
~マイフェイバリットなクルマたち Vol.8~
第8回は、VWのコンパクトセダン『
ボーラ』
V5(1999.10~2006.2)です。
駆動方式:FF
搭載エンジン:2.3L V型5気筒SOHC/DOHC
4AT/5AT
<型式>1JAGZ/1JAQN
♪ボ~ラ、君は何故に ボ~ラ、心を閉じて…
ボーラは、VWゴルフのセダン版です。
時に名がヴェントだったりジェッタだったりしますが、
ボーラは ゴルフ4がベースの時の名前です。
ゴルフ1→ジェッタ
ゴルフ2→ジェッタ
ゴルフ3→ヴェント
ゴルフ4→ボーラ
ゴルフ5→ゴルフ専門店もしくはジェッタ
ゴルフ18H→お疲れさまでーす

存在も見た目も地味なので、ゴルフを知っていても ボーラは知ラネ、
という人のほうが多いかもしれません。
(上の写真はWeb上から借りました…スミマセン)
自分がボーラの写真をほとんど撮ってないようで探しても出てこないこともあるんですが、
足が写ってるタイトル画像は間違いではありません。
ヤマダ電機にて、何十万円もするマッサージチェアで昼寝…
ではなくて、座り心地を真剣に試している様子です。至福の時。
かたや、オートバックスの広い店内の片隅に置かれたレカロシートに座る。これまた至福の時。
顔が天井向くまでリクライニングさせて全身を包み込まれるマッサージチェアの心地良さ。
適度に脇腹をサポートされつつ背筋をピンと伸ばした姿勢で座るレカロの心地良さ。
どちらも、イイのです。なぜだろう、なぜかしら。(←このフレーズ知ってる?)
絶対評価? 相対評価? 評価軸?

あー、そこそこ

ええ感じ

うぅっ

それはちょっと。
Vol.1ウィンダムの文末で少し触れましたが…
2001年5月、2代目ウィンダムで東京から新潟・直江津まで走りました。
クルコン付きの80系マーク2でも走りました。どちらも高級車なのでラクチンでした。
その3週間後、BMW528i(E39)で東京から富山まで走りました。
(使い古された表現ですが)矢のような直進性と張り付くような安定性、
その別次元ぶりに “良いクルマ”についての固定観念がガラガラと音を立てて崩れ…
は大げさか、でも かなりの衝撃を受けました。絶対評価と相対評価。
これを自動車というならば、車室内全体にワンワンとノイズが反響して頭痛がしてくる40系あれ(日本車)や
シートがどこまでも沈んで腰痛を呼び覚ます100系あれ(日本車)も同じ自動車なのか?
メディア/ジャーナリストの欧州車偏向…ドイツ車信仰・ドイツ車崇拝も言われはしますが、
抜きん出ている 秀でている部分があったのは まごうことなき事実です。
しかし、数日も経てば、何事もなかったかのように そのあれで
市街地をちょこまかと走り回っているのです。しかも何の不満もなく。
これは評価軸というものなのでしょうか?

