
イメージ通りのバッハの演奏、見つけた!
12月に書いたブログで J.S.バッハのインベンションとシンフォニアを紹介する際、引用リンクした動画で 演奏の仕方についてもあーだこーだ書いた。
2020.12.12記事
https://minkara.carview.co.jp/userid/1680537/blog/44663672/
(古賀稔彦氏の話は、亡くなったから持ってきたわけじゃないよ。その数ヶ月前。)
楽譜に忠実な弾き方は 突き詰めれば一つしか存在しないのかも と思っていた部分もあり、
好き嫌いであっても 素人の自分が感想を言ってよいものか 気が引けていた。
ブログを投稿した後、そのことについて調べた。
言い訳は既に追記したが、
例えば 作曲された当時と現代のピアノでは音の響きが違う、
それひとつとっても 解釈によって表現方法は様々あることを知った。
指導者に ここは黒だと教わったところを 別の指導者には白と教えられ
どちらが正しいのかレッスンで悩んでいるようなケースも目にした。
スタッカート、レガート、ノン・レガート。そして、ルーチェレガート。
広島産が混ざってる気もするが、
自分がこだわった「音の区切り」は なかなか複雑そう。
話が少し変わるが、
BDレコーダーに大切に残してあるコレクション映像の中に、2つの欧州アニメ映画がある。
ひとつが、
『ファンタスティック・プラネット』(フランス/チェコスロバキア・1973年)。
(つくられた年代からして まずスゴい。
ちっこい人間系キャラたちが箱庭的にワラワラ動くところなんかは、
透明ケースに入れたアリの巣を観察するような
心の奥底にある本能的な部分をくすぐられる。
世界観の表現が「風の谷のナウシカ」に影響を与えたというのもわかる。)
もうひとつは、
『ベルヴィル・ランデブー』(フランス他・2002年)。
どちらも、ほっこりできる日本アニメや 愉しいアメリカCGアニメとは
また違う、感性に響くアーティスティックな作品だ。
毎日観たら胃もたれしそうな濃厚さというか、
特に前者は 家族みんなで鑑賞するタイトルとしては勧められない。
今風に言えば、かなりぶっとんでいる。
でも、オリジナリティーにあふれていて素晴らしい。
後者『ベルヴィル・ランデブー』は、
パーツを誇張してデフォルメされたキャラクターデザインもユニーク。
高畑勲監督や大友克洋監督からの評価も高かったのだそうだ。
ソフトは、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーから発売されている。
https://www.disney.co.jp/studio/ghibli/0620.html
その中の1つに、ピアニストの演奏シーンがある。
先日、この映画を 姪っ子に紹介しつつ再見した時、
憂いあるメロディーにあらためて聴き入った。
鑑賞後に調べたところ、曲は J.S.バッハだった。
そして、このピアニストには モデルとなった人物がいるという。
Glenn Gould
平均律クラヴィーア 第1巻 第2番 BWV847 J.S.Bach
映画『ベルヴィル・ランデブー』
1982年に50歳で生涯を閉じた カナダのピアニスト、グレン・グールド。
映画の中では、誇張というより
彼の演奏スタイルの特徴をわかりやすく表現している。
左右の手を交差させるのもそう。
ゴルトベルク変奏曲 BWV988 J.S.Bach
グールド氏が1955年のデビュー盤に選んだ曲。
グールドは、(映画よりももっと)低い椅子に座って、
ずり落ちてもそのまま直さないような、
古本屋で本に埋もれて住んでいる店番のような、
そんな視線の低さで弾く。
クルマでいえば、外観市販車で中身レースカーのドラポジのような低さ。または、
移動させようとしたら修理中で運転席ごと外されてた中古車の低さ。(←運転難し過ぎて ふいた)
ゴルトベルク変奏曲 BWV988 J.S.Bach
レクター博士だ!
1981年の映像ということは、グールド氏が亡くなる前年だね…。
グールド氏について調べていくうちに、
先日のブログで バッハも絡めて4回に分けて書いた
坂本龍一の名が出てきた。
彼は、バッハのファンであると同時に、
グールドの演奏の大ファンでもあるという。
坂本龍一氏が語るグールド:
https://www.gggathering.com/aboutgould/
以前聴いた記憶がありながら、どこで聴いたかを思い出せない
『ベルヴィル・ランデブー』の曲のメロディー。
デジャヴのような感覚がずっと残っていた。
バッハ…
坂本龍一…
思い出した、エッシャーのビデオだ!
