大谷翔平【詳細】104年ぶり偉業達成 2桁勝利 2桁本塁打
2022年8月10日 19時23分 大谷翔平
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大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が、9日のアスレティックス戦で、今シーズン10勝目をあげ、同じシーズンでの「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成しました。
これは、大リーグでは「野球の神様」と言われるベーブ・ルースが1918年に達成して以来、104年ぶり2人目の快挙です。
試合後、大谷選手は「単純に投打で2つやっている人がいなかったというだけかと思う。それが当たり前になってくればもしかしたら普通の数字かもしれないし、単純にやっている人が少ないということかと思う」と冷静でした。
【試合経過 イニングごとの詳細あり】
試合経過
経過
|123|456|789|計H E
エ |0 0 1| 0 3 0 |1 0 0 |5 10 1
ア |0 0 0| 0 0 0 |0 0 1 |1 6 1
大谷 今季の投手成績 10勝7敗に
大谷選手は9日、相手の本拠地オークランドで行われたアスレティックス戦に先発ピッチャー兼2番 指名打者で出場しました。
大谷選手は160キロ近い速球とスプリットやスライダーなどの変化球を効果的に使って、5回まで毎回ランナーを出しながらも無失点に抑えました。
3回には2アウト一塁三塁のピンチでピッチャー返しの痛烈な打球が2日前に相手ピッチャーに踏まれた左足に当たって、足を引きずりながらベンチに戻りましたが、その後も投げ続けて6回まで無失点に抑えてマウンドを降りました。
球数は91球で打たれたヒットは4本、フォアボールは3つ、奪った三振は5つで、日米通算1000奪三振を達成するとともに今シーズンの奪三振を157として大リーグで自己最多だった昨シーズンを上回りました。
バッターとしては5回の第3打席でセカンドへの内野安打で出塁してウォード選手のスリーランホームランでホームにかえり、7回の第4打席では25号ホームランを打ち、リードを5点に広げました。
大谷選手は大リーグでの通算ホームランが118本となり、日本選手で歴代2位だったイチローさんを抜きました。このあと8回に打席が回ったところで代打を送られて交代し、3打数2安打1打点、フォアボール1つでした。
エンジェルスは5対1で勝って大谷選手が今シーズン10勝目をあげ、同じシーズンでの「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成しました。
これは、大リーグでは「野球の神様」と言われるベーブ・ルースが1918年に達成して以来、104年ぶり2人目の偉業で、今シーズンの成績は10勝7敗、防御率は2.68となりました。
大谷「投打2つやっている人いないだけ」
今シーズン4回目の挑戦で大リーグで初めて10勝目をあげた大谷選手は「いいピッチングをしていれば必ずチャンスはあるかと思っていたが、先制点をしっかり取っていい流れでいけた」と振り返りました。
3回には打球が左足を直撃し「結構まともに当たっていたのでしんどいかなとは思ったけれど、なんとか集中してなるべく多くのイニングは投げられたかとは思う」と話しました。
自身の記録がベーブ・ルースと比較されることについては「もちろん光栄なことだとは思うが、あまりシーズン中に自分の今の数字がどういう印象なのかはあまりわからないので、終わった後にこんなシーズンだったと振り返れればいい」と話しました。
そのうえで「単純に投打で2つやっている人がいなかったというだけかと思う。それが当たり前になってくればもしかしたら普通の数字かもしれないし、単純にやっている人が少ないということかと思う」と104年ぶりの快挙にも冷静でした。
今後に向けては「あまり先を見すぎてもしょうがないし、まずは、あしたまた、いい状態で臨めるようにちゃんと寝て、いいあしたを迎えられるように頑張りたい」と翌日のバッターでの出場を見据えていました。
一方、大リーグでの通算ホームラン数で日本選手で歴代2位だったイチローさんを抜いたことに関しては「タイプ的な違いはあると思うが、そういう選手の記録の一部を超えられてすごく光栄だし、もっともっと打ちたいと思う」と話していました。
試合後の一問一答【全文公開】はこちら
ネビン監督代行「毎回 何か特別なことをしている」
試合後、エンジェルスのネビン監督代行は大谷選手について「彼は毎回、何か特別なことをしている。今夜は彼にとってまた1つ、すばらしい節目だ。きょうは多くの速球を投げ、6回を通して本当にいい仕事をした」とたたえました。そのうえで「私たちが毎晩見ているものを当然と思わないようにしているが、そこに携われるのは、すばらしいことだ」と話しました。
また、ボールが当たった左足について問われると「彼は元気だ。彼と話すが、彼はあすプレーするだろう」と話し、翌日の試合に大谷選手が打者として出場するという見通しを示しました。
チームメートも称賛「これからもやり続けて」
スリーランホームランを打ったエンジェルスのウォード選手は試合後、大谷選手に「おめでとう。これからもやり続けて」とことばをかけたということで「信じられない。彼がピッチングしている時は、あまり球が飛んでこないから野手にとっては退屈な日だけど、彼はマウンドに上がるたびにとてつもないことをする」とジョークを交えながら称賛しました。
また、キャッチャーのスタッシー選手は「今シーズンこれまでそうだったように、彼はきょうもすばらしかった。完全に試合をコントロールしていた。自分でホームランも打って追加点をあげ、いつもチームの役に立っている」と大谷選手の投打にわたる活躍をたたえました。
そして「彼とバッテリーを組むことは本当にすばらしい。私はただ翔平についていっているだけだ。彼はグラウンドで驚くべきことをしている。私たちが見ているのは彼のハードワークのたまものだ」と、3つ年下の大谷選手を絶賛していました。
大谷 日本でも2回達成 日米達成は唯一
大谷選手は2017年まで所属した日本ハムでもプロ野球史上初の「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成していて、この偉業を日米で達成した唯一の選手となりました。
大谷選手はプロ野球、日本ハムでの1年目から投打の二刀流でプレーしました。当初はプロでの二刀流に懐疑的な声も多くありましたが、2年目の2014年にピッチャーで11勝、バッターで10本のホームランを打ち、プロ野球史上初の「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成しました。
2016年にもピッチャーで10勝をあげ、バッターでは自己最多となる22本のホームランを打って2回目の快挙を成し遂げました。
そして、ことし、大リーグで104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成して、この偉業を日米で達成した唯一の選手となり、投打の二刀流で野球の新たな歴史を作っています。
「野球の神様」ベーブ・ルースの104年前の記録は
大リーグでこれまで2桁勝利、2桁ホームランを同一シーズンで達成したのは「野球の神様」と言われたベーブ・ルースだけです。
1918年、当時レッドソックスに所属していたルースは主にピッチャーとしてプレーし、20試合に登板して13勝7敗、防御率2.22の成績をマークしました。当時は指名打者制がなかったため、登板日以外は休養しながら外野やファーストなどで出場し、バッターとしては打率3割、ホームラン11本、61打点で初めてホームラン王のタイトルを獲得しました。
この年は第1次世界大戦の影響でレギュラーシーズンが9月1日に打ち切られ、レッドソックスが行ったのは126試合、このうちルースが出場したのは95試合で、現