
桜島で噴火 噴火警戒レベル5に引き上げ 33世帯に避難指示
2022年7月25日 2時27分
24日夜、鹿児島県の桜島で爆発的な噴火が起き、大きな噴石が火口から2.5キロ付近まで飛びました。
気象庁は桜島に噴火警報を発表して噴火警戒レベルを最も高いレベル5の「避難」に引き上げ、火口からおおむね3キロ以内の居住地域で大きな噴石に厳重に警戒するよう呼びかけています。
気象庁によりますと、24日午後8時すぎ、桜島の南岳山頂火口で爆発的な噴火が発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石が火口の東から南東方向に飛び、2.5キロ付近まで達しました。
気象庁は、桜島の火山活動が非常に活発化しているとして噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを最も高いレベル5の「避難」に引き上げました。
気象庁は、南岳山頂火口と昭和火口から3キロ以内の鹿児島市の有村町や古里町の一部で大きな噴石に厳重に警戒し、自治体からの情報に従い避難などの対応をするよう呼びかけています。
また、火口からおよそ2キロの範囲では火砕流に警戒が必要だとしています。
一方、気象庁によりますと、桜島の地殻変動などの観測データを分析した結果、1914年の大正噴火のように島内の広い範囲に影響を及ぼすような大規模な噴火が切迫している状況ではないということです。
今回の噴火の前には山体の膨張を示す地殻変動が観測されていて、この噴火のあとも山体が膨張した状態は続いているため、気象庁は注意深く監視していくことにしています。
気象庁が全国の火山で平成19年に噴火警戒レベルを導入して以降、レベルを5に引き上げたのは、平成27年に鹿児島県の口永良部島に発表して以来2回目で、桜島では初めてです。
有村町と古里町の一部に避難指示
鹿児島市は、桜島で噴火警戒レベルが最も高いレベル5の「避難」に引き上げられたことを受けて、午後10時20分、桜島の有村町と古里町の一部の合わせて33世帯51人に避難指示を出しました。
対象すべての世帯の避難を確認
鹿児島市は、25日午前1時から2回目の対策本部会議を開きました。
この中で、避難指示が出されている桜島の有村町と古里町の一部の合わせて33世帯、51人について、消防が1軒ごとに訪れた結果、24日午後11時56分に対象のすべての世帯の避難を確認したと発表しました。
市によりますと、午前1時時点で桜島の南西側の海岸近くで、南岳山頂火口から4キロ余り離れた避難所の高齢者福祉センター東桜島に23世帯35人が避難していて、避難所以外へ移動した人もいるということです。
気象庁 機動調査班が現地へ
桜島の噴火を受けて、気象庁は25日、機動調査班の職員が現地に入り、噴石や火山ガスなどの観測にあたるということです。
警察 消防 被害の情報なし
鹿児島県警察本部や鹿児島市消防局によりますと、24日午後9時20分の時点で、被害の情報は入っていないということです。
桜島病院 “けが人や搬送の情報ない”
桜島の南西部にある桜島病院によりますと、24日午後9時10分時点で噴火によるけが人や搬送されてくる人の情報はないということです。
専門家「大規模噴火の兆候見られていない」
桜島の噴火活動に詳しい京都大学火山活動研究センターの井口正人教授は「南岳山頂火口の噴火で大きな噴石が火口の東方向に2.4キロほど飛散するのは、これまでも桜島の活動が活発だった1970年代や1980年代にたびたび起きていた」としたうえで、「先週ごろから続く山体膨張を示す地殻変動はまだ解消されていないが、これまでの観測データから大正噴火のような大規模噴火の兆候は見られていない」と指摘しています。
専門家「今後の活動に警戒」
桜島の噴火について、京都大学の石原和弘名誉教授は「最近の桜島の火山活動の中では規模の大きいクラスの噴火で、噴石が2.5キロ付近を超えたことから気象庁は噴火警戒レベルを『5』に上げたと思われるが、桜島ではこれまでも同様の噴火は過去にも発生している」と述べました。
