
福島県内最古の名家「旧二階堂家住宅」念願の国有形文化財へ
2023年11月25日 08時45分
国登録有形文化財に新規登録される見通しとなった旧二階堂家住宅の主屋=福島市
県内に現存する名主(なぬし)の家では最古で最大規模となる福島市上鳥渡の旧二階堂家住宅が24日、国登録有形文化財(建造物)になる見通しとなった。所有者が居住していたなどの理由で調査がほぼ手つかずだったが、歴史的価値に気付いた関係者の尽力で日の目を見る時が来た。建築年代は断定が難しく、主屋(おもや)は正式資料で「江戸後期」とされたが、専門家は1750年前後を基準に江戸中期の天和年間(1681~84年)までさかのぼる可能性があると指摘する。
屋敷構え最大規模
「世襲名主として地域を治めた有力な家。福島の歴史が詰まっている」。登録に必要な所見を作成した郡山女子大の長田城治准教授(40)=日本建築史=は高揚感を漂わせる。将来的に国指定重要文化財になり得る価値もあるという。
二階堂家は鎌倉時代からの歴史があり、中世に地頭を務めたとされる。江戸時代には米沢藩や幕領、福島藩領など計14回所属が変更され、支配者が目まぐるしく変わる中でも、世襲名主として地域を治め続けたという。当主は「権兵衛」を襲名し、近代以降は貸金や保険、林業、蚕種(さんしゅ)業をなりわいとし、県議や信夫村長などの政治家も輩出した。
「どっしり ふるさとの旧家」「自然と調和...三百年の年輪」―。1976年1月3日付の福島民友新聞朝刊の特集面に歴史の長さを伝える見出しとともに、かやぶき屋根だった当時の写真が掲載された。福島市から文化財への指定も打診されたが、所有者が暮らしていたため実現しなかった。
記事には「この家は三百二十年ほど前の建築」との証言も記されている。二階堂家では天和年間に主屋を一度焼失したという口伝えもあり、その信ぴょう性を含め建築年代を断定する詳細な調査が必要になる。
現在はトタン屋根だが、創建当初の姿を残し、桁行(家の長さ)が28.6メートル、梁間(奥行き)が12.3メートルに及ぶ。江戸時代建築の民家を対象に行われた昭和40年代の全棟調査でも県内最大規模だった。江戸時代は豪華な家作を禁ずる規制が何度も出されたとされ、長田准教授は「この規模や屋敷構えは異例だ」と驚く。
保存へ奇跡的な縁
旧二階堂家住宅は数年前まで所有者の高齢化などで保存が危ぶまれたが、奇跡的な縁がつなぎとめた。不動産会社を営む福島市の横井教仁(ゆきひと)さん(39)が仕事で訪問した際に「いらない物件」として紹介を受け、2018年に土地、建物を取得。建物を掃除していたところ、地域の歴史をたどれる多数の遺物が置かれていた。
中には江戸時代の書物や自由民権運動家で福島民友新聞の創始者でもある河野広中の顔写真、明治時代に購入した護身用ピストル、大正時代に行われた福島競馬の馬券などもあった。
横井さんは文化財としての保存を決意し「福島の身近な歴史を知ってもらえる資料館にしたい」と思い描く。この家で育った同市の二階堂時世さん(75)は「今は誰も住んでいないので、朽ちていたかもしれない。今後も残してもらえることはありがたい」と感謝する。
一方、約2000坪の広大な敷地の管理には人手が必要となる。横井さんは保存に協力する企業団体や市民らを募っている。問い合わせは横井さん(電話080・3320・0451)へ。
当時の福島民友新聞の記事1976年1月3日付の福島民友新聞朝刊に掲載された二階堂家住宅の主屋(奥)と長屋門。当時はかやぶき屋根だった
有形文化財 価値の高い建造物や絵画、彫刻などを国宝や国、都道府県、市町村の文化財に指定し、保存と活用が必要な場合は登録となる。県内では書院造りの古民家で1678(延宝6)年ごろに建築された会津若松市の旧滝沢本陣横山家住宅や、農家住宅で1718(享保3)年に建てられた只見町の旧五十嵐家住宅などが国重要文化財に指定されている。
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2023/11/26 10:16:35