除染土巡り県民意見 福島で国との公開討論会、再生利用方針に疑問も
2025/08/19 08:35
環境省は18日、東京電力福島第1原発事故後の除染で出た土壌の再生利用や県外最終処分に理解を深めてもらうため、市民を対象としたパネル討論会を福島市で開いた。3月に過去10年間の取り組みを総括し「双方向の対話」を拡充する方針を示して以降、公開での対話イベントは初めて。参加者からは再生利用の方針自体を疑問視する声や、情報発信の強化を求める意見が挙がった。
市民ら約50人が参加。環境省幹部や学識経験者、地元住民ら計5人が回答した。
同省の中野哲哉参事官は、再生利用の必要性と安全性に関する質問に「福島は原発事故で深刻な被害を受け、日本全体で負担を考えるべきだとの考えが根底にある。被ばく線量は無視できるほど小さく、データを示しながら課題の解決を目指す」と述べた。
放射線量の基準を理解する方法を問われた東日本大震災・原子力災害伝承館長の高村昇長崎大教授は「自分の中に物差しを持つことが大事。例えば胸のレントゲン撮影何回分かと考えるといい」と提案した。
同省は9月5、6の両日、東京都内で同様の集会を開く。その後継続するかどうかは未定。他に福島市出身のタレントなすびさん、大熊町でキウイ栽培に挑む原口拓也さんらが登壇した。
「会場外」への浸透課題 取り組み試行錯誤
原発事故に伴う除染土壌を巡っては、環境省が3月、理解醸成活動の中で「双方向の対話」を充実させる方針を打ち出した経緯がある。18日のイベントは試金石として注目されたが、新鮮さはなかった。県外最終処分の実現に向け、無関心層まで意識を広げられるかが重い課題となっている。
この日の参加者約50人は自ら環境省の特設サイトで申し込んだ。関心が元々高い層とみられ、複数の登壇者が「ここにいる皆さんはご存じでしょうが…」と口にした。復興庁など政府関係者も席を一定数埋めた。参加者は質問や意見を付箋に書き、司会者がこのうち約10点を読み上げた。
こうした形式は2021~23年に東京や仙台などで計9回開催された対話集会と重なる。当時も同省には「関心のない人に届く発信が必要」などと意見が寄せられていた。
同省で担当を長年続ける中野哲哉参事官は参加者から情報発信の在り方を問われ「この場にいない人にも知ってもらう必要があるが、どうすればいいかは今も試行錯誤ばかりしている」と吐露。終了後の取材に「興味のない層への波及は大きな壁。地道に取り組むしかない」と語った。
同省によると、24年度まで10年間の取り組みを総括した結果、理解醸成活動に対話や現地視察を取り入れた場合、参加者の7~9割が再生利用に肯定的な意見を持った。
政府は本年度以降、広告や交流サイト(SNS)を使った情報発信にも力を注ぐ方針で、月内にも当面5年程度の工程表を決定する。
環境省の24年度調査によると、45年3月までの県外最終処分が法定化されていることを「知っている」と答えた県外在住者は24.8%。低濃度土壌を道路などに再生利用する政府方針を「知っている」は13.4%にとどまり、円滑な事業展開には国民的理解の醸成が不可欠となっている。
Posted at 2025/08/19 12:38:14 | |
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