
昨日のウォルフスブルクのFFスポーツカー(クーペ)といい、今日イレギュラーで試乗の機会を得たインゴルシュタットのV10快速セダンといい、近頃のドイツ製プロダクトに乗った時に覚える感慨は、タイトルの通りだなあ。
VWゴルフⅥの箱根試乗会の時にもアップしようとして叶わなかったことでしたが、先週ミトでゴルフをインサイトというわけの分からぬ企画の取材をした際にも(この時はゴルフのコンフォートラインだった)、やはり印象は同じで、記事にもそのままの表現を使うことにしたわけです。
クォリティも精度も走りの性能もドライバビリティも、もうお腹一杯という感じで良くできているわけです。でもね、結論から言って持っているパフォーマンスの少なく見ても3分の2は過剰性能であるわけです。
20世紀型の従来価値観に照らすと、申し分なくよろしい。けれど、日常的には消費不可能な品質に対して、もう違うんじゃねぇの……という気分を抱かないのだとしたら、相当時代の変化に対して鈍感と言わざるを得ない。
少なくとも私は、もうこれを良いの悪いの言ってる場合じゃないだろう……そんな気がするわけです。
S6の5.2LV10は、何と言うかもう笑っちゃうくらいパワフル。V10らしい過渡領域のパラバラバラッ…といった一次振動に伴う不整ビートに続くシュ~ンと切れ味鋭くスムーズに回っていく独特のパワーフィールには、グラグラグラァァァ~~と心惹かれるモノを感じてしまうわけです。
メインディッシュが試乗枠一杯ということで、時間つなぎに乙女道路から芦スカ湖尻~裾野IC~御殿場ICというサークルをかっ飛んで見たわけですが、わずかな東名区間でアウトバーンの紳士協定のドアを叩く直前までパピュ~ンと行っちゃう。クワトロシステムもSトロニックも、文句のつけようもない。だいたいそこは超非合法の世界ですからね。大真面目に論評するとむしろ問題になる。
本拠地ではWOBで始まるナンバーが付く3ドアクーペも素晴らしい出来でした。指先でチョンチョンチョンと簡単にシフトできて、イメージしたラインに簡単に乗せられるハンドリングの質の高さは、からだで走るというよりまるでポリフォニーの山内一典が追求するシュミレーターを操るが如くのバーチャルテイストが先に立ちます。
からだとクルマの関係に着目する私としては、楽チンで強烈に速くてドーパミンどぱどぱの快楽快感系ではあるけれど、なんだかパソコンやパチンコに長時間貼りついていたようなけだるさが残る。少なくともスポーツで汗を流したあの感覚とは違うものを感じてしまうわけです。
昔話のアナクロニズムに陥るつもりはまったくありませんが、70年代から80年代前半までの、今からみるともう笑っちゃうくらいのレスパワーのFRを、手漕ぎでカチャカチャやりながら、本当に頼りない70タイヤか何かでスリルを味わっていた時のほうが、からだがマシンに関わり合うという意味で楽しかった。
と、同時に、結果的にも安全だったような気がするわけです。クルマは危なっかしかったけど、スピードが低い分セコいドライビングスキルでも対応できたのではないかと。そのプロセスの中で上手くなれたし、楽しめたし、クルマの技術に対しても貢献できたのではないか…と。
先日のNYショーで、クルマのダウンサイジングなんてない、と言い切った近々登場の馬鹿馬鹿しく立派で、多分高性能なAWDセダン/ワゴンの開発責任者がいたけれど、こういう分かっていない人が上に来た会社はそう遠くない将来憂き目を見る。おっと、どさくさに紛れて言っちゃった。
もう21世紀になって10年にもなろうというのに、まだ20世紀を引きずっている人が多すぎる。時代はいまから14年位前にゴロッと変わった。変っていないように見せていたバブルが弾けて、今日の混乱がある。あまり言い過ぎて嫌われるのはどうかとも思いますが、一人くらいいてもいいでしょ、こういうアホが。
Posted at 2009/05/14 19:21:16 | |
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