(FBにも書いた文章なので、車を知らないフレンド向けな説明もしてみました)
僕の車のシトロエンDS3が納車されてからちょうど1年! 走行距離は18500キロと、ちょっと走りすぎな程乗りまくっております。運転が気持ち良くて気持ち良くて。
それはいいんですが、日本における圧倒的な知名度の低さがあり、今日なんてトヨタのディーラーに試乗に行ったときですら、営業に「あ・・あの、プジョーですかこれ?」と言われる始末。勉強不足も甚だしいぜ!!
まあ、そんな「得体の知れない新種の動物」感を味わい続けるというのもシトロエンオーナーの醍醐味かも知れん。
車に詳しい人でもない限り、シトロエンって聞いたことあるけど、どんなメーカーかほとんど知られてないと思う。知る機会も無いだろうし…
軽くここで説明をするならば、フランスの自動車メーカー。
フランスには3つの自動車メーカーがあります。ルノー、プジョー、シトロエン。ルノーはカルロス・ゴーンさんで日本で知名度上がったかも知れない(でもルノーの車種は一つも知らない人多し)。プジョーは206っていう小型車が10年くらい前に大ヒットしたので、ライオンが立ってるマークと共に知ってる人は多いかも知れない。そしてシトロエン。これが謎…なのではないか。
日本においてシトロエンに関する何か大きなトピックは、おそらく一度も起こってない。大ヒット車も無い。全ては海の向こうの話で、日本で話題にしてるのは一部の車好きだけ。バイクのトライアンフみたいなものか。バイク好き以外、知る機会に恵まれない。
だから名前は知ってるが、どんな車があるのか全く分からないのも無理もない。
これがルノーだったら近年F1での活躍があったので、メーカー名だけは身近になってるが、シトロエンが活躍してるシーンというのはWRCなどのラリーで、ラリー自体、日本で全然人気が無い。日本人ドライバーがいないし、かつていたスバルや三菱も撤退して、今やテレビもCSでしか放送してない。見る機会がない。
シトロエンはそんなレースシーンで優勝しまくってるわけなのだが、海の向こうの話で、日本では車好きだけが話題にして終わる感じだ。接点がないねえ。
それでもシトロエンには名車がある。
この半世紀で、世界の名車と言われる車。「VW ビートル」や「ローバー ミニ」と並んで「シトロエン 2CV」ってのがあるのだが、その存在意義はビートルやミニと同じ位なのに、何だか日本では影が薄い。なぜだ…
日本人で2CVに乗ってる有名人は、宮崎駿。
エポックメイキングな車もある。「シトロエン DS」や「シトロエン SM」。この辺になってくると、初耳の人がかなり増えてくるのだが、シトロエンDSという車はとにかく凄かった。
1955年から1975年まで生産されたもので、シトロエンが考える「未来の車」をその当時のテクノロジーとデザイン(ここポイント)で無理矢理にも形にしたのである。ハイドロサスなんてのがその典型だ。
世界中に衝撃を与え、売れまくった。そして壊れまくった。それでも後にも先にもこんな強烈な車は(シトロエン自身も)出てこなくて、20世紀を代表する名車かつ珍車と言われる。
珍車と言われる所は、とにかく未来志向過ぎて、明後日の方向に向いたままアレコレと偏執狂的にやりまくったから。モデル末期には、そんな無茶の色々が祟って会社が倒産しかけるという壮大なボケをカマしている。
ちなみに日本人でDSに乗ってる有名人は、稲垣吾郎と内田裕也。稲垣メンバーで捕まった時もシトロエンDSだったはずだ。
シトロエンはこのDSで熱狂的なファンを作ってしまったため、そのファン達は、普通の車を作ってては満足しなくなってしまった。シトロエンは幸か不幸か、ずっと未来志向で明後日の方向に向き続けて欲しい、と思われ続けるメーカーになってしまったのだ。
その後、経営不振からプジョーに買収されてしまい、一時期はコストカットのためにプジョーと共通するようなフツーっぽい車ばかりにった時代もあったけど、2000年以降また吹っ切れてきて自分自身の立ち位置に気づいたようで、2000年代なりの「変なコンセプト」を出してきて、明後日の方向を向いていてくれている。
そこが面白いと思う部分なのだけど、いかんせん明後日の方向を向いてるものだから分かりにくいんだよな… ひねくれてるというか。
世界中で売れているコンパクトカーといえばVWのゴルフとポロだけど、あれは本当によく出来てる。嫌な部分が無いし、強烈な個性も無いから、まんべんなく愛されてる。明後日の方向向いてないし。日本人から見ると、日本車よりかは取っつきにくいかも知れないけど、日本車からのステップアップとして一番に考える車という位置にいると思う。そういう車だから世界中で売れている。
対してシトロエンの車というのはヨーロッパでは売れている。ヨーロッパの中でもちょっと個性を求める人が買うのだろう。そんな位置にあるから、日本人から見て「個性を求めるヨーロッパ人」向けの車というのが遠いんだな。しかも前衛芸術の国おフランスのわけのわからないパリっ子テイストが混ざってて、全然単純明快じゃない。何を考えてるか分からないのだ。
これってダフトパンク以降のフレンチエレクトロを聴いてピンと来たのだけど、フレンチエレクトロとかフレンチディスコってハードだけど、その中にキラキラした未来感とゴシック的な退廃感とエモが同居してる。
多分それがフランス人のワビサビなんだろう。それが揃って初めてフランス人は満足出来る。特にゴシック的退廃感って重要アクセントかも知れない。その退廃感が一番出てるフランス車はシトロエンなのは間違い無い。
前にも書いたけどアメリカで人気なEDMってゴシック的退廃感とか皆無だもんね。コーラをラッパ飲みしてフランクフルト食いまくってる感じで、これってアメ車のイメージと一緒じゃないかな? アメ車には暗さがない。天気はずっと晴れてて、V8の5リッターくらいのエンジンでフリーウェイを飛ばして、テンガロンハット被って肉を食いに行くイメージ。日本人はその明快なアメリカ感が「バカ」に見えるからアメ車を買わないんだけど。
「意味の分からないフランス車」「バカのアメリカ車」を避けて(あと「いい加減で陽気なだけのイタリア車」も避けて)、「カチっと作られて知的なドイツ車」が売れる日本だから、佐藤琢磨あたりが来年からWRCに移籍して、シトロエンDS3で優勝したりしない限り、今後もシトロエンは多分日本では売れないと思います!
が、そんな偉大なシトロエンの系譜の一部に参加出来ていることを、誇りに思うのであります。
Posted at 2013/04/28 01:50:38 | |
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