BMW 528i
2001.6.14
クルマの運転は、イコールコンディションではなく、いろんな状況があります。
荒れた道を走る時。
暗かったり雨だったりで視界が悪い時。
周りの流れが速くて自分のペースで走りにくい時。
初めて走る山道で全開で走ってたのにふとバックミラーを見たら軽トラに煽られてた時。
急な上り坂の信号待ちでこっちはマニュアル車なのに後続車がギリギリまでつめやがってきた時。
道に迷った時。
待ち合わせに遅れそうで焦っている時。
会いたくない人に仕方なく会いに行く時。
往来の激しい道で狭い車庫にバックで入れなきゃいけない時。
彼女がガンだと知って涙した時。
彼女のガンが完治したと聞いてホッとした時。
風邪で全身が重くて、身体をかたむけて左右確認するのも辛い時。
トイレが漏れそうで既に少し漏れちゃってるかもしれないけど脱いで確認はできない時。
女子高生に足を踏まれ「すみません」「あ、大丈夫だよ」「あははは」とお互い笑い幸せな気分な時。
これらはすべて外的要因。それによって評価軸が変化することも少なからずあります。
(評価軸…外因の他にも、個体差・対費用含めて見るかモノとしてだけ見るか・
残存する記憶でバイアスがかかった美化or不満点列挙 など…)
カップラーメンを食べるにしたって、日常で栄養バランスがどうのこうの言っていても
遭難して生きるか死ぬかっていう時だったらそれほど有難いものはないだろうし。
今回ボーラをとりあげたのは、身体が疲れて棒のようになっている時に
運転して、疲れが増すどころか 癒されて逆に元気をもらった思い出がある一台だからです。
そんな経験は 書き出せるほどに数少ない…
小型セダンに一日中乗った夜、30系エスティマの高い視点のラクさ。
疲れた夕方、50系センチュリーの大トルクに支えられた空飛ぶ絨毯のような移動空間。
病み上がりで、クラウン・セルシオ・ボルボ・センチュリー・マジェスタ・ハリアー・プレミオと
はしごして、最後に乗ったハイゼットカーゴ。…ハイゼットカーゴ!?
嫌になるかと思いきや、操る楽しさに出会ってアドレナリンが出て、
振り返ればその日の一番楽しかった時間だったりするのです。
そして、ボーラもそんな状況でした。2001年4月のある日。
夜、疲れきった体で V5に再会。そして癒されました。
お気に入りのV型5気筒エンジンは滑らかにまわり、
静々と仕事をしてくれる。フラットな乗り心地はやはり絶品。
日頃は 木の板のようにかたいと感じていたVWのシートが、優しく包んでくれるように思えてしまう。
(拘束されるように こう座りなさいと姿勢を決められてしまうことが、ソファのようなシートで
自由に姿勢がとれるよりも この時は心地良かったということです。
中途半端に混雑した よろけないように常に踏ん張って立っていなければいけない電車より、
すし詰め満員電車で身動き取れずに 密着してしまったオヤジに
身体を委ねている方が逆にラク…みたいなもんでしょうか。
朝の地下鉄東西線千葉から都心方面のレベルまでいくと気絶しそうで嫌ですが。)
前方に目をやれば、シンプルな二眼メーターから情報がしっかり入ってくる。
そこに余計な装飾やギミックは必要ない。
舵を切れば、過敏さも応答遅れもなく しっかりラインをトレースしてくれる。
まるでパワードスーツを身にまとっているかのよう。
既に運転したことがある車種でも、乗り重ねているうち
状況によって初めて気付くこともあるんだ、と感じた体験でした。

ボーラV5
2004.4.15
<5気筒エンジンの楽しさ>
自分のマルチシリンダーエンジン好きについてですが、
本来マルチが指すのは多気筒…8気筒以上かもしれません。
自分の場合は 4が境で、5以上がマルチと勝手に決めています。
TNGAは◯ンガ、GRMNはガーミン。閉まるGOAにご注意ください。
5気筒エンジン、これのフィーリングが面白い。
発進する時は4気筒の方に近いフィーリング(低速トルクもあるかも)なのですが、
回転をある程度上げていくと 音が整っていき6気筒に近いフィーリングになる。
数字が表すとおり4と6の中間というのがほんとに体感でわかるのが面白いのです。
5気筒エンジン搭載車は、日本車だとホンダ、外国車だとボルボなどにもありました。
ボルボは、FFの850・S70/V70から。ポルシェチューン(らしい)のそれは、
排気量の割には重い出足ながら リニアなフィールと少しガサついた鼓動の低音、
限定車850Rはターボラグの後に来る強烈な加速…と、味のあるものでした。
ホンダの5気筒(インスパイア/ビガー/セイバー・アスコット/ラファーガ)なんかは、
高回転域は下手したらトヨタの直6よりもスムーズなんじゃないか?と感心した記憶があります。
<ボーラのトップグレードは?>
ボーラには、V5の上に V6 4MOTIONという てんこ盛りのトップグレードがありました。
2.8リッターV6エンジン・4WD・6速MTに黒レカロ本革シートまで付いて当時365万円。
325万円のV5と比べると、割安感がありました。
リーズナブルに感じる外国車はなかなか珍しいです。
V6 4MOTION、走りも素晴らしかったのですが、
個人的には どちらかというとシンプルなV5のほうが気に入っていました。
<ボーラV5/V6の当時メモ>
・V5 日付不明
地味だが まとまりのあるカタチ。サイズも、ちょうどいいコンパクトさ。
スピードを増していった際の安定感はさすが。
もう少し全長を長くしてでも後席の居住性をあげてほしかった。(パサートじゃ一寸大きい)
MD採用がうれしいステレオ、音もなかなか良かった。
・V6 4モーション(H13) 2002.3.18
東京~袖ヶ浦間往復。左ハンドルのマニュアル車ってことで、緊張して運転。
見た目は地味なんだけど、高速道路では 日本車とは次元が違う安定感だった。
このフラットな乗り心地を作れるドイツ人ってすごい、などと考えながら走った。
エンジンも、まわすと直6みたいな音でスポーティ。
右ハンドルも追加された。
・V6 4モーション(6MT・LH) 2003.8.26
2回目。東京~所沢間(関越)往復。
左ハンドルでMTは、これが4回目。
(VWゴルフGTI、VWボーラ、BMW Z3、VWボーラ)
・V5 2004.5.25
昨日乗ったアウディA6に比べると、実用車という印象の走り。
乗り心地もピッチングがあってあんまり良くない。
気に入ってた車なんだが… まぁ、A6とはクラスも違うから仕方ないか。
発進がホイールスピンするほど過敏だったのは、個体差か?※
※最後のでケチつけているのは、A6(坂本龍一がCMに出てた丸っこい形のやつ)の
トータルでの印象が当時のセルシオより上と思ったほど特別良くて、その翌日だったせいかも。
<パサート4代目と比較して>
V5エンジンは、クラスが上のパサートにも搭載されていました。同じエンジンでも、
凝縮感があるボーラと ゆったりとしたパサートとでは不思議と違った印象を持ちました。
たぶん自分の中では、小さなボーラにだからこそ
5気筒との組み合わせにプレミアム感が得られたからだと思います。
ボルボ850もパサートと同じようなサイズだけど、
あちらはボディがミシミシしてたり 内装の雰囲気や音の鼓動に酔わされたりでまた違うんだよなー。
<パサートV5/V6の当時メモ>
・セダン V5 2002.7.25
走行1千kmのほぼ新車。VWにしては静かな部類。
旧モデルに乗った時は直4だったから単純には比較できないが、ビッグマイナーチェンジで
それ以外にも改良があったのかも。そのせいで、V5のユニークな鼓動も 感じ取りにくかった。
フラットな乗り心地には感激。今まで乗ったVWで一番良かった。
現行ウィンダムを高級にしたような感じだ。(じゃ、ウィンダムって何級?)
・セダン V6 4モーション 2002.10.18
MTで乗ったボーラに比べると フツーに感じた。
・ワゴン V5 2003.1.29
東京~春日部間を往復。
全体的に面白味に欠けるので、飽きるかも。質感高めの実用車?
ボーラだと、一寸高級で面白いV5エンジン。
大柄ボディのパサートには、(高級車を期待すると)ちょっと安っぽくて物足りない。
まわせば、ビート感ある快音を発する。

ワゴン V6 4モーション
(この代のワゴンはヴァリアントとは呼ばない)
2004.2.12
<ボーラの室内空間>
VWに限らず 多くの車種は代がかわるたびに長さも幅も大きくなる傾向にありますが、
ボーラは 現行6代目ポロ並みのディメンションだった4代目ゴルフがベースです。
ボーラの全長は4375mm、全幅は5ナンバーを少しはみ出す1735mm。
Cピラーが寝たデザインもあるかもですが、後席の居住性には一寸ギリ感がありました。
<先代ヴェント>
ボーラの先代にあたるヴェントも5ナンバーサイズのコンパクトなボディで、
2.8L V6エンジンのVR6も設定されていました。重厚というのか、
軽快感あるゴルフ4/ボーラとはテイストが少し違ったように思います。
余談ですが、個人的に 路上で原因不明で突然止まってしまうトラブル3回のうち
2回がゴルフ2だった経験(もう1台はオペル・ヴィータだったかな)から、
昔ながらのバイブレーションを感じるドイツ車(ゴルフだと3まで)には一寸トラウマがありました。
見た目の違いも大きく、ヴェントは弁当箱…
いや、ゴルフのお尻にトランクをくっつけたようなスタイルでした。
ヴィッツ→プラッツ、フィット→アリア、ティーダ→ラティオのようなかんじです。
ボーラでは エクステリアが専用デザインでスタイリッシュになりました。
プラッツじゃなくてベルタ、アリアじゃなくてグレイス、そんなかんじかなー。
<後継ジェッタ>
ボーラの後のジェッタでは、5気筒以上は無くなり、ボディも大きくなってしまいました。ショボーン。
<さいごに>
ボーラの名が無くなってから、もう10年以上が経ちます。
元々多くないボーラで V5(もしくはV6)に絞るとさらに数は少ないと思いますが、
凝縮感あるボディと希少なメカニズムの組み合わせを体験していただきたい一台です。
~マイフェイバリットなクルマたち~
Vol.1
トヨタ・ウィンダム2代目
Vol.2
トヨタ・エスティマ初代
Vol.3
日産・ティアナ2代目
Vol.4
ホンダ・フリード初代
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トヨタ・ビスタ/アルデオ5代目
Vol.6
トヨタ・センチュリー2代目
Vol.7
VW・ゴルフ5代目R32
Vol.8
VW・ボーラV5
Vol.9
ホンダ・レジェンド4代目
Vol.10
スバル・インプレッサWRX初代
Vol.11
三菱・i / アイ