西武鉄道安比奈線は、

川越市の西武新宿線南大塚駅から入間川の砂利採取場まで、川砂利の運搬を
目的とし1925(大正14)年開業した貨物線です。砂利の需要減や採取規制強化に
より、1963年以降約半世紀にわたって休止扱いとなっていました。

国道16号線 遮断機の痕跡
休止線といっても線路の枕木は朽ちかけて、踏切のレールは上からアスファルトで
埋められており、入間川を渡る県道114号線の八瀬大橋では線路は完全に分断され、
ほぼ廃線に近い状態になっています。

八瀬大橋
西武鉄道では今年2月、安比奈車両基地整備計画が中止されたことにより、
安比奈線の廃止を正式に発表しました。
以前訪問したのはNHKの連続ドラマで川越市が舞台となり、この線路もロケ地と
して登場したころでした。当時は線路上にドラマで使われたトロッコがありましたが、
先日訪問した時は撤去されたのかありませんでした。
訪問した時も私と同じように廃線のニュースを知ってカメラ片手に見に来られて方が
何人もいらっしゃいました。
レールのロールマーク(陽刻)を調べたところ、1884年と1887年製造された米国製でした。
JOLIET 1884 IIII (イリノイ州 ジョリエット製鉄、1884年4月製)
★ NCRM Co STEEL IIIIII 87 ★ (North Chicago Rolling Mill Steel Co.
1887年6月製)
E T 87 ( ペンシルバニア州 エドガー・トムソン製鋼 1887年製)カーネギー・
スチールの前身
安比奈線が開業したのが1925年、これらのレールが製造された年代とはかなりの開き
があり、他路線から転用か貨物線であるがゆえ輸入中古レールかも知れません。国産
レールの登場は、官営八幡製鐵所が建設され本格的に鉄道レールが製造された
1900年以降です。当初は品質面でも輸入品に太刀打ち出来ず、鉄道の延伸により
増大するレール需要に品質・コストなどにおいても優れる輸入レールに頼らざるを
得なかった状況であり、昭和の初期まで欧米各国から輸入されたのがこれらの
レールです。
葛川橋梁

安比奈線の鉄橋に使用された鋼材も輸入されたものでした。
朽ちた枕木を支持しているガーター橋の鋼材には

DORMAN LONG & C o
MIDDLESBRO
ドーマンロング社(イングランド・ミドルスブラ)の刻印が見られます。
ドーマンロング社は1875年創業、英国の老舗鉄鋼・橋梁会社です。
西武HDでは、安比奈線の休止期間が切れる今年11月末をもって正式に廃止とし、
いずれレールも撤去されるようです。19世紀アメリカ西部開拓時代に造られた歴史的
にも貴重なレールや産業革命発祥の地英国の橋梁など近代産業遺産としてその
一部でも遺構として保存していただきたいものです。
スミレ
古いレールについては、こちらのサイトを参考にさせていただきました。
http://homepage1.nifty.com/arashi/
Posted at 2016/04/07 23:07:59 | |
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