まさか...クマ、浜通りにも 相次ぐ目撃、専門家「生息している」
2023年11月28日 09時55分
クマの目撃情報を受け、心配そうに鮫川河川敷を見つめる卜部さん=いわき市田人町
浜通りで、かつては生息していないとされたクマの目撃が相次いでいる。県警によると21日現在、今年に入ってからの浜通りでの目撃件数は8件。地元住民が「まさかクマが出るとは」と不安を募らせる一方、識者は「すでに生息していると言える」とし、冬眠前のクマや、冬眠しない「穴持たず」の個体への注意を促す。
県内ではこれまで「阿武隈川の東にクマはいない」と言われていたが、最近では阿武隈山地でもクマの目撃が報告されている。浜通りでの市町村別の目撃情報は浪江町2件、川内村1件、相馬市3件、双葉町1件、いわき市1件。いわき市では17日に遠野町でクマの可能性がある動物のフンが発見され、21日には田人町の鮫川河川敷で1頭が目撃された。田人町の男性(46)は「生まれてからずっと住んでいて、イノシシやイタチを見たことはあったが、クマはない。ただただ驚いている」と話した。
地元の県猟友会勿来支部田人分会は住民に注意を呼びかけるとともに定期的に地区全域を巡回し、警戒を強める方針だ。卜部八千穂(うらべやちほ)分会長(73)は「いわきでクマが発見されるとは思っていなかった。畑仕事で外に出る高齢者も多く、非常に心配だ」と表情を曇らせる。
市の担当者は21日の目撃について「明るい時間帯の情報で信ぴょう性が高い」とし、地元猟友会などと連携して情報収集を進める考えだ。市によると、これまで市内では数年に1回程度、クマの目撃や足跡発見の情報はあるが、生息や被害は正式には確認されていない。目撃が増えれば、防災メールでの注意喚起や現地調査などを進めるという。
冬眠前、特段の警戒必要
クマなどの野生動物に詳しい福島大食農学類の望月翔太准教授は、浜通りでは2000年代前半ごろからクマの目撃情報が増えているとし「生息域拡大の要因として餌の凶作と耕作放棄地の増加が挙げられる」と指摘する。ほかの地域と行き来しているのではなく「浜通りに生息していると言える」と語気を強める。
望月准教授によると、県内には5000~6000頭のクマが生息すると推計され、増加傾向にある。クマは餌が不足すればこれまでの縄張りの外に出て餌を求める。
強い個体は山の奥深くでドングリなど木の実のほか、シカなどの動物を食べるが、メスや子どもなど小さい個体はその縄張りから追い出され「山では収容し切れなくなる」。耕作放棄地が増え、人が住む地域の近くに動物が隠れられる場所ができたことも、目撃情報増加の一因とみられる。
今年は12月中旬ごろには、クマは冬眠し始めるが、望月准教授は「冬眠前のクマは腹をすかせていて、餌への欲求が人間への恐怖を上回ることもある。遭わないことが大事」と力を込める。カキやクリが実った木はクマが自らの餌場と認識していて、近づくと襲われる可能性がある。目撃情報の多い山あいの地域では庭先にクマが出ることもあるため「玄関を開く前にクマ鈴を鳴らして存在を知らせることも考えてほしい」と話す。
また、今年は凶作による餌不足で流産したメスの「穴持たず」が増える可能性がある。穴持たずは凶暴になりやすいとする説もあることから、最善の注意を訴える。
Posted at 2023/11/28 12:36:51 | |
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