ショーン・レノン(ビートルズのジョン・レノンの息子さん)が出演する、
ビデオソフト『インフィニット・エッシャー』。
“サイコーにちょうどいいホンダ”のCMの、
あのショーン君。(と呼びたくなるぐらい、まだ若い)
INFINITE ESCHER :ワークス・オブ・M.C.エッシャー
VHS 40分
監修:ナム・ジュン・パイク
演出:ジョン・サンボーン,ナマリー・ペリロ,ディーン・ウィンクラー
音楽:坂本龍一
出演:ショーン・オノ・レノン
販売元:ソニー・ミュージックエンタテインメント
発売日:1990.4.21
ASIN:B000064PNT
正直言って、ビデオの内容はそれほどでもない。
ただやっぱりね、音楽が坂本龍一と知ったからには
じっくり聴きたかったんだよ。
だから、クラスにもうひとりいた坂本龍一ファンのO君から
借りて観たんだ。(買いなさいよ…)
前半のショートムービーは、
ショーン君が CG合成されたエッシャーの世界に迷い込むストーリー。
当時のCGってこんな感じだったよなぁ…と懐かしくもあるチープさ。
で、やっぱり 音楽は良かった。YMOのノリが好きな自分も満足。
後半は、一転して 淡々とエッシャーの画が紹介され続ける。
ショーン君目的で観始めた人だと、退屈であくびが出ちゃうかも。
自分はというと、やはり退屈… だが、そこがいいのだ。
モニターにチラッと目をやると何かやってる的な、BGVみたいなもん。
当時で言えば、フジテレビの 夜中のフィラー映像みたいなもん。
(この頃のフジテレビは元気一杯だったから、無駄にクオリティーが高い。
90年代の洋楽邦楽ヒット曲メドレー、おまけに 画面には
仕込みじゃないみずみずしいぎゃる達が水着で砂浜を歩く夏の湘南が映ってたりして、
ヘタに録画すると 永久保存版になってしまう。)
後半の音楽も坂本龍一氏担当だよね たぶん。
前半ムービー部の曲、アレンジが巧みで すぐに気付けなかったけど、
別アレンジで こっち(後半の前半)にも出てきた。
しかし 何なんだろうな、物哀しくも美しくもある この旋律は…
(後半の後半、動画25:30あたりからエンドロールまで)
…と当時感じたそれが、『ベルヴィル・ランデブー』で流れたのと同じ曲だったのだ。
坂本龍一と グレン・グールドと J.S.バッハが、ひとつの線でつながった。
小学生の頃から真似をするほどファンだったグールド氏が弾いていたからこそ、
坂本龍一氏は エッシャーのビデオにBWV847を使ったんじゃないかなぁ?
時系列は、
J.S.バッハ 〜 グレン・グールド 〜 坂本龍一 〜 エッシャーのビデオ 〜 ベルヴィル・ランデブー
おぼろげにではあるが つながり方も想像できた。
これ以上深く追求しなくても、感性の共通点を見つけられただけで嬉しい。
心の中では、図々しくも 自分もその一員なのだ。
グレン・グールド氏の弾くバッハ…
ネット動画で彼の演奏を聴いた瞬間、身震いがした。
前回のブログで言いたかった “キレッキレじゃないバッハ”は、
こういう弾き方のバッハなんです。
インベンション第1番 ハ長調 BWV772 J.S.Bach
テンポの遅い速いでなく、音のつながりに刮目せよ。なんつって。
インベンション第8番 ヘ長調 BWV779 J.S.Bach
この曲が象徴的。
切れてるのに切れてなーい!
どうやったらこんな滑らかに音がつながるんだろう?
