このブログは8月末、香港に4泊5日で滞在した際に、澳門(マカオ)まで日帰りで足を伸ばした時の話です。
なお香港ドル(≒澳門パダカ)はHK$1≒MOP1≒\10を目安にすると良いかと思います。
今までのアップ分はこちら
香港で食べたB級グルメ(前編)
香港で食べたB級グルメ(後編)
香港で見てきた夜景
香港で散策した場所
香港4日目、帰国の前日、丸一日フリータイムとなったため、少し足を伸ばして澳門まで日帰りで散策することに。
旧英国領だった香港に対し、澳門は旧ポルトガル領。
他の英国領(シンガポールなど)と同様、経済の中心として発展した香港とは、やや雰囲気が異なり、南欧的な雰囲気のある街と言うことで、澳門へは是非行ってみたいと思っていた。また最近はカジノの街としても有名である。
現在は香港・澳門それぞれ、中華人民共和国の特別行政区として、いわゆる「一国二制度」(この言葉について語り出すと長くなるので…省略)と呼ばれる枠組みの中で、外交や防衛といった権限こそないものの、司法・行政などは実質的な独立国のように運営されている。
なおWikipediaの解説では「特別行政区はグリーンランドに代表される、宗主国より大幅な自治権を与えられた海外領土(自治領)とほぼ同義のものであり、(中略)香港やマカオは中華人民共和国を宗主国とする海外領土に相当すると言える。」とのこと。
そのため香港→澳門の移動は、海外旅行の扱いとなり、入境・出境(“国”ではないので、「入国・出国」とは言わない)時のパスポートコントロールも必要になってくる。
香港-澳門は珠江デルタを挟んだ対岸に位置しており、ヘリコプター、あるいは船での移動となる。
青:香港島 赤:九龍 黄:澳門
高速船でもおよそ1時間程度の所要時間であり、運賃面や空港までの移動時間を考えると、ヘリコプターという選択肢はまずあり得ないだろう。
(但し飛行機からの乗り継ぎや、船酔いする人には十分に利用価値があるのだが。)
香港-澳門の船便で、一番本数が多いのは、香港島から澳門港を結ぶ便で、24時間体制、5~15分間隔と、非常に利用しやすい。
ただ今回、九龍半島側のホテルに滞在していることもあり、九龍のチャイナフェリーターミナル発の便を利用することにした。こちらは1時間に1~2本程度の運行である。
香港-澳門の船便に関しては「混雑時には予約した方が良い」という話もあるようだが、今回は直前までスケジュールが決定しなかったことや、澳門での滞在時間が確定しないこともあり、予約は一切せず往復とも当日購入とする。
澳門散策の当日、香港でのんびり起床し、市内でのんびり朝食を食べてから出発。
どちらにせよ丸一日フリーで、澳門-香港は24時間体制で船の便もあるので帰って来られなくなる心配もないので、まあバタバタせず、のんびり構えていくことにしたい。
(これには前日までの中華人民共和国本土への往復などで、少々疲れていたという事情もある。)
そして九龍公園をぶらぶら歩いて、チャイナフェリーターミナルへと向かう。
しかも大凡の位置だけは把握していたものの、細かな道順など調べてもおらず、適当に道を尋ねながら…といったお気楽さ。
何とかチャイナフェリーターミナルに到着したのだが、フェリーターミナルと言っても、商業ビル街の一角で、まるでデパートの専門店街内にフェリーターミナルが存在しているような感じである。
エスカレーターで出境フロアーへ上がってみても、相変わらず専門店街のような雰囲気。
但しエスカレーターの前に係員が立っており、「澳門行きはあちらです」と案内していたので、それに従って船会社の代理店である旅行会社店頭でチケットを購入。
同じフロアーに同じような旅行会社が何件か入居しており、中国本土などそれぞれの行き先に応じて、船会社の代理店を探してチケットを購入する形となるようだ。
(船会社の改札兼案内カウンターはあるものの、チケット販売は原則代理店が行うようだ。)
チケットの購入時には「パスポートは持っているか?」と念押しされ(提示は求められなかった)、乗船名簿(?)として氏名と国籍だけ尋ねられる。クレジットカードも使用できた。
