2009年01月03日
質問1の意図は、多くの人が納得できるスピードはどのあたりのレベルにあるのか。ハードとしてのクルマの性能だけで、優劣を競い合うことにノーマルな神経の持主なら限界を感じているはずです。
クルマは、ハードのシステムとして自己完結していますが、それだけでは基本的に動くことができない。動かすドライバーが加わるマン-マシン・システムとなのことで、初めて動くことが可能になります。
しかし、マン-マシン・システムだけでは、モビリティツールとしての機能を果たすことはできません。
走る道路や保管する駐車スペース、交通をコントロールする信号や標識、さらにはそれらのインフラストラクチャーを管理する法体系や一般認識としてのマナー……などがシステムとして重なり合って初めて、クルマはクルマとしての機能を発揮することができる。
そのようなインフラ全般を仮にフィールドと呼ぶことにしましょう。ようするにクルマは、『人とクルマと道路』が重なり合ったシステムにならないとクルマにならない。
私はその状態を語呂合わせも考えて、『クルマ=人・道・車…3重のシステム』と呼んでいます。誰もが知っているあたりまえの話ですが、ともするとクルマはハードとしてのメカの集合体としてのみ語られることが多いですね。
性能の指標というか尺度になっているのはspeedです。そしてスピードを得るための仕事量としてのpower(馬力)があるわけですが、ここで注目したいのが誰一人として質問に対して最高速を挙げていない、という事実です。
いっぽうでオーバー300㎞/hを実現するスーパーパワーに深い憧憬を表わしながら、現実的にはその半分以下で満足という意見が大勢を占めました。
サンプリングの数に限りがあったので断定は難しいですが、大方のイメージを描くことは可能だと思います。速度の極大化は、資源・環境・安全という自動車が背負いこんだ十字架と鋭く対立します。
何よりも、そもそも日本の法定最高速度は高速道路で100㎞/h、一般道路で60㎞/hです。その性能は、すべての軽自動車で得られるようになっている、という現実をどう捉えるか。
わたしはレース育ちの、ある意味ではスピード狂なので、速いクルマ、パワーの大きいクルマ、スピードが楽しめるクルマには目が無いタイプです。
しかし、モータースポーツを始めたタイミングが第一次石油危機の直後で、厳しい排ガス規制への対応に迫られて自動車メーカーがワークス活動から撤退するなど、社会のムードは反自動車に大きく傾いていました。
1973年のオイルショック時にはガソリンスタンドでアルバイトをしながら資金作りをしていたので、当時の大混乱を肌で覚えています。
今ほど情報化が進んでいなかったので、買い占めによる需給バランスの急変によって店から在庫が失せてしまう。
デマによってトイレットペーパーが店頭から消えた話は有名ですが、ガソリンスタンドにも客が殺到し、1台10ℓに制限せざるを得なくなりました。常連客にどれだけドヤされたことか。
実際には、中東からのタンカーは予定通り日本に向かっていて、供給不足の恐れはなかったといいます。しかし石油元売りによる便乗値上げなどもあって、市場は完全にパニック状態に陥り、ガソリン価格も結果的に暴騰してしまいました。
話が飛びましたが、fan to driveと資源/環境問題(1970年頃は公害問題や交通戦争と呼ばれた安全問題がピークを迎えていました)の両方に18歳で免許を取ってからずっと向き合わざるを得なかった。
このアンビバレントな原体験が、常にわたしの評論の核になっている。いったいスピードをどう捉えて行くのか。
法定速度を変えるのか、それとも最適効率とスピードのバランスを考えながら最適解を探すのか、はたまた徹底的に過剰性を追求して蕩尽の限りを貪るのか。
決定的だと言えるのが、公道上では現実的に使われることが稀なスピードやパワーを競い合う時代は終った。非日常的な過剰性能を備えるクルマを楽しめるのは、バーチャル空間かレーシングトラックなどのクローズドコースに限られる。
その辺はもう行き詰まって先がないドイツを中心とする欧州あたりに任せて、リアルワールドで高効率で楽しいクルマ作りに転換することが日本のサバイバルの方向性だと思うわけです。
パフォーマンスレベルは1970年頃を参考にしたい。比出力は8.5kg/ps(車重1200㎏で約140ps見当)もあれば十分。駆動方式は当然FR。スタイリングとパッケージングとハンドリングの鼎立を期待するならそれ以外の最適解はない。
近代西欧合理主義から生れたトランスアクスルFFは、そもそも2ボックスを基本に考えられたレイアウト。デザイン、スタイリング、プロポーションの自由度を考えれば、FRの選択が必然となる。
そこにスピードもデザインの範疇に入れるセンスが加われば万全といえるだろう。造形とダイナミクスの融合以外に、21世紀のクルマ作りの解はないはずだ。
当然のことながら、ここで語ろうとしているのは純ICE(内燃機関)のクルマについてです。ハイブリッドやEV、FCVを考えるなら、当然FFベースのほうが合理的だし、生産設備の再利用の面でも有効です。
