
原爆投下後の写真や映像など ユネスコの「世界の記憶」に推薦
2023年11月28日 20時57分
シェアする
世界的に重要な記録物を人類の財産として保存するユネスコの「世界の記憶」に、原爆投下後の広島で撮られた写真や映像の資料と、東京の増上寺が所蔵する経典の、2件が日本からの候補として推薦されることになりました。
NHKアーカイブス「日本ニュース 第257号 原子爆弾 広島市の惨害」動画全編
ユネスコの「世界の記憶」は、世界的に重要な記録物を人類の財産として保存することなどを目的に国際的に登録する制度で、2年に1回審査がされます。
2025年の審査に向け推薦候補を検討していた関係省庁の連絡会議は28日、申請があった5件の中から2件を推薦することを決定しました。
このうち、広島市や中国新聞社、NHKなどが共同で申請した「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」は、原爆が投下された1945年の8月6日から12月末までに広島で撮られたきのこ雲や焼け跡、被爆当日の市民の惨状などの写真1532点と、当時のニュース映像などの動画2点が含まれています。
推薦理由として、多様な撮影者が被爆者や町の状況をその瞬間に撮影し、世界的に希少な写真が多く、原爆投下で何が起きたかを知り決して繰り返さないという人類共通の課題に取り組むために失ってはならない遺産だとしています。
また、浄土宗や東京 港区の増上寺が申請した「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」は、中国の南宋時代など12世紀から13世紀に制作されたおよそ1万2000点に及ぶ木版の経典です。
推薦理由として、仏教学の世界的な基盤形成に貢献し、文献の多様性や文化財としての重要性や希少性から、歴史学や言語学など多分野で重要な役割を
果たしたとしています。
登録の可否は、2025年春のユネスコ執行委員会で決定される予定です。
岸田首相「2025年春の登録に向けて取り組む」
岸田総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し「『広島原爆の視覚的資料』は、原子爆弾の投下で被爆した市民や、報道カメラマンによって撮影された貴重な資料だと聞いている。2025年春の登録に向けて取り組んでいきたい」と述べました。
また浄土宗や東京・港区の増上寺が申請した「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」について「文化史的に貴重であるのはもちろん、漢字や印刷文化からも貴重な資料だと承知している。世界の記憶に登録するのにふさわしい記憶遺産だ」と述べました。
上川外相「平和の大切さ誓い合う大きな要素」
上川外務大臣は記者会見で「原爆関連の資料を体系的に残していくことは、平和の大切さを誓い合う大きな要素になっており、『世界の記憶』として極めて重要だ。必死で記録を残した方々の思いも込めて、現実を多くの人に知ってもらえるよう努力していきたい」と述べました。
「きのこ雲」撮影の元中国新聞記者 山田精三さん
ユネスコの「世界の記憶」に推薦されることになった「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」のうち、広島市の原爆資料館に展示されている原爆の「きのこ雲」の写真を撮影した中国新聞社の元記者の山田精三さん(95)が、NHKなどの取材に応じました。
広島に原爆が投下された際、山田さんは、広島市の旧制広島第一中学校、いまの広島国泰寺高校の夜間部の3年生で、爆心地から北東におよそ6.5キロ離れた場所で、写真を撮影しました。
写真は、木々の後ろに「きのこ雲」が立ち上る様子を捉えたもので、原爆資料館にも展示されています。
その後、中国新聞社の記者として活躍した山田さんは当時の状況について「下のほうから虹色の波紋が上がってきてドカーンと音がしました。そのあとで赤と黒の絵の具のチューブを絞り出して混ぜたような色の雲が浮かんでいたので、何なのかも分からず撮影しました。あとになって、原爆の『きのこ雲』と知り、とても許せないと思いました」と話しました。
そのうえで「私はたまたま撮っただけですが、人類にとって貴重な写真だと思います。原爆の恐ろしさや、こうしたことが2度と起きたらいけないということを感じてもらえたら1番いいと思います」と話していました。
Posted at 2023/11/28 21:53:33 | |
トラックバック(0) | 日記