チケットを購入したのが9:20頃、出境審査があるので流石に9:30の便は無理とのことで、10:00の便のチケットを購入。出入境税を含めて、普通席でHK$140(≒\1400)。
船会社の改札で、半券を回収され、昔の飛行機のようなシールを貼って座席を指定される。
ここでは順番に詰め詰めに指定されるのだが、実際は船内はかなり座席に余裕があり、好き勝手に座席を移動できたのだが。
待合室に落ち着いて、ふと周りを見渡すと、すぐ横のゲートからも他社の澳門行きが同時刻に出発するようで「ダブルトラックとは、繁盛しているなぁ~。競争もあって良いのでは??」などと考えていたのだが、よくよく見てみると、何かが違う。
どうやら私が利用する金光大道(コタイ)社の便は、澳門側で「氹仔」なる港へ到着するようだ。
「氹仔」と言われてもピンとこなかったのだが、地図を開いて確認してみると…
黄色が澳門港、緑色が氹仔港なのだが、氹仔港は澳門半島ではなく、氹仔島に位置しており、両者は歩くにはちょっと遠い感じである。
しかも澳門の主要観光地はセナド広場(紫色)であり、氹仔に着いてしまうとかなり不便になってしまう。
なお「氹仔」は「タイパ」と読むとのことで、ガイドブックなどでも「タイパ島」と紹介されることが多いので、以降は「タイパ」と表記することにしたい。
よくよく考えてみると、エスカレーターの前の係員は“誘導係”ではなく“客引き”だったのだろう。
私もチケットを購入するときに「澳門行き大人1枚」と指定していたのだが…まあ「タイパ島も行政区域としての“澳門”には違いない」ということなのだろう。
(「九龍半島は大陸と陸続きであり“香港島”では無いが行政区域としての“香港”の一部である」というのと同じ理屈)
まあ改札も出境審査も終わっているので、今更払い戻し云々と言ってもややこしくなりそうなので、今回は流されるままタイパへと向かうことにする。
タイパにも、ポルトガル人の民家(別荘)を移築保存している「タイパハウスミュージアム」などの見所があるようで、まあ行ったら行ったで何かしら収穫があるだろう。
それにしても中華人民共和国本土とは違い、民度が高く、治安も良く、人も親切…そんな香港なので、私も気を抜きすぎていたのだろう。
しかもチケットをよくよく見てみると「団体」と書かれており、差額をボラれたか…と思ったりもしてしまう。
まあ香港に安心しきって、購入したチケットの額面と支払金額のチェックすらしていない私も私なのだが。
しかし後で調べてみると正規運賃はHK$151。券面の運賃はHK$134、そして支払った運賃はHK$140なので、要は「格安チケット」のようなものだったのだろうと、納得。(あるいはクレジットカード手数料の上乗せだった可能性もある)
一瞬疑ったりもしたのだが、やはり香港は香港。民度が高く、まあ良識ある地域なのである。
まあこの話は、後から振り返ればトータルで「終わりよければ全て良し」という結論に達することになるのだが。
そして双胴の高速船に乗船。
船内の様子
船内はシートベルト完備、頭上の箱式手荷物入れなど、飛行機のような雰囲気。
そして出港
珠江デルタ内にも、香港領の島々などが多くあり、何だかんだでずっと陸や島を見続けている感じである。また香港-澳門の船便が頻発していることもあり、多くの船を見ることが出来る。
心配していた揺れも少なく、11:15に澳門タイパ港へ入港。
しかしインドネシアの盆(?)にあたっているとかで、インドネシア人旅行者が非常に多く、入境審査の「訪問客」(つまり澳門・香港住民以外)レーンが異様な混雑を呈しており、澳門へ入境できたのは12:05であった。
まずは「タイパハウスミュージアム」へと向かうことにするが、歩くと3kmといったところか。ただちょうどお昼時で、とにかく暑い。
フェリーターミナル内の案内所で入手したパンフレットと睨めっこし、フェリーターミナルから、タイパハウスミュージアム近くまで直通するバスを探して、バス停に立つ。
しかしカジノの送迎バスが頻繁に到着し、肝心の路線バスが目立たない。送迎バスの影に隠れてしまい、一本バスを逃してしまうなどのハプニングもあったものの、なんとかマイクロバスに乗車。(路線バスを見かけたら、大々的に「乗ります!!」とアピールすることが大事)
