
来月の東京モーターショーに出展するホンダの公式発表が、本日ホームページ上で公開されました。
○N BOX ※ 今年12月に発表予定のマイナーチェンジモデルを先行展示
もちろん気になります、N-WGNに搭載されるシティブレーキアクティブシステムが追加設定されて、ボディーカラーも新色が追加らしいです。
○Honda S660 CONCEPT
ダイナミックな先進のスタイリング、ドライバーの空間を徹底的に追求したスーパーコックピットインテリアなどの斬新な試みを随所に施した次世代軽オープンスポーツモデルです。
これも気になります。とてもほしいのですが残念ながら現状ではとても買えないので市販されてあの方が購入されたあかつきには、ぜひロードインプレッションを書けたらなあ、なんて思います。
しかし・・・
●スポーツ360
1962年にHondaが初めて一般公開した四輪車。その後、Honda初のスポーツカーS500、S600、S800のベースとなった。Hondaの四輪車の原点といえるこのモデルを今回復元し、展示
>今回復元し、展示
>今回復元し、展示
>今回復元し、展示
えー?うそー!本当!?
紹介されているように、1962年にバイクメーカーだったホンダが、満を持して自動車に進出する際に選んだのはスポーツカーと軽トラックでした。
その年の6月、まだ建設中の鈴鹿サーキットにて開催されたホンダ会(販売店の懇親会)にて初めて公開されたのが、

スポーツ360です。当日は写真のレッドとシルバー(ホワイト説もあり)の2台が展示されたとのことです。
当時の軽自動車規格(全長2990mm x 全幅1295mm)に合わせた、2シーターオープンスポーツカーで、356ccDOHC4気筒エンジンを搭載、最高出力は33PS以上/9000rpmと発表されました。その頃の軽自動車といえばせいぜい鈍重なセダンで16PS~20PS程度しかなく、倍近くのパワーとしかもスポーツカーとなれば注目されないはずがありません。
10月の全日本自動車ショー(東京モーターショーの前身)には、

シルバーのスポーツ360(とエンジンを492ccに拡大しリヤオーバーハングを延長したレッドのスポーツ500)が展示されて、一般に公開。熱狂的な人気を博したとのことです。
さてここでホンダ会展示車と全日本自動車ショー展示車の写真をよく見比べると、
○ホンダ会の方がフロントオーバーハング(フロントタイヤより前のフロントフェンダーの面積)が長い。
○ヘッドランプがひと回り小径。
○フロントグリルの外周が細い。
○フロントバンパーが細い。
○ドアアウトサイドハンドルが奥まって付いている。
○フューエルリッド形状が違う。
○トランクキーシリンダーが無い。
○リヤバンパーも細い。
とかなりの相違が見られます。
一説では、ホンダ会展示車のボディはオールFRP、全日本自動車ショー展示車はボディは鋼板だがトランクパネルはFRPだったそうです。
ショーでは「来春(1963年)に発売予定」アナウンスされたものの当時のホンダは実際の発売が遅れるのが常で、1963年10月に市販型S500が発表、翌1964年1月から発売となりました。軽自動車規格に縛られることが無くなったのでボディは全長3300mm x 全幅1430mmに拡大されました。
結局スポーツ360は市販されることなくプロトタイプで終わりました。なぜ市販されなかったのかは諸説ありますが、当時スポーツ360を試乗した数少ない自動車ジャーナリストの小林彰太郎氏(CG誌名誉編集長)によると、
「トルク特性がえらくピーキーで,かなり回転を上げてクラッチを滑らせないと,発進時にストールしがちであった..ボディの全幅も肘の自由にはギリギリだった.ホンダ・ビートやスズキ・カプチーノが出現するより30年近くまえの当時,”軽”の存在は安価なミニマム・トランスポートだった.したがって,この時期,ホンダが仮にS360を発売しても,ほとんど買う人はいなかったと思う.」
というのが理由を表しているでしょう。要するにパワー(トルクかも)不足でドライビングが相当難しかったということですね。
そのため1963年8月発売の最初の4輪車は、

