JR西日本 地方路線30線区すべて赤字 今後の在り方議論へ
2022年4月11日 18時39分
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JR西日本は、人口減少やコロナ禍で利用者が特に少なくなっている地方路線について、線区ごとの収支の状況を初めて公表しました。30の線区すべてで赤字となっていて、会社は、バス路線への転換なども含め沿線自治体などと今後の在り方の議論を進めたいとしています。
JR西日本は11日、人口減少に加え、コロナ禍で利用者が特に少なくなっている地方路線の30の線区について、個別の収支を初めて公表しました。
1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない、近畿や中国、それに北陸地方の30の線区が対象で、2020年度までの過去3年間の平均の収支は、すべての線区で赤字となっています。
このうち、赤字額が最も大きいのは
▼山陰線の出雲市から益田の線区で35億5000万円、
次いで、
▼紀勢線の新宮から白浜の29億3000万円でした。
JR西日本は、新型コロナの影響による鉄道の利用客の落ち込みで、2020年度に2332億円の最終赤字だったのに続き、2021年度も最大で1165億円の最終赤字になる見通しで、経営の立て直しが急務となっています。
会社は、具体的な収支を公表することで、沿線自治体などと課題を共有し、地域の特性も踏まえながらバス路線への転換なども含めて今後の在り方についての議論を加速させたいとしています。
会見で、JR西日本総合企画本部地域共生部の飯田稔督次長は「経営が厳しい状況で、地方路線について自治体と議論することは待ったなしの状況だ」と述べ、議論を急ぎたい考えを強調しました。
30線区の2020年度まで過去3年間の平均収支は
JR西日本が線区ごとの収支の状況を公表したのは、1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない、近畿地方のほか、中国地方や北陸地方にある、合わせて30の線区です。
2020年度までの、過去3年間の平均の収支はいずれも赤字となっています。
線区ごとの状況です。
▽小浜線の敦賀から東舞鶴は、16億9000万円の赤字
▽九頭竜線の越前花堂から九頭竜湖は、8億1000万円の赤字
▽大糸線の南小谷から糸魚川は、6億1000万円の赤字
▽山陰線の城崎温泉から浜坂は、11億7000万円の赤字
▽浜坂から鳥取は、8億1000万円の赤字
▽出雲市から益田は、35億5000万円の赤字
▽益田から長門市は、12億2000万円の赤字
▽長門市から小串と仙崎は、9億6000万円の赤字
▽関西線の亀山から加茂は、15億7000万円の赤字
▽紀勢線の新宮から白浜は、29億3000万円の赤字
▽加古川線の西脇市から谷川は、2億6000万円の赤字
▽姫新線の播磨新宮から上月は、6億2000万円の赤字
▽姫新線の上月から津山は、4億3000万円の赤字
▽姫新線の津山から中国勝山は、4億2000万円の赤字
▽姫新線の中国勝山から新見は、3億5000万円の赤字
▽播但線の和田山から寺前は、6億7000万円の赤字
▽芸備線の備中神代から東城は、1億8000万円の赤字
▽芸備線の東城から備後落合は、2億2000万円の赤字
▽芸備線の備後落合から備後庄原は、2億8000万円の赤字
▽芸備線の備後庄原から三次は、2億8000万円の赤字
▽芸備線の三次から下深川は、13億円の赤字
▽福塩線の府中から塩町は、6億7000万円の赤字
▽因美線の東津山から智頭は、3億9000万円の赤字
▽木次線の宍道から出雲横田は、6億9000万円の赤字
▽木次線の出雲横田から備後落合は、2億6000万円の赤字
▽岩徳線の岩国から櫛ヶ浜は、5億6000万円の赤字
▽山口線の宮野から津和野は、9億3000万円の赤字
▽山口線の津和野から益田は、6億円の赤字
▽小野田線の小野田から居能は、1億9000万円の赤字
▽美祢線の厚狭から長門市は、4億7000万円の赤字
広島 JR芸備線の利用者などは
JR西日本が収支が厳しい状況を明らかにしたJR芸備線のうち、広島県北部の庄原市にある備後庄原駅を利用する人たちからは、存続を希望する声が聞かれました。
庄原市内の高校に通学するために芸備線を利用するという生徒は「通学に必要なので、芸備線がなくなると困ります。もしもバスだけになってしまうと、一度に乗れる人数が限られるので、芸備線は必須です」と話していました。
別の高校1年生は「平日は毎日使っていて、きょうは2時間くらい帰りの電車を待っています。通学するために欠かせない路線で、もっと本数があればいいなと思います」と話していました。
日常生活では芸備線を使うことが少ないという人からも、存続を望む声が聞かれました。
庄原市内の大学に通う10代の学生は「日常生活ではバスを使うことが多いですが、岡山の実家に帰省する時に芸備線を使います。もしもなくなってしまったら困るので、もっと乗って売り上げに貢献したいです」と話していました。
60代の女性は「高校時代は毎日利用していたのが懐かしいです。今はふだんは車を使いますが、高齢になって車に乗れなくなると困ると思います。国に援助してもらうなどして、なんとか残してほしいです」と話していました。
鳥取 JR山陰線の利用者は
JR西日本が収支が厳しい状況を明らかにした、JR山陰線の線区の利用者に、鳥取県岩美町の岩美駅で話を聞きました。
岩美町から鳥取市の専門学校に通う19歳の男性は「本数が少なく、待ち時間がとても長いので不便だと感じています。朝と夕方は座席が埋まって、立っている人もいます。本数が減るのはしかたないと思うところもありますが、なくなってほしくないです」と話していました。
取市の高校に通う高校2年生の16歳の男性は「いつもかなりの人が乗っていますが、本数が少ないので困ることが多いです。部活動をすると運行が終わっていることもあり、本数を増やしてほしいです」と話していました。