なお運賃は乗車時に前払い。金額は「どの路線に、どこから乗るか」で決まり、「たとえ近距離の利用であっても“終点が遠い”バスに乗ると高い」といったことにもなってくる。逆に「長距離を走るバスでも“終点近くから”乗れば安い」というシステムも存在する。
ただこの時は細かい小銭を持っておらず、HK$5コインしかなかったので、実際の倍近いHK$5で支払った。(両替やお釣りの準備は無し。まあHK$5と言っても\50なので、日本の感覚では\20ほど余分に払った感じだろうか。)
ちなみに澳門には「パダカ」(MOP)と呼ばれる通貨が存在するのだが、香港ドルも同価値として普通に通用している。(MOP1≒HK$1≒\10)
と、いうか澳門域内での通貨流通量では、パダカよりも香港ドルの方が多いというのが実情で「完全に併用されている」というのが正しいだろう。
但し澳門では等価として扱われていても、他の外貨に交換する場合のレートなどでは、ごく僅かな差があり、香港ドルの方が気持ちではあるが有利なレートとなる。
例えば対日本円の場合、この日のレートはHK$1=\10.017、1MOP=\9.7357となっていた。(クレジットカード利用分の換算レート/利用明細表による)
なお香港へ戻ると、パダカは通用しないので、お釣りなどで貰ったパダカは澳門で使い切って帰る必要がある。
ただ澳門では、「香港ドルで払うと、お釣りの“紙幣”や“HK$5コイン”に関しては香港ドルで返してくれる」というのが一般的なようだ。但しこの場合でもHK$5以下の金額に関しては、特に区別無く「パダカと香港ドル」が混ざって返ってくる。
実際、タイパハウスミュージアムのチケット売り場で、MOP5の入場券をHK$10紙幣で購入すると、HK$5のお釣りが出てきた。
切符売りのおじさんに「バスに乗りたいから、細かくしてよ」と頼むと「香港ドルはダメ」と断られ、「澳門パダカでも良いから!」と頼むと「OK」となり、更に親切に「バスで使いやすいように」とMOP1コイン×4枚とAvos2コイン×5枚を渡してくれた。(※Avosはパダカの補助単位。MOP1=Avos10)
さて話を旅に戻すと、バス車内で地図と睨めっこして現在位置を把握しつつ、タイパハウスミュージアム近くと思われるバス停で下車。
まあ最も近いバス停ではなかったかも知れないが、ここから数分歩いてお目当てのタイパハウスミュージアムへと向かう。
そして到着したタイパハウスミュージアム。
早速入館しようとすると、入口でチケット提示を求められる。
どうやらチケットは園内の売店のようなところで売っているようで、私の歩いて来た方向からは一番遠い場所に売店が位置していた。
そして改めて入館。
園内の建物3館の共通券で、それぞれの建物の入口にいる案内人(警備員?)にチケットを提示して入館するシステム。(その他にもう1館、無料の建物がある)
しかもどの係員も非常に感じが良く親切で好印象。海外でよく遭遇する「面倒くさそうで無愛想」な感じは全く受けない。
澳門でも香港でも、いろいろな施設や店を利用したが、どこも親切な人が多く、本当に気持ちよく過ごすことができる。ただすぐ隣の中華人民共和国本土では、一変して…
それぞれの建物は外観こそ当時のままだが、内部は「当時の住宅そのまま」「ポルトガル本国の生活の紹介」「絵画の特別展(画廊的な用途?)」と明確にコンセプトが打ち出されている。
まずは当時の住宅をそのまま保存している建物へ。
そしてポルトガル本国の暮らしを紹介した建物。
ポルトガル本国の各地域(島嶼部を含む)毎に、マネキンを使った民族衣装や民具の展示、そして詳細な解説もあり、ポルトガルへの旅心を刺激する展示である。
なお絵画展に関しては撮影禁止なので、画像はなし。
そして一通り見学を終えたところで、ミュージアムの庭のベンチで一休み。
木陰のベンチが少ないのは残念だが、香港とは一変して南欧風の風情のなか、気持ちよい風を浴びながら、のんびり昼下がりのひとときを…もう雰囲気が良すぎて、動きたくなくなるくらいである。
確かにメジャーな観光地ではなく、“わざわざ来る動機”には乏しいかも知れないが、この素朴な居心地の良さは病み付きになりそうな素晴らしさである。
