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伏木悦郎のブログ一覧

2010年09月24日 イイね!

ハイスピードは高性能?

コンパクトカーの出来が鰻登りとなっている。ボクが今注目しているのは、"燃費"をキーワードにガソリンエンジンで最高レベルのCO2排出量とすることを目指し、プラットフォーム、パワートレイン、ボディコンストラクション&デザイン、生産スタイル、国際的な補完供給体制などの新機軸を総動員させた日産マーチです。

やがて欧州向けに純内燃機関モデルとしては究極の値とされる95g/kmのCO2排出量を実現したアトキンソンサイクル+スーパーチャージモデルが登場するはずだが、その供給元となる生産ラインが存在するのはインド。他にもタイ、メキシコ、中国という新興あるいは発展途上国として括られる計4ヶ国が拠点となっている。


さすがに新興国でローカルコンテンツも100%に近づけながら日本車のクォリティを保つのは困難ということで、旧座間工場の敷地内にG-PECという各国のワーカーのスキルを高める研修ラインを設け、品質の安定化に精力を注いでいる。結果として仕上がった日本向けK14マーチはタイヤの性能に起因するロードノイズに不満を残すが、N.V.Hに課題の多い3気筒をバランサーの採用でそつなくまとめ上げている。

オーバースペックとなる馬鹿力があるわけでも、オーバークォリティをなんとか解消としてあたふたするでもなく、淡々とコンパクトカーに求められるパフォーマンスとクォリティのバランスを追求している。大人の男が乗っても違和感のない外観造形と素材の制約をデザインで昇華しようとするインテリア。

ハンドリングも、一見プアな印象のタイヤを履くわりに穏やかだがちゃんとステアリングインフォメーションが期待できる好ましい仕上がりを見せている。今後グローバルで100万台/年を目指して少なくとも2機種の追加を予定しているVプラットフォームの資質は、高い動力性能と走りのパフォーマンスのために過剰品質が取り沙汰されつつあるアウトバーン仕立てのクルマとは想定する世界が異なるところでしっかりポイントを稼ぐ。このあたりが落しどころ…という多くの国々の現実に見合う実用性の高さは正当に評価されて良いだろう。

対極にあるのがVWポロですね。最近追加されたGTIモデルは、ダウンサイジングの雄ともいえる1.4ℓTSIツインチャージャー。コンパクトなわりにガッチリした1210㎏のハッチバックボディを179ps、25.5Nmに7速DSGで走らせる。ターンパイクという日本でも有数の飛ばせるワインディングロード、それもパワー勝負の登り勾配が延々と続くその気になりやすい状況設定。

ここを弾丸小僧のように少し跳ね気味な乗り味でガンガン行く。実際には範とするべき高剛性とそれをベースにしたボディコントロールが先に立つが、相対的に完全なる過剰領域に入る動力性能に対してはホイールベース×トレッド比がもうひと回り足りないね…その気になって攻めると背中に冷たいものが走る瞬間が多くなる。


基本的にレベルが高いので、その意味でのまとまりに感嘆の声が上がるのも分かるが、その時の速度計を見ると「オープンロードではその時点でアウトだろう……」身も蓋もない話だが、多くの人々が顔をしかめるレンジに入っている。結局スピードでしか高性能を表現する術はないのか。VWポロGTIは、この国がかつての発展途上段階だったら、この僕だって諸手を挙げて賛成した。

しかし出してはならないスピードをいつまでも凄いすごいと言っていても仕方がない。燃費という簡単そうに見えて実は純内燃機関にとってはかなり高いハードルを越えるとか、もっともっと緩いスピードで訳もなく楽しい面白いと思える乗り味を探求するとか。そっちのほうが、グローバルに貢献する可能性が高いはずではないか。じつはガラパゴスに他ならないドイツ価値観にいつまでも付き合うこともない。

カタルシスを求めるスピードの世界は今一度クローズドサーキットに返して、そっちではみっちり極め、こっち(公道)はこっちでそこそこのスピードで無茶苦茶楽しい走りの世界を追求したいもの。最近ふと思ったのは、何故世界中の国々が速度制限を設定しているか。物理的な安全性や他者に危険を及ぼす反社会性が問題とされたりもするが、内燃機関の特性からいって、超高速域ではエミッションコントロールが機能しにくい。

各国の各地域の排ガス規制で問われるのは、せいぜいが100mph未満の実用速度域。一定の枠を超えた領域からはエンジン自体を守るために燃料増量させたりして必ずしも排ガスがクリーンな状態とはなっていない。PM(パティキュレート)の問題がディーゼル特有のものと考えるのは誤りで、全開で走るガソリン車だってイノセントとはいえない。内燃機関の本質としては仕方がない。そこの穴を埋めているのが制限速度ということではないだろうか。先日のロードスター4耐での燃費は大体4㎞/hちょっとでした。ふつうに走れば2.5倍の10km/hは固いところです。

エンジニアリングに疎いカンジニアの思いつきなので、実際にエンジニアリングに関わる詳しい方から是非解説を願いたいところであります。

そのへんをつらつら考えつつスズキの新型スイフトに乗ると、これはアリかもしれない……直観的にそういう印象を得ます。1.2ℓにダウンサイズされた直4エンジンは、けっしてパワフルというわけではありませんが、マニュアルトランスミッションをあえて国内でも標準装備としてラインアップしたモデルは、遥か30年以上前に登場したKP61を彷彿とさせる好ましいバランスを備えている。


それほど速いクルマではないけれど、実感として速く走らせているリアリティが得られる。過度に動力性能に依存していないことが、シャシー性能の余裕とハンドリングに対する許容度を高め、厳密にいえばリアサス回りの動きに起因するボディコントロールに課題を残しているけれど、これならドライビングの基礎を無理なく伝える教材として使えるね…というものになっている。

ところがですね、この新型スイフトのMT仕様、箱根で行われた試乗会では裏メニュー扱いでした。乗用車の9割がATという別の意味でのガラパゴス状態を突き進んでいる日本の国内事情からすればまあ必然ですが、メインのCVTに乗るとクルマ本来の味わいがかなり抑えられている。MT仕様は、かつて僕も熱中した欧州調のハンドリング至上主義みたいなものを忠実に追いかけている。

その意味ではとても古典的で、未来につながる新しさには欠ける。従来的なクルマの評価ということでは、文句なしに良くできているということになりますが、ただスピードレンジを下げただけという現状には面白いとは思うけれど、これからを感じない。キャッチアップは後出しジャンケンみたいなもので、遅れて入ってきたほうが得をするという理屈です。

韓国車の勢いや、中国車の可能性もそういうところにあるわけで、必ずしも新機軸を提案してモビリティの未来を切り拓くという視点には立っていない。スズキのこれまでの成功を否定するわけではありませんが、先端技術で勝負するといった国産大手とは違う立場での躍進とみたほうが正しく、それはこの先どうなのかな?という余計なお世話の不安が募ります。VWとの提携にはよほど心して掛からないと、本来の持ち味や個性的なクルマ作りの姿勢に変質をもたらす可能性がある。

古典的な意味での、より速く、より安全に、より快適にという20世紀のクルマの躍進をもたらしたスローガンは、いまではほぼ満足すべきレベルに達している。それをさらに右肩上がりで高めるのか、それとも違う道を模索するのか。変化の時代にはまず変わるという意識が必要な気がします。今までどおりで行くかぎり、壁はどんどん高くなる。他にも道はあるだろうというのが、あれこれ考えながら自動車歴40年を数えてしまった現在只今の僕の実感であるわけです。

Posted at 2010/09/25 00:23:13 | コメント(7) | トラックバック(0) | 日記
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