これからは、どれが最高・最強・最善かという一等賞を競い合うノックダウンのトーナメント方式ではなく、それぞれにメリットもデメリットもあるパターンを網羅して、トータルで環境負荷を下げながら持続可能性を追求する時代。
どう取り繕っても、これまで通りでは立ち行かなくなると思います。高価な高級セダンや超高性能スポーツカーは成功した時の楽しみとして取っておきたい。可能性は誰にでもあるのだから、その存在を否定する愚行は避けたいですね。
いっぽうで、普及型のICE車には徹底した効率とデザインの追求から編み出される、軽量だが存在感のある商品性の創造を期待したい。
風の便りで、4気筒のFRが今年登場しそうな気配が漂ってきました。このところパワージャンキー方向に振れている企業体の仕事なので、ちょっと心配。ここでコケると次はもうないからね。
パワーに依存しなくてもfan to driveを成立させられるのがFRの最大のメリット。ここに気がつく必要があります。50対50とか、トラクション性とか、スピードに目が眩んだ20世紀型の枝葉末節に囚われないよーに。
今年は本当にお先真っ暗だけど、希望がまったくないわけではない。インサイトにプリウスにレクサスの新ハイブリッドセダン。三菱i-MiEVの市販化もある。これらに対抗し得るかどうか。
これからのICE車の評価は旧態依然とした走りのパフォーマンス=スピードだけじゃなく、それでもガソリン車が欲しいと思わせる魅力的なコンセプトを持っているかどうかに注目したいですね。
おっと、question2の答。『目』でいいと思います。drivingに必要な情報の大半は目によってもたらされます。そのことは、目をつぶった状態では5秒と続けて走らせることができないことからも分かります。
次がハンド…手ですね。ステアリングホイールを介して伝えられる『情報』がいかに多いかは、10m手離しで走らせれば分かるはずです。
目の話は、始めるとまたまた長くなるので、次の機会にしたいと思います。
「長い文章は読まないって言ってるでしょ!! 大体クルマの話はチンプンカンプンなんだから」また川崎の姉に叱られそうです。
Posted at 2009/01/03 23:50:57 | |
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2009年01月01日
日本の自動車産業は、グローバリズムの奔流に呑み込まれるように、欧米追従路線に走り、世界生産の約3分の1という圧倒的なシェア(というか生産規模)を獲得しました。
短期間での拡大路線が、急激な市場収縮によって、1年前のウハウハとは真逆の真っ青状態に陥った、とまあそういうことでしょう。
んで、『朝生…』に話を戻すと、誰かが「日本には燃料電池車とかEVなどといった、世界最先端の自動車環境技術がある……」などと発言し、技術で世界をリードできると息巻いていた。
こういう番組で自動車が話題に上ることが少なくないが、なぜそこに自動車ジャーナリストがいないんだ? イロモノ扱いでも良いから、「いや、それにはこういう問題があるんですよ…」ぐらいのこと言わなくちゃ。
T型フォードに始まるモータリゼーションの進展は、石油の生産/供給の確立と表裏一体の関係にあります。その視点でみて行くと、FCV(燃料電池車)は水素、EVは電気の安定した供給が不可欠なのは自明です。
それを、クルマの技術だけでなんとかなる……なんて。その辺の自動車評論家みたいなことをしたり顔で言われても困る。クルマはガソリンで走るのです……と同じようにFCVは水素で走る。本質が見えていない意見はお粗末です。
FCVやEVを、これまでのクルマ(ICE)と同じ文脈で語ることはそもそも間違っています。使用するエネルギー源が異なるということは、まったく別の概念の乗り物ということなんです。
まあEVの電気については家庭用の電源が使えますが、この場合従来型のICE(内燃機関)車の燃料に掛けられているガソリン税に相当する税金はどうするのか? ほとんど一般レベルでの議論にはなっていません。
FCVの場合はさらに問題は深刻で、ホンダやトヨタや日産がそれぞれ技術開発競争を展開していて、現時点ではFCXクラリティのホンダが一歩リードといった印象を与えています。
確かに、クルマというハードのシステム開発は進んでいます。しかし燃料電池のエネルギー源となる水素の生産/供給体制の整備はほとんど進んでいません。
今年は三菱のi-MiEVやホンダのFCXクラリティがリース販売されることになりますが、いずれも販売先はフリートと呼ばれる公官庁や企業に限られます。税制の論議も表に出ることなく、水素を戦略的に考える方針も打ち出されていません。
何で俺に売らないんだとか言っている場合じゃなく、低炭素化社会から水素社会に移行する筋道があるのかどうかを問う必要がある。
