日産のEVが見えてきた。昨年の同じイベントではキューブ(旧型)にコンポーネントを入れて、トルクフルな走り(EVは発進時が最大トルクを実感)に期待を持たせた。
今年はティーダのパッケージに、EV-11と称したほぼこのまま市販化されると思われるEVシステムを組み込んでいた。
ラミネート型のリチウムイオンバッテリーを4枚1セットとしたセルを計48個詰め込み(重量は200㎏を超える)、電池容量は24kWh・90kW(120ps)以上。交流同期モーターは80kW(107ps)・280Nmを発揮。140㎞/h以上のトップスピードと160㎞以上の航続距離(US LA4モード)を実現しているという。
走りは、当然のことながら昨年よりも洗練されていた。140㎞/hのトップスピードも今回のテストで確認できた。実用性という意味では十分なスピードである。この辺の技術の進歩に対しては、僕は、日本のエンジニアリングには全幅の信頼を置いている。問題は、これを工場で量産化し、なおかつ道路交通システムに無理なくフィットすることができるかどうか。
おそらく、現在のオバマ米国政権の施策やC.ゴーン社長のお膝元フランスのRENAULTとの協調関係がスムーズに行けば、我々が想像する以上にEVの普及が早まる。地球温暖化とエネルギー安全保障の両面を視野に入れたグリーン革命は、ここ2年ほどの寄り道(石油価格は短期的に再び高騰し、やがて暴落。これによって石油資源独裁国は崩壊する?)を経た後一気に加速。ECOとは無縁の国々の民主化が実現するまではことはなかなか進展しないが、ステップを踏んだ後は世の中は一変する。そう観ていたほうが、後で慌てないで済むだろう。
そして、大勢が次世代エネルギーに移った時が、ICE好きの旧世代にとってもっとも幸せを味わう可能性が高まる時代になる。ECOであることは当然だが、それさえ満たしてしまえばけっこうな自由が手に入るはずだ。LWS FRを待ち望む者は、心して、HV、EV、FCの普及にこれ努めなければならない。
ガソリンICEが好きだからこれが一番だなんて、口が裂けても言わない。ただし、いまの内から、LWS FRが好きだ欲しいということは、はっきりと宣言し、その出現を待ち望んでいるという姿勢は明らかにしていなければ駄目だ。
まあ、そんなことを言わなくても、新しいEVやHVやFCEVはどれも魅力的で、従来のクルマとは少しニュアンスの違う走らせて面白い……があるから、そんなに気を揉むこともないけれど。
ここから先の時代の変化は、よほどの天変地異がないかぎりドッグイヤーの上を行くハイスピードの展開になるはずだ。もともと冷戦構造の崩壊に端を発した優秀な人材の雇用対策がZEV(=ゼロエミッションビークル:電気自動車EV)開発の原点にあった。唐突に聞こえるかもしれないが、隠れた真実である。ビッグスリーの抵抗でZEVの開発は一旦頓挫したが、もはや流れは止まらない。
去年の夏に崩壊が表面化した金融バブルを引き起こしたのが、実は元の軍事産業などで腕を振るったエンジニアリングを 修めた工学のエキスパートだったという事実は、単に興味深いというだけでなく、今後を占う上で重要だろう。金融工学はどのようにして生れたか。先日のNHKの深夜の再放送を観て、つくづくアメリカという国は凄いなあと思ったばかりだ。
まだ日本が「ZEVなにそれ?」という感覚でいた1995年。急遽取材しに飛んだカリフォルニアで得た情報は、今になってようやくリアルな事実としてつながった。ZEV法が発動された動機の一つに、冷戦構造の崩壊によって失業した軍事産業で働く優秀なエンジニアの再雇用先として、EV開発プランが考えられた。
当時はただただ「へぇ~」感心するだけだったが、今回の金融バブルを作ったのが工学のエキスパートで、ウォール街に呼び寄せられた彼らが工学を金融に応用して信用度の低いサブプライムローンを証券化するという奇策を編み出した。後に100年に一度の恐慌状態を生み出す仕組みが、かつて原爆を開発したプロジェクトに倣ってマンハッタン計画と呼ばれていたなんて……。なんとかとハサミは使いようというが、下手をするとなんとかに刃物になってしまう。
ビッグ3の2角を破綻させても進めようとしている新しい潮流は、多分ホンモノなのだろう。時代の変化をきちんと見ていないと、妙なところに行ってしまいそうな予感がある。時代がchangeに向かって突っ走り始めたのは間違いない……かも。
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2009/07/28 01:22:02