
どちらが良いということではない。見て、触って、動かして、操って……クルマに求めるのは人それぞれだろう。スタイリングやデザインにこだわりを持つことは悪いことじゃない。触感は、視覚から脳に入る間接的?な情報伝達と違って皮膚が直接対象物に接する。そこに好みがあって当然だ。
現代のクルマはほとんどオートマチックに動く。それがたとえマニュアルギアボックス車だったとしても、ギアシフトとクラッチワークに多少の経験と技が問われるだけで、国家試験も司法試験に比べるとスキルとしてはずっと易しい(はずだ)。
操っては、物体としてそこにあるクルマそのものの評価から離れて、動かすドライバーとの関係性で語られる。ドライバーのinputがどのようにクルマの走りとしてoutputされ、そのoutputを感知したドライバーが絶え間なくinとoutの情報を、本来は感情を持たないメカニズムから発せられる音と振動と尖った感じ…いわゆるNVH(Noise.Vibration.Harshines)を頼りに、あたかも自分の足で歩く時のような無意識でオートマチックな感覚で走りを創造していく。
問われているのは実は物言わぬクルマのNVHそのものではなく、乗り手の(何を以て良しとするかの)イメージの質(イメージする力)だったり、無機質なクルマに感情移入して情報交換を可能にするセンス? こちらに価値観(判断基準)がなくて評価もへったくれもない。比べっこをして、こっちが速いの、硬いの、うるさいの……数字で置き換えられるような度合いで優劣をつけるのはたやすいが、つまるところ評価を分けるのは作った者の価値観やそれによって決められた感覚に対する共感だったり、逆に異質ゆえの憧れやエキゾチシズムであるようだ。
一昨日乗ったBMW3シリーズ・グランツーリスモは、素直にかっこいいとは言い難い猫背で厚ぼったい印象というかイメージだったが、まとめきるデザイン力が、手にした時のタッチと目に映る感覚を結びつけ、なぁ~んかいい感じに仕上がっている。2ℓターボモデルで何ら不足を感じることもなく、3シリーズの中国向けストレッチモデルと同じ+100㎜のホイールベースが1800㎜超えの全幅と1510㎜の全高との釣り合いを演出。3シリーズを名乗るが、風格はずっと上。骨太なタッチが印象的だ。

LEXUS ISは、このクラスのベンチマークと自他ともに認めるBMW3シリーズに照準を合わせた。デザインはニースのEDスクエアだし、クラウンに先行採用された2ℓ直4ハイブリッドも元々ISのために開発されたユニットだった。ディーゼルマーケットの欧州に敢えてハイブリッドで切り込む。その心意気やよしだろう。インテリアデザインはLFAがモチーフ。そうしたい気持ちは分かるし、なりよりLFAはもりぞう社長直轄領であり神聖不可侵の領域だ。それを盛り込めば、誰も異論は言えず許される? いいクルマ作りが、社長に気に入られるクルマ作りになる危うさをきちっと指摘できるかどうか。試されていることを自覚する必要がありそうだ。
デザイン感覚にコミットできるか否か。内外装のカラー/マテリアルのバリエーションを充実させながら、3.5ℓV6、2.5ℓV6、2ℓ直4Hybridをフルにラインアップさせる。アメリカにはハイブリッドは供給しない。彼の地は何だかんだ言っても大排気量/大トルクが忘れられない国。3.5ℓに8速SPDS(AT)を組合せ、LDHS(レクサスダイナミックハンドリングシステム)をはじめとする統合制御で走りの新境地を開く。

とくにFスポーツのセットアップは、基本的に同じパワートレインのラインアップを組むクラウンで得たのと正確に一致する丁寧なまとまり。すでにハイブリッドを経験してしまった僕の身体は、よほど個性を際立てたブランドスポーツカーを除けば簡単には大排気量、大パワー路線には与することができなくなっている。つまり、悪くはないけれど、この程度の走りのパフォーマンスに驚き納得する子供ではなく、要するに欲しくはない。
欧州に積極展開されるハイブリッドモデルは、日本ではEV走行時に周囲に存在感を示す走行音発生装置の代わりにサウンドジェネレーターを設けている。音やパワーとハンドリングのバランスを考えた走りのセットアップはまだまだ発展途上段階と言わざるを得ないが、そう遠くない将来、欧州域内でレクサスハイブリッドは存在感を大きく伸ばしているに違いない。この、現時点では何とも焦点がぼやけた300hをどう一人前に育て上げるか。走りの質で350を超え、買い得感で250を圧倒する必要がある。実燃費で15km/ℓ以上は必達事項だろう。
新型ISは、BMW3シリーズと闘えるか。今現在は、駆け抜ける歓びを前面に出し、パフォーマンスとクォリティに出血サービスぶりを発揮しているBMW。そのまま安泰かどうかは微妙な状態で、時代は一気にハイブリッドとなる可能性は否定できない。3代目ISは身上をつぶすか。世界中のメーカーがプレミアムミドルサルーンの金脈を堀り起こそうと躍起になっている。日本人ユーザーがしっかり育て上げ、それが海外で評価される。現在日本唯一のジャパンプレミアムにはそろそろ本気を出してもらわないと。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2013/06/14 01:25:42