アメリカは06年のブッシュ大統領の一般教書に「2015年までに、水素エネルギーの実用化が可能かどうか調査研究し、結論を出す」というプロジェクトをちゃんと予算をつけて進めています。
FCVを次世代エネルギーのエースと考えるのならば、ビッグスリーは一旦精算して、雇用体制を含めて一からやり直すほうが合理的だと思うのですが、アメリカはまだ水素化社会へと完全に舵を切った段階ではありません。
カリフェルニアにおけるFXCクラリティのリース販売は、すでに5台がハリウッド女優や映画プロデューサーなどの"市民"を対象として行われている。カリフォルニア州のLA界隈には数ヶ所の水素ステーションが実用化に向け用意されている。
FCXクラリティのリース料が、日本の10分の1以下(約6万円)という事実は、普及に向けてのインフラ作りを含め、アメリカのほうが先を行っていることを物語っている。オバマ次期大統領も次世代エネルギー車の開発を急ぐとみられている。
今回の『朝まで生TV』には数々のなるほど…があり、ヒントを発見することができました。時代は大きく動きますね。
Posted at 2009/01/01 17:26:55 | |
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2009年01月01日
T型フォードによって産み出された大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムやビジネスモデルは、安価で潤沢な石油の供給を前提にしていました。
単にT型フォードが製品として優れていたから爆発的な普及が実現した、という
のはクルマの本質から見ると正確ではありません。
アメリカにおいて大規模な油田が発見され、ガソリンの安定的な生産と流通が確保されたから、世界で初めてモータリゼーションが花開いたわけです。
世界で初めて油井が作られたのは1859年の米国ペンシルバニア州。その事業化の成功が後のテキサスやカリフォルニアの大油田の発見につながり、それをテコにT型フォードは約20年で1000万台規模の歴史的ベストセラーになっている。
その後紆余曲折を経ながら100年間続いた自動車の時代が、需給バランスという資源の側面と温暖化という地球規模の環境問題が重なって、行き詰まった。
持続可能性を軸にすると、自然と対峙し、力ずくで克服できると考える近代西欧の価値観はほとんど効力を失ってしまう。
今回の欧米主導による金融バブルと、それを背景にしたモノ作りの現場における極大化基調の流れ(クルマの高級化、高性能化、高品質化など)は、すでに獲得した従来価値や富を手離したがらない人間の保守性と、それ故のニューフロンティア開拓の意志のなさが合流した結果と見るのが正しいだろう。
つづく
Posted at 2009/01/01 16:55:49 | |
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2009年01月01日
家族で年越し蕎麦を頂いて、娘らが紅白歌合戦にかじりつきとなったのを見計らって、馴染みのスーパー銭湯へ。
約1.5㎏の水分を絞り出して、80→70㎏台に戻ったことを確認。一昨日の餅の大食いを反省しながら、頼まれものをドンキへ買いに行っている間に、2009年が明けてしまいました。
2008年大晦日の近所のGS最安値は93円/1ℓ(レギュラー)。昨夏最高値の4割引。
円高/デフレvs資源/環境? そんな単純な二項対立の状況とは違いますが、ロストディケードに時計の針が逆戻りすることだけは避けたいと思います。
今年も、テレ朝の『朝まで生TV』を終了まで観てしまいました。雇用問題が喫緊の問題であり、(人並みの)豊かな生活が期待できる労働の現場の創造なり再構築が急がれている。
良質な人材と水以外に有効な資源を持たないわが国としては、農業を含むあらゆる分野における『技術立国』が不可欠であるとは自明です。
自動車は、関連産業の裾野の広さから日本経済を牽引する基幹産業であると言われていますが、石油エネルギー多消費を前提とする欧米的価値観に基づく従来型のクルマ作りは、かなり前に限界に達していた。そう私は見ています。
つづく
Posted at 2009/01/01 14:49:40 | |
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2009年01月01日
皆々様
新年明けましておめでとうございます。
年賀状を送る習慣がついに身につかず、この歳までやってきてしまいました。
新春のご挨拶を頂いたみなさんには、この場をお借りして御礼申し上げます。
本ブログをご覧のみなさん、激動の時代を生きている幸せを共有しながら積極的
に発信して行きたいと思っています。応援よろしくお願い致します。
平成二十一年 元日
Posted at 2009/01/01 14:48:29 | |
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