T360、つまり軽トラックでした。しかしエンジンはスポーツ360のを基本とした4気筒DOHC356ccエンジン。今でこそDOHC(ツインカム)エンジンは当たり前ですが、50年前にはOHCですらほとんどない中で超ハイスペックなエンジンの、型破りな軽トラックでした。
スポーツ360は展示車を含めて10台前後のプロトタイプが作られたようですが、市販されないことが決定したため回収されてメーカーで解体処分されたことになっています。
しかし、
「スポーツ360プロトタイプががテスト車として少数の有力ディーラーに貸し出され、数台が回収を免れて今もどこかに眠っている。」
という噂が1960年代からまことしやかに流れてきました。しかし現在までにスポーツ360が発見されたという話は全くありません。カーマニアの間では、半ば「都市伝説」となった感があります。
ホンダの公式見解はもちろんNOで、ホンダコレクションホール(最初は鈴鹿サーキット、現在はツインリンクもてぎにある)にも実車は現存せずパネルのみの展示になっています。
そんな中でも勇気がある人はいるもので、OT誌NO.109号にスポーツ360のレプリカを製作という記事が掲載されました。

ボディはS500をベースに幅を狭めて、リヤオーバーハングを大幅に短縮し新たに造形してFRPで制作。フレームもS600を短縮して使用と、気が遠くなるような手間を掛けての製作記が書かれています。
実はボディだけでなくインストルメントパネルの形状も、

上がスポーツ360、下がS500ですが大幅に異なることが分かるでしょう。これもFRPで再現するとのことでした。
数年後、このレプリカは一応の形になったとの追記記事がありました。
さて、話は元に戻って、ホンダが復元してモーターショーに展示されるスポーツ360は、
1果たしてボディはFRPなのか、スチールなのか。
2搭載エンジンは排気量にこだわってT360の物にするのか、S600かS800用でお茶をにごすのか。
3シャーシーはレプリカの様に市販S用を改造するのか、それとも新規に起こすのか。
4インストルメントパネルの相違までまともに再現するのか。
5一体どこが製作するのか、メーカー内部で制作するのか、プロトタイプを単品製作可能な業者に外注するのか。(まさかOT誌掲載のレプリカそのものではないでしょうな)
など疑問は尽きません。まあ自動車雑誌が黙って見過ごすはずはないだろうから、数誌が必ず特集記事を組むに違いないでしょう。そうすれば上記の疑問は解消するかも知れません。しかし誌面だけでは物足りないので、私は東京モーターショー会場でしっかり見てきたいと思います。
それにしてもホンダが「都市伝説」を復元というやり方とは言え、自ら現実の物にするとは思いもしませんでした。久し振りに私はカーマニアとして魂が震えるくらいの興奮を覚えましたよ。
追記
そのスポーツ360復元車は、先週開催された「HONDA Sports 50th Anniversary ホンダエス生誕50周年を祝う会開催」に一足早く展示されました。関連する写真を眺めたところ、全日本自動車ショー展示車とそっくり、同じシルバーに塗装されています。
1ボディの材質は、写真を見るだけでは不明。
2エンジンはちゃんと搭載されていて、エアクリーナーケースは市販型とは全く異なるデザイン。排気量までは不明。
3説明によると、生き残ったプロトタイプではなくて、一からシャーシーやボディは起こした模様。
4インストルメントパネルは忠実に再現されている。但しタコメーターとスピードメーターは同じ数字の羅列(0から14まで)。スピードメーターはマイル表示か?シフトレバーのパターンは全日本自動車ショーの5段に対して、復元車はリバースが左上の4段。
5説明によると、ホンダ栃木研究所のエンジニア30人ほどでプロジェクトチームを作って完成させたとのこと。
さすが「本家」が復元しただけあって、全日本自動車ショー展示車を忠実に再現しています。この復元車はランニングコンディションにあり、ホンダの元社長川本信彦氏がドライブしてデモ走行をしたそうです。
うーん、ますます復元車を見るのが楽しみになって来た。
このブログは、
SUPERCG誌 No.19 (株)二玄社
別冊CG ホンダスポーツ (株)二玄社
Old-timer誌 No.109 八重洲出版
より画像と記事を転載させて頂きました。