オラトリオ:『勝利のユディータ』 Juditha Triumphans RV.644 は、
ヴィヴァルディのオラトリオでは唯一スコア現存する作品です。
旧約聖書外典のユディット記の物語です。ユディータと呼ばれる信仰の徳の高い
ユダヤの女性が住む町をアッシリア王の軍隊が包囲し降伏をせまるも、ユディータが
敵将フォロフェルネスにエルサレムへの道案内を買って出る振りをして、敵陣に入り
込み宴席でホロフェルネスを酔い潰し、侍女と共に敵将を斬首してしまう。これに
恐れをなしたホロフェルネスの軍隊は町から敗走したという物語です。
この物語は絵画の画題としてもルネサンスから近代において多くの画家たちの創作意欲
をかき立てたようで、ボッティチェリやカラヴァッジョ、クリムトなどの作品があります。
手元のあるCDは、ニコラス・マギーガン指揮ハンガリーの古楽アンサンブルの演奏
ですが、 かなりリアルで毒々しいジャケットデザインです。知らなけりゃちょっと
買う気にならないマニアックなCDです。
このオラトリオは序曲(シンフォニア)が紛失しており、ティンパニと金管による軽快な
序奏による合唱から始まります。役者はすべて女性歌手、合唱もすべて女声という
かなり変わったオラトリオですが、別に「赤毛の司祭」ヴィヴァルディの好みだった
訳ではなく、音楽教師でもあったヴェネチアのピエタ修道院での初演が目的でした。
ヴィヴァルディらしく超絶技巧と美しいアリアが連続して楽しめます。
バロック・オペラ(オラトリオ)では、合唱を挟んでアリア(歌)とレチタティーヴォ
(語り)が交互に演奏され、終曲の合唱でほとんどめでたしめでたしとなりますが、
このオラトリオの終曲合唱でも"Salve invicta Juditha formosa"(麗しき無敵の
ユディータ、万歳)が高らかに演奏されます。この旋律は後にヴェネチア共和国の
国歌 "Na Bandiera, Na Léngoa, Na Storia" になりました。
ヴィヴァルディがこのユディータの英雄譚を作曲した時代のヴェネチア共和国は、
オスマン帝国と覇権争いの真っただ中でしたからか。
Viva! Viva! Viva! Vivaidi.
Posted at 2019/12/08 22:13:36 | |
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