もし次回、澳門へ来ることがあれば、北部のいわゆる“澳門”エリアはオミットして、このタイパでひたすらのんびり過ごしてみたいものである。
ここタイパへ至った理由は先述したとおりだが、過程はどうあれ、こういう居心地の良い場所に出会えたことはラッキーとしか言いようがないだろう。「終わりよければ全て良し」で良いと心から思えるのである。
このままのんびりぼーっと過ごすという選択肢もかなり悩んだのだが、何せ「初めての澳門」もう少し歩いてみることにする。
(どこでも「二度目の訪問」となると、初回で一通り回っているので、もう自由に気の向くまま過ごせて、これはこれで楽しいのだが。)
先ずはミュージアムを背に丘の上へ。
するとカルモ教会とよばれる教会が見えてくる。
1885年の建造で、これまた南欧の雰囲気が漂う素敵な佇まいである。ただ残念ながら内部の見学は不可とのこと。
そして教会の向かいの建物へ。
「内部見学歓迎」ということなので、入ってみることに。
教会施設かと思っていたのだが、実際は「中華人民共和国澳門特別行政区政府 民事登記局」とのこと。
調べてみると、婚姻や出産などの届け出を扱う役所とのことなのだが、いわゆる「役所」の雰囲気は皆無で、どちらかというと「外交などで使うちょっと高級な会議室」といった雰囲気。
等侯室(待合室?)なる応接間のような部屋もあり、どこもお洒落で役所とは思えない。そもそも係員も受付のおばさん一人で、とても役所といった雰囲気ではないのだが。
そして教会のある丘から、タイパの市街地へと歩いていく。
まず目に付いたのが医霊廟なる廟。中国の伝統的な神を祀った廟である。
香港のそれと同じで、香油箱に賽銭を入れ、2週間燃え続けるという渦巻き線香の下を歩き、三礼して拝む…といった具合である。
日本同様、礼拝方法など細かく言われることもなく、観光客もウエルカムで、気楽にお参りしていってください的な雰囲気である。
すぐ斜め向かいの道端にも…
そしてタイパの中心部へと歩いていく。
街の中心部にちょっとした広場と四阿がある。
何でも「カルモ廃墟」なる遺跡(?)なのだとか。詳細な説明は以下の写真を参考にしていただくとして、現在建っている四阿が当時のものなのか、あるいは再建なのかはハッキリしないが、新しい感じなので、おそらく再建なのだろう。
この近辺には多くの飲食店があるものの、どこも満席。昼食時は少し過ぎていると思うのだが、やはり小規模な店が多く、絶対的なキャパシティが小さいことが影響しているのだろう。
と、いうことで昼食はもう少しお預け。再び歩き始める。
漢方薬を売る店
そこはかとなく南欧的な雰囲気の町並み
更に歩いていくと、タイパの新市街なのだろうか、ちょっとした広場に到達する。
一角に航海の神を祀る「天后宮」があり、先ほど医霊廟を訪れたばかりではあるが、香港や台北のそれと比較する意味もあり、内部に入ってみることに。(しかし同じ建物内に高級レストランが同居しているのも凄い/上の写真で、左手の提灯の下がった入口がレストランで、その右の渦巻き線香が下がっている入口が天后宮)
お香の香りの充満する宮内で、旅の安全を祈願したのだった。
そして広場を挟んだ向かいに、広い屋外席を備えた食堂を発見。
ただ「空席がある」という理由だけで入ってみることに。
以前のブログと重複するのだが、ここは「大利來記珈琲室」という店で、後で調べてみると結構有名な店だった模様。
オーダーしたのは魚団子入りの麺と青島ビール。
漢字が読めるお陰でメニューが何となく理解できるのも有り難い。流石にポルトガル語だとお手上げだろう。
味の方は、麺はいたって堅め。日本で言うと「ハリガネ」の域ではないだろうか。
そしてスープは親しみのある味。昔ながらの中華そばに近い味である。
そしてこの地域の麺類は「具で勝負」
とにかく魚団子は、日本の「つみれ」とはひと味もふた味も違い、プリッとした食感がたまらない。
この店の隣は、牡蠣油などを扱う商店。
南欧と中国の雰囲気が入り乱れているのがまた楽しい。
そして市街地なのに洗濯物が干してあったりと、長閑な雰囲気もまた良い感じ。
広場で食後の一休み
<つづく>