また、桜島で今月に入り、山体膨張を示す地殻変動が観測されていたことについて「今回の噴火で山体がある程度、収縮するものと考えられるが、噴煙が収まったあとに再び山体が膨張するようであれば今回と同じ程度の規模の噴火が起きるおそれがあるため、今後の活動に警戒が必要だ」と話していました。
桜島 最近の活動は
気象庁によりますと、桜島では今月18日から島内に設置している傾斜計と伸縮計で山体の膨張を示すわずかな地殻変動が観測されていて、今月20日午後3時ごろからは変化がおおむね停滞した状態が続いていたということです。
このため鹿児島地方気象台は、多量の噴煙を伴ったり、やや規模の大きな爆火的な噴火が発生する可能性があるとして、火口からおおむね2キロの範囲では大きな噴石や火砕流に警戒するよう注意を呼びかけていました。
桜島 レベル5は2つの噴火を想定
桜島では噴火警戒レベルの導入以降、初めて5に引き上げられましたが、桜島のレベル5は規模の異なる2つの噴火を想定していて、それぞれ警戒の範囲が異なります。
このうち1つが、島内の広い範囲に影響を及ぼすような大規模な噴火で、想定されるのは、100年余り前、1914年の大正噴火クラスの噴火です。
地下から大量のマグマが入り込むことで山腹などから噴火が起きて島内の広い範囲に影響を及ぼすと予想されていて、桜島のある鹿児島市の地域防災計画では住民を島外へ避難させることにしています。
もう一つの想定は「ふだんの火山活動の延長」による噴火です。
山頂で噴火が発生し、噴石や火砕流が人が住んでいる地域やその近くに到達した場合にはその距離に応じてレベル5に引き上げて警戒範囲を拡大することにしています。
このケースでは鹿児島市は全島避難は行わずに、火口に近い一部の地域の住民に島内避難を呼びかけることにしています。
気象庁によりますと、桜島の周辺の地震計や地殻変動などの観測データを分析した結果、今回、島内の広い範囲に影響を及ぼすような大規模な噴火が切迫している状況ではないということです。
おととしには噴石が3キロ超飛び落下
鹿児島県の桜島で噴火警戒レベルが5に引き上げられたのは今回が初めてですが、過去にはレベル5に該当するような噴火も起きています。
おととし6月4日に起きた噴火では、大きな噴石が火口から3キロを超えて飛びました。
噴石は人の住む地域から100メートル余りしか離れていない場所に落下していました。
当時の噴火警戒レベルは3で、噴石が飛んだ地点はレベル5への引き上げの基準に該当する範囲でしたが、気象庁が噴石が3キロを超えて飛んでいることを確認したのは噴火から4日後でした。
気象庁はこの噴火で警戒レベル5に引き上げていませんでしたが、その理由については当初、「噴火そのものがレベル5にあたらず、見逃しでは無い」と説明していました。
しかし、後日に説明を修正し、「噴火直後に噴石を確認していれば、レベル5に引き上げる事例だった」と述べています。
岸田首相 早急な被害状況把握などを指示
気象庁が桜島に噴火警報を発表したうえで、噴火警戒レベルを最も高いレベル5の「避難」に引き上げたことなどを受け、岸田総理大臣は、早急に被害状況を把握すること、地方自治体とも緊密に連携し、人命第一の方針のもと、政府一体となって、登山者や住民の避難など被害防止の措置を徹底すること、それに火山活動の状況について観測を強化し、登山者や住民に対する適時的確な情報提供を行うことを指示しました。
政府「官邸対策室」が情報収集
気象庁が桜島に噴火警報を発表したうえで、噴火警戒レベルを最も高いレベル5の「避難」に引き上げたことを受け、政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設置している情報連絡室を「官邸対策室」に格上げし、関係省庁と連絡を取り合うなどして、情報収集にあたっています。
政府 緊急参集チームを招集
政府は、関係省庁の担当者をメンバーとする緊急参集チームを総理大臣官邸の危機管理センターに招集し、情報の収集と被害の確認などにあたっています。