
大阪・関西万博 閉幕まで残り1か月 駆け込みで大混雑が予想
2025年9月13日 5時16分
ことし4月に開幕した大阪・関西万博は閉幕まで残り1か月となりました。これまでにのべ1800万人以上が訪れ、入場券の販売は黒字の目安を超えましたが、閉幕に向けての駆け込みで休日などの入場予約の枠が埋まりつつあり、博覧会協会は早めの予約を呼びかけています。
158の国と地域が参加してことし4月に開幕した大阪・関西万博は、来月13日の閉幕まで残り1か月となりました。
開幕前は関心が高まらず低調だった入場券販売はこれまでに2000万枚余りと黒字の目安としてきたおよそ1800万枚を超えていて、グッズの販売も公式キャラクター「ミャクミャク」の人気を背景に好調だということです。
博覧会協会によりますと、一般の入場者数は11日までに1850万人余りとなり、今月6日には過去最多のおよそ21万人が訪れるなど増加していて、閉幕に向けては駆け込みによる大きな混雑が予想されています。
入場予約の枠は平日の午前や休日については埋まりつつあり、希望する日時に入場したりパビリオンの入場を予約したりするのが難しい状況になっています。
博覧会協会は、早めの入場予約を呼びかけていて、石毛博行事務総長は「できるだけ多くの人に来てほしいが、その結果として満足度が下がってしまう万博にはしたくない。来場者に満足してもらうような運営をしていきたい」と話しています。
会場直結の地下鉄 来場者などの帰宅困難問題も
大阪・関西万博は来場者の増加が予想されていますが、会場に直結する地下鉄では期間中、トラブルによって来場者などの帰宅が困難となる問題が発生しています。影響を最小限に抑えるための情報発信や、博覧会協会などとの連携の実効性が問われています。
万博会場がある大阪の人工島、夢洲は、大阪メトロの中央線が鉄道では唯一、直結していて、来場者のおよそ7割が利用しています。
閉幕に向けて、通勤、通学のラッシュと重なる午前7時から午前9時までの時間帯や、万博に訪れた人が退場する午後8時以降の時間帯で、一層の混雑が予想されるということです。
このため会社では、来場者が多く見込まれる日は、午後11時台に夢洲発の臨時列車を6本、午前0時台には1本増発するとともに駅での警備態勢を強化するとしています。
ただ、万博の期間中、4月22日の夜には、中央線で車両故障が発生して全線で運転を見合わせ、夢洲駅の改札内で来場者や営業を終えたスタッフなどおよそ4000人が一時滞留したほか、8月13日の夜にも停電で中央線が運転を見合わせ、会場にいた多くの人が帰宅困難になり、会場内で一夜を過ごしました。
再発防止に向けて会社は、設備の点検や整備、早期復旧への態勢を強化するのに加え、運転を見合わせた場合には、発生から最大20分程度で、ホームページなどに情報を掲載し、一部の区間で運転を再開したり、バスによる代替輸送が実施されたりした際は、大阪市中心部への移動方法を案内するなど、情報発信のあり方を見直すとしています。
さらに博覧会協会に管理職の担当者を1名追加で派遣し、運行情報を迅速に共有できるようにするということです。
閉幕まで1か月。トラブルの影響を最小限に抑えるための来場者などへの情報発信や、博覧会協会との連携の実効性が問われています。
外交・国際交流の場に
大阪・関西万博は、参加している国や国際機関などの外交の場となっているほか、各国と日本各地の人たちが交流を深め、新たなつながりが生まれる機会となっています。
【外交】
大阪・関西万博に参加している158の国や地域には、それぞれの国や地域について紹介する式典「ナショナルデー」が一日ずつ割り当てられ、これに合わせて多くの首脳や要人が来日し世界に向けて自国の訴えを呼びかけています。
ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナの大統領夫人オレーナ氏はスピーチで、各国の支援への感謝を表すとともに「国を再建し、前進しようとする姿を見せることで心を合わせていきたい」と決意を示しました。
そしてウクライナを支援する国などの代表もウクライナパビリオンを訪れ戦時下の暮らしを伝える展示を見学するなど、連帯する姿勢を改めて示しています。
その一方で、ロシアは今回の万博に参加していません。
さらに、イスラエルとの衝突で多くの犠牲者が出ているパレスチナ自治政府のアルアムール国民経済相はナショナルデーで「われわれは万博にビジョンと決意を持って参加している。パレスチナは自由でなければならない」と呼びかけました。
【民間交流】
また、今回の万博では、各国と日本各地の人たちの交流を促進するプログラムが開幕前から進められ、76か国が参加しています。
このうち大阪 天王寺区の大江小学校はアフリカ中部のルワンダと交流を続け、現地の小学校と手紙をやり取りしたり、およそ80万人が犠牲となった1994年の虐殺を生き延びた男性を招いて国の歴史を学んだりしています。
