
信号のない横断歩道に渡ろうとする歩行者がいたら、
車は横断歩道手前で停止して、歩行者の横断を妨げないようにしないといけない。
知っている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、
これは道路交通法第38条に定められたドライバーの義務、交通ルールです。
しかし、実際の道路を見てみるとどうでしょう。
半分、いや、もっと多くの車が、信号のない横断歩道脇に渡りたい歩行者が立っているのに停まらずに通過していきます。
なぜ車を運転している彼ら(彼女ら)は停まらないのでしょう。
その理由、停まらない運転をするメカニズムを解明しないと、
車が横断歩道で歩行者優先をするようになるための
有効な方法がわからないかもしれません。
これから何回かに分けてそれを考えていきたいと思います。
渡ろうとする歩行者がいる 信号のない横断歩道で、
停まらない運転をするのにはいくつかのパターンがあります。
◆ 交通ルールを知らない/忘れた
信号のない横断歩道では歩行者の横断が常に優先であり、渡ろうとする歩行者がいたら車は停止して歩行者の横断を優先しなければいけません。
しかし、その交通ルールを知らなければ、車の運転者は停まらないでしょう。
「信号がないから車は停まらなくていい。歩行者は車が通り過ぎてから渡るのが交通ルール。だって子供の頃、車が来ていたら渡ってはいけないって習ったでしょ」という人がいます。
これは、歩行者の自己防衛の行動を、横断歩道は車優先と誤解してしまっているのではないでしょうか。 歩行者の自己防衛の行動は歩行者が自身の身を守るため。それがあるからといって横断歩道で車が歩行者の横断を妨害してよい理由にはなりません。
残念ながら、教習所で横断歩道は歩行者優先と習っても、幼少の頃から刷り込まれた車優先意識が勝ってしまい、横断歩道の歩行者優先を忘れてしまう人もいるようです。
⇒これについては、交通ルールの周知を行うことが有効でしょう。
横断歩道は歩行者優先、さらにどのような場合に停まらないといけないのか、どのような場合は停まらなくていいのか、分かりやすく納得できる説明があると理解が広まると思います。
◆ 横断者がいたら停まりたいと思っているが、運転が下手で停まれない
停まりたい気持ちがあるけれども、気づいたときは横断歩道間近で停まり切れず通過してしまう、などというのは、運転技術に問題があるのかもしれません。
横断歩道に近づいた時の運転方法のコツを知り、運転の中で実践して経験をつめば、信号のない横断歩道で渡ろうとする歩行者がいるのに通過してしまうことはほとんど無くなります。
運転するときは、横断歩道の標識や路面の◇マーク(この先、横断歩道や自転車横断帯あり)に注意し、信号のない横断歩道の存在を見落とさないようにする。
信号のない横断歩道に近づいたら、渡る/渡ろうとする歩行者がいないことが明らかでなければ、横断歩道手前で停止できる速度で進行する。
これをしっかり行っていれば、もし横断歩行者がいた場合でも停まれるはずです。
横断歩道での運転のコツは実は道路交通法第38条そのものです。
⇒横断歩道での運転技術の向上もまずは運転のコツを知ることから。
横断歩道での運転のコツが周知され、それによりスムーズに安全に停まれる運転者が増えるといいですね。
◆ ルールは知っていて停まる運転技術もあるが、停まらない方が合理的(メリットがある)と判断して停まらない
このパターンで停まらない人は結構多いかもしれません。
これまで様々な人に話を聞く中で、
「横断歩道は歩行者優先は知っている。停まろうと思えば停まれる。でも○○○(←諸理由)だから停まらないで通過する」
という人が少なくありません。
いくつか例を挙げると、
・自分が停まると、後続車に追突されるかもしれない。だから停まらない。
・自分が停まると、後続車が停まらなくてはいけないので、後続車に迷惑がかかる。だから停まらない。
・自分が停まると、歩行者が渡り、そのとき追い越してきた後続車や対向車が歩行者を轢いてしまうかもしれない。 だから、歩行者の安全のためにあえて停まらない。
・自分が停まっても、対向車線の車が停まらないと歩行者は渡れないし、対向車線の車が停まることはないだろうから、停まっても意味がない。 だから停まらない。
・自分が停まると、歩行者がお礼をしたり走って渡らなくてはいけない等、気をつかわせてしまう。 だから、歩行者に気を使わせないために停まらない。 歩行者は車が通過してから渡ればよい。
いずれも、運転者はそれぞれ考えた上で、停まらない方が合理的(メリットがある)と判断し、停まらないことを選択しています。
運転者本人にとって各々もっともな理由があり、その行動を選択しているのです。
車の運転者たちが信号のない横断歩道において、
なぜ、停まらない方が合理的(メリットがある)と判断するのかを考え、
どのようにしたら、多くの運転者が、停まる方が合理的(メリットがある)と判断するようになるのか?
それについて、
今後、少し時間をかけてじっくりと考えていきたいと思います。