オランダのエアラインの機体後部には、
"The Flying Dutchman"(フライング・ダッチマン)とあります。直訳すれば
「空飛ぶオランダ人」ですが、この意味は英国の伝承に登場する幽霊船あるいは
その船長のことです。 海への畏れを知らぬ態度故に神の怒りを買い、最後の
審判の日まで幽霊船でさまよう宿命を与えられた船長にまつわる言い伝えです。
現世と死後の世界を往き来する船であるとの言い伝えもあるようです。エアライン
では、17世紀海運国であったオランダの黄金時代に帆船を操り大海原へ旅立った
先人への畏敬の念を表しているのでしょうか。
ワーグナーの楽劇『さまよえるオランダ人』はこの伝承を題材としています。ドイツ語の
”Der fliegende Holländer” はフライング・ダッチマンです。ワーグナーのCDはあまり
持っていないが『オランダ人』はたまに聴きます。でもよく聴くバロック・オペラとは全く逆なん
ですね。バロックでは人物の感情表現が歌で感じ取れますが、ワーグナーの楽劇は既存
の歌劇の概念を超えたジャンルですからね。躍動的な旋律がとめどなく流れ、爆発的な
オーケストレーションは凄すぎて。聴くのは初期の作品『オランダ人』と『ローエングリン』くら
いでしょうか。演奏時間も半端じゃなく長いですから聴くのも大変ですが、ショルティ指揮、
シカゴ交響楽団の熱演、歌唱のすべてが凄い引き込まれます。

マルッティ・タルヴェラ(7~80年代活躍したフィンランドのバス歌手)のダラント船長
が聴きたくて買った『オランダ人』です。
楽劇『さまよえるオランダ人』 ゲオルグ・ショルティ指揮 / シカゴ交響楽団&合唱団
マルッティ・タルヴェラ(Bs)、ノーマン・ベイリー(Br)の"オランダ人"、ダラント船長の娘
ゼンタはジャニス・マーティン(S)です
"Mogst du, mein kind" マルッティ・タルヴェラ(Bs),
タルヴェラの豊かに響く声がいいですね。魔笛のザラストロでも後宮のオスミンでもそう
ですが、
ベーム指揮ドレスデン国立管のベートーヴェン歌劇『フィデリオ』でも、フィナーレ
間近に黄門様のように登場し(大臣です)驚異的な歌唱で圧倒されます。
『オランダ人』の合唱といえば、糸紡ぎの合唱"Summ und brumm, du gutes. Rädchen"と、
水夫の合唱"Steuermann! Laß die Wacht!" この対照的な二つに尽きますね。
Posted at 2020/06/14 20:37:47 | |
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