そして7月初旬に開かれたルワンダのナショナルデーでは、6年生80人余りもステージに立って、ルワンダ語で国歌を歌いました。
大江小学校の樋口義雄校長は「万博がなかったら、人生の中でアフリカとの接点はなかったかもしれない。子どもたちが目を輝かせてルワンダとの交流を楽しむ姿を見ると、万博というチャンスに感謝している」と話しています。
万博きっかけに新しいビジネスチャンスも
関西に拠点を置く企業の中には、万博をきっかけに海外との交流を広げ、新しいビジネスチャンスをつかもうとする動きも出ています。
【万博出店のパン販売店、ブルンジと商品開発】
大阪 吹田市にあるパンの販売店は、万博会場の「コモンズ」と呼ばれる建物に入るアフリカ中部・ブルンジのブースにカフェを出店しています。
この販売店は、廃棄されるおからを活用して、カヌレなどを製造していて、こうした取り組みは万博の理念にもつながると考えたブルンジ側から去年、出店の依頼があったということです。
深刻な貧困状態にあるとされるブルンジは、コーヒーやはちみつなどの生産が盛んです。
ブルンジの食材も生かした新しいメニューを両者で考えた結果、おからで作ったカヌレが添えられ、ブルンジ産のはちみつもかかったパフェが完成しました。
万博期間中、カフェでの販売が始まると、たちまちSNSなどを通じて人気が広がり、連日、買い求める人の長い列ができているということです。
万博の閉幕後は、吹田市の店舗でパフェの提供を続けるほか、アフリカの国々のコーヒーや工芸品などを輸入し、販売するビジネスにも新たに乗り出す計画です。
「ラパン」の久保恵理副社長は、「万博でたくさんのアフリカの人と友達になれました。ここで学んだことを自分のビジネスなどに生かしていきたいです。たくさんの人にアフリカについて理解してもらえる店にしていきたい」と話していました。
ブルンジ側の担当者のデジリ・ンセンギュンヴァさんは、「ブルンジにはとてもすばらしいオーガニックな農産物があります。万博をきっかけに先進国とビジネスをすることで、コーヒーやはちみつなどの輸出が増えたら、貧困を減らすきっかけになるので期待しています」と話していました。
【万博採用のアプリ開発ベンチャー、海外展開へ】
一方、大阪市内に営業拠点を持つ東京のベンチャー企業は、自社で開発した多言語翻訳ができる通信アプリが、万博会場内の警備に採用されています。
このアプリは、23の言語の翻訳のほか写真や動画も共有できるということで、訪れた海外の人の対応や警備員どうしの連絡に活用されています。
会社によりますと、万博での実績が評価され、海外からの問い合わせが増えているということで、このほどタイで工場や商業施設向けにアプリの販売が始まったほか、アメリカでのサービス開始を目指し、現地に営業拠点を設けることも決まりました。
こうした中、会社では、アプリで翻訳できる言語を80余りまで増やすための機能改修を行うことを検討していて、海外でのビジネスをさらに拡大させたいとしています。
「サイエンスアーツ」の小林靖大阪事務所長は、「世界の人たちから見ても万博で使われているというところは、信頼につながっていると感じている。より世界各国で活用してもらえるようなサービスを展開していきたい」と話していました。
海外パビリオンの建設めぐる未払い問題 閉幕後にも影
大阪・関西万博の閉幕後にも影を落とす可能性があるのが、海外パビリオンの建設をめぐる未払い問題です。工事の代金を受け取っていないと訴えている下請け業者は少なくとも38社に上り、支払いを求める民事訴訟も起きています。
代金の未払いを訴えているのは、アメリカ、アンゴラ、ウズベキスタン、セルビア、中国、ドイツ、ポーランド、マルタ、ルーマニアの9つのパビリオン建設を担った、いずれも日本国内の建設や内装業者など少なくとも38社です。
未払いとなっている工事代金は数百万円から多いケースで3億円余りに上るとしていて、未払いによって会社経営が悪化し、従業員の給料の支払いが遅れたり、銀行の融資を断られたりしているほか、経営者の中には家計にも影響が及び、子どもの学費を払えなくなった人もいます。
このうち2社は、外資系の元請け業者に対して支払いを求める訴訟を東京地方裁判所に起こしています。
未払いの訴えが相次いでいる背景について、公共事業に詳しい筑波大学の楠茂樹教授は「資材高騰の影響などで着工が遅れて工期が短くなり、契約内容を詰められないまま工事を進めたことがトラブルにつながっているのではないか」と話すとともに、万博を主催する博覧会協会についても「契約や工事の状況について把握しておく責任がある」と指摘しています。
閉幕後はパビリオンなどの解体に向けた作業も始まりますが、解体業者の中には今回の未払い問題を不安視して参加に慎重な業者もいるということで、解体工事が予定どおり進まない可能性もあります。