
「ヘボーソー」といっても、暴走するわけでもヘボな走りをするわけでもない。まあ、自分はヘボい人間なのだけど。知らない人以外は知ってるかと思うけど、「ヘボーソー」とは勝手に尊敬するサイクリストの
兼堀君が作った造語で「平日に房総へ遊びにいくこと」なのだ。もっとも、自分が一方的に兼堀君のことを知っているだけで、向こうは僕のことなど一切知らないと思うけど。なぜ尊敬するのかといえば、兼堀君は自分と同じ生粋の天の邪鬼の香りがそこはかとなくするからなのだ。ゴメンね兼堀君。
1月から4月上旬まではメいっぱい忙しかったので、こんな天気が良くて仕事も一段落した日には代休をとってもよかんべと、某日の平日火曜にヘボーソーを敢行。この季節は悪魔のスギ花粉も去り、路面のグリップも安定しているのでツーリングにはもってこい。しかし、平日に遊んでいるとどこか落ち着かないという、なんとも小心者の自分。決してサボってるわけじゃないのに。いや、半分サボってるのか。
いつもの房総内陸のワインディングを繋ぐ決めルートではなく、今日は知らない道を中心に走ってみようと心に決め、まずは千葉市の自宅から下道を行き、市原市から“
うぐいすライン”を経て養老渓谷へと向かう。養老渓谷界隈には無数の林道とタイトワインディングが眠っており、自分はそれらを走る為に月イチ以上のペースで通っているので、計算上ではフツーの千葉県民の一生分は養老渓谷に来ている。ついでに、箱根にもフツーの関東在住者の一生分ぐらいは行っているかもしれない。と、余計なことは置いといて、界隈の林道も今では舗装化が進み、オフロードやダートは貴重な存在になってしまった。自分は
モタードでもオフをガルルと走りたいヘンタイなので、何となくもの足りない。写真は近年舗装されてしまった大福山林道支線。ココに2ヵ月前に来ていたら鼻と目がタイヘンなことになりそうな鬱蒼とした杉林だが、今の季節は新緑が綾瀬はるかの笑顔のように眩しい。
林道を抜けて尾根を抜ける走ったことのないワインディングを突き進むと、“
平沢ダム”に到着。ここは初めて来た。比較的新しいダム湖らしく、湖面から立ち木が顔を出している。平日のダムは静まり返り、何やら少々ブキミな雰囲気。ハンチングをオシャレに被ったオッサンが一人寂しく釣り糸を垂れていた。
ダム湖の奥に進むと、細いダート脇にヤギ助がお出迎え。人が住んでいる気配が無いのに繋がれたヤギがいることが不思議で、さらに奥に進むと山奥の秘境にひっそりと佇む「
竹仙郷」なる炉端焼屋が。気になってあとで調べてみたところ、どうやら結構な評判のようで。
通ったことのない県道や広域農道を繋ぎ外房の上総興津に出て、そこから竜宮城のように美しい“
守谷海岸”(←記事の一番下)に出た。白い砂浜でコンビニで買ったパンをむさぼり食っていたら、錆びてギィギィうるさい自転車に乗って現れた、真っ黒に日焼けしたヨボヨボのジジィ、いや地元の年老いた現役漁師さんに話しかけられ、1時間ほど貴重な昔話に花が咲いた。今では穏やかなこの守谷海岸は、戦時中は火薬工場があり弾薬庫を狙った米軍機が飛来し爆撃や機銃掃射を繰り返していたそうだ。
外房の海岸線から再び内陸部に戻り、県道を繋いで里山を抜けて
上総中野を目指す。いすみ鉄道と小湊鉄道のそれぞれ終点でもあり中継点でもあるこの駅は、里山にポツンとあるメルヘンチックな駅舎がまるでプラレールのようだ。運が良ければいすみ鉄道の旧国鉄キハ52・キハ28や、小湊鉄道のキハ200が
里山の駅に並ぶラブリーな姿が見られる。血中鉄分の多い人には超オススメ!
そこからタイトな舗装林道を繋ぎ、初見のワインディングをステップから火花を飛ばしつつフルバンクで駆け抜ける。リヤタイヤの右サイドがかなり擦り減っており、右コーナーでパワーをかけるとズルッとくるが、フロントの安定感に支えられかなりのペースで走ることができる。大きな丘陵をふたつみっつ超えると、小湊鉄道を跨ぐ小道に出た。周囲に集落も何もなく、こんなド田舎を走っているのかと驚いてしまうが、ムチャクチャいい風情だ。
ところで、平日にも関わらずワインディングや林道では結構な数のライダーや趣味車とすれ違った。土日には行列する店も平日なら空いてるし、ヘボーソーするのもなかなかイイものだ。養老渓谷から君津市や市原市の山間の林道をグネグネと抜け、曲がったことのない交差点を曲がり行ったことのない道を走り続けていると、いつの間にか牛久近くに出た。田植えの準備が整ったばかりの稲田が広がる中、小学生達が下校する風景に癒される。
牛久からはおとなしく国道297を行き、市原IC近くに差しかかったところ、遠くから小湊鉄道のキハ200がタンコロで走ってくる姿が見えたので、急いでバイクを路肩に停めシャッターを切った。ちょっと遠かったが、里山を駆けるキハ200に出会えて満足。
市原ICから高速に乗り、一気に幕張の自宅へ。無事に帰還してトリップメーターを確認すると、今日だけで330kmも走っていた。土日は交通量が多いので途中で引き返してしまうことが多いけど、平日は思う存分走ることができて超腹いっぱい。こうしてヘボーソーツーリングは終了した。
自分のバイク遍歴を振り返ると単気筒やツインが大半を占めており(実はマルチは買ったことがない)、排気量もどんどん小さくなってきている。リッターマシンの爆発的なパワーは魅力だが、乗り出す時の気合いや維持費には覚悟が必要だ。ビッグバイクに乗っていた頃は、高速や箱根をぬぅわkm/hでカッ飛んでいたけど、小排気量マシンはそんな気にもならないから安全とも言える。今乗っている
YAMAHA WR250Xは軽量なので気軽に乗り出せるが、レスポンスと高回転域を重視したエンジン特性、航続距離が200kmにも満たない少ないタンク容量、体重移動を前提とした細く固いシート、サーキットやワインディングを攻める為の固いサスという装備の為に、ツーリングユースは全く快適ではない。街乗りはまあいいとしても高速道路は苦痛ですらある。土産なんか買うなと言わんばかりに荷物の積載性はゼロ。それ故いつもブン回してストイックにハイペースで走ってしまう。ノンビリ走ろうと思えば走れなくもないのだけど、それではちっとも面白くないバイクだ。しかし、タイトなワインディングでは無敵とも思えるハンドリングや、4スト250cc単気筒にしてはまあパワーもあり、フルアジャスタブルの前後サスと高剛性フレームは素晴らしく、リッターバイクと一緒に走ってもそこそこついていける。従来の市販トレール車に比べて質感も高く、クラスレス感覚だ。その分「250だから遅くても許して」という言い訳がきかない気もするが、ツルシでもサーキットを走れるポテンシャルの全てをまだまだ出し切れていない。精進してライテクを磨かないと。その前に擦り減ったリアタイヤを何とかしないとアカン(汗
※番外
後日通った国道297号沿いにある中古車屋に置いてあった
ALPINE V6 Turbo。大好きなクルマなのだが、この個体はもうすぐ土に還りそうな状態でちょっと可哀想。

Posted at 2013/04/16 22:50:16 | |
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