正確なのに無味乾燥になっていないのは、
0:32〜のような長短コントロールが散りばめられているからじゃないかな。
グールドファンの集い出席にそなえて、BWV779専用の表現を用意した。
リズミカル、抑揚、グールドが映し出すバレエダンサー
※以下、座談会で打ち解け合えた場合のみ
奇跡の ポイント継ぎ目(車庫引込+退避 3連続・狭軌・レール伸縮無・朽ちてない木製枕木)での急行電車(そこそこ混雑・やや力行)通過音
シンフォニア第14番 変ロ長調 BWV800 J.S.Bach
この曲は、給食で出る 銀紙包装のキューブ型マーガリンを
パンに塗らずに単独で食す時(あんただけだよ)みたいに、
一寸ねっとりして感じる。音質の問題かな。
(音をフレーズで追いかけず 曲全体をひとかたまりにして聴いたら、
グールドシェフのレシピとしてよどみなく流れこんできた。
マーガリンはレーズン入りスコーンに塗って美味しく食し、
コーヒーもいただきながら この文を追記しています。)
バッハの対位法を、消化どころか見事に昇華させている。
ピアニストでありながら、指揮者にもみえてくるんだよ グールドが。
スタインウェイの鍵盤で 踊り跳ねる音たちを整える指揮者。
知ったかぶり全開で好き勝手書いてると心配になってくるな。
全30曲聴ける動画があった。消されなきゃいいけど。
(前回引用した 辻井伸行さんinアイスランドの「コルトナの朝」、
最高に良かったのに、投稿者のアカウント停止されたみたいで
バッサリ消されて 砂嵐になっちまっただよ…。 ぴえんぴえん。)
ゲームソフト「ファミコン探偵倶楽部」に使われていたのは
上の3つのどれか と 前回来日時(近々また来日すんの?)に書いたが、
インベンション第15番 BWV786(かなり早弾き) 21:40〜
インベンション第13番 BWV784 29:33〜
だった。ごめんちゃい。記憶だけが頼りなんで。
事件の犯人を探す テキスト型の謎解きアドベンチャーゲーム
(ポートピア殺人事件みたいなやつ)で、
シリアス系ゲーなので 暗めの曲がセレクトされている。
この曲をバックに、ゲーム画面に出てくる執事の爺に
聞き込みをする探偵Raccoであった。
きく しらべる いどうする
つくえをたたく かつどんをだす さじをなげる
暗め… そうなのよ…
「インベンションとシンフォニア」全30曲約45分、
メジャーとマイナー ほぼ半分ずつ。
哀しい曲調が半分(以上?)。練習曲集だから仕方ないのだ。
上で引用した3曲は 明るめセレクトなのであって、
ドライブデートで全曲そのまま丸ごと流すのは危険。曲順編集が必須だ。
後半にマイナーを押しやる、帰路助手席熟睡想定セレクション。
だが、ハンドルを握る自分だけが聴いてても やっぱり哀しくなってくる。
おすすめは、
前半メジャーで 最後の想い出づくり。そして別れ。
ソロドライブになった帰り道、後半マイナーで可哀想な自分に酔う。
(破局前提かよ…)
ちなみに、グールド氏の奏法は 正統派ではないらしいんです。
レガートではないけど、スタッカートでもない、
(ペダルを踏まない)ノン・レガート奏法。
伝統に忠実ではないということかしら。
インベンションとシンフォニアに関しては、
他の人の演奏を見ても ペダルは殆ど踏んでいなかったから、
踏み踏みするような曲だと より違いが出るのかな。
まぁ、好きな人が好きならいっか。
同曲の 他の人の演奏を沢山聴いたわけではないので
グールドだけが特別なのかどうかはわからないけど、
あれでもないこれでもない と 探さなくてよくなった気分。
辻井伸行さんのピアノが聴きやすかったのと同じように、
緻密濃密でありながら 揺さぶられ過ぎないところが
自分にはとても心地良い。
クラシックで 好きなメロディに出逢った時、憶えておくべきは 奏者!
もちろん曲名もなんだけど、口ずさんだところで 奏者は簡単には探せないから…。
自動車のバッテリーDIY交換の際には、
プラスマイナスをショートさせないよう気を付けないといけないが、
もっとも注意を払うべきは 作業時に中腰姿勢を強いられる自分の身体。
20kgあるバッテリーの積み下ろしでギックリにならないように。
それと同じぐらい奏者に重きを置くぞ と、心に留めたのであった。

奏者で違うから、何枚も買ってしまったんよ。
いまの時代は、買う前にYouTube観て確認できるから良いよねぇ^^;
P.S.
クラシックピアノ曲のCDを買ってきて ヘッドホンで聴くとね、
誰かの声が混ざっているんだよ。
「うぅ〜」「あぁ〜」…って。心霊現象ではないよ。
弾いてる人の声がしてるの。
これは、ピアニストによっていろいろみたいだね。
グールドさんも、♪たりたりら〜 って歌ってた。
そのハミングは ノンレガートじゃなくて レガートらしいよ^^