけた研究が進められています。
注目
会場の電話インタビュー 北川さん「大変栄誉に感じる」
北川さんはノーベル化学賞の発表会見の会場からの電話インタビューに英語で応じ、委員会からの「おめでとうございます」という祝意に対し「ありがとうございます。私の長年にわたる研究を評価していただいたことを大変栄誉に感じています」と答えていました。そして受賞者に選ばれた知らせを受けたときの気持ちについて「驚くとともにうれしいです。喜びをほかの2人と共有したいです」と話していました。
日本のノーベル賞受賞者は30人目
こうした業績によって北川さんは2011年に「紫綬褒章」を受章したほか、2018年にはフランスの化学会グランプリを受賞しています。
日本からのノーベル賞受賞は去年の日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会に続き2年連続で、個人ではアメリカ国籍を取得した人を含め、6日に生理学・医学賞の受賞が決まった坂口志文さんに続いて30人目です。化学賞では2019年の吉野彰さんに続いて9人目です。
北川さんの功績は
ノーベル化学賞を選考する委員会は、受賞者に選ばれた北川進さんら3人の功績について「気体や化学物質が流れることができる大きな空間を持つ分子構造を創りだした。こうした構造体『金属有機構造体』は砂漠の空気から水を集めたり、二酸化炭素を回収したりするほか、有毒ガスの貯蔵や化学反応の触媒として利用することができる」と説明しています。
そのうえで北川さんの貢献について「気体がこの分子構造に出入りできることを示し『金属有機構造体』を自在に作ることができると予測した」としています。そして「この画期的な発見により、化学者たちは何万もの異なる『金属有機構造体』を作り出した。そのうちのいくつかは有機フッ素化合物「PFAS」の水からの分離、環境中に残された医薬品の分解、二酸化炭素の回収や砂漠の空気から水を集めるといった応用を通じて、人類の最も大きな課題のいくつかを解決することに貢献するかもしれない」と評価しています。
==関係者から喜びの声==
京都府知事「快挙を府民と喜びたい」
ノーベル化学賞の受賞者に北川進さんが選ばれたことについて、京都府の西脇隆俊知事は「心からお祝い申し上げます。北川さんが開発した『多孔性材料』は地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸着や、電気自動車の燃料となる水素の貯蔵に用いられるなど、環境や資源の問題に革命的な変化をもたらすものとして期待されています」としたうえで「京都ゆかりの方がノーベル賞を受賞した快挙を府民とともに喜びたい」などとコメントしています。
親交のある名古屋工業大 増田名誉教授「楽しみに待っていた」
北川進さんと京都大学の大学院時代からおよそ50年来の親交がある、名古屋工業大学の増田秀樹名誉教授は「この日を楽しみに待っていた。北川さんもこの日が来ることを待ちかねていたと思う」と話しました。
大学院では席が隣で当時はいつも一緒にいたということで、北川さんの人柄について「温厚かつアグレッシブで、世界で1番にならなければといったことには敏感だったと思う。この研究は地球温暖化などにも貢献できると思う。いつもライバルとして研究してきたので、これから私も一緒に社会貢献ができれば」と話していました。
論文共同執筆 大阪公立大 久保田教授「うれしいです」
北川進さんと過去に30本以上の論文を共同執筆している大阪公立大学の久保田佳基教授は「いつか受賞すると思っていましたが、それが今回とは思わず自分のことのようにうれしいです」と話していました。そのうえで「北川先生は研究に厳しく常にリーダーシップを発揮されていた一方で、若手の研究者を勇気づけることにも熱心でした。受賞によりさらに忙しくなって会えなくなってしまうのではないかと不安になっています」と話していました。
Posted at 2025/10/08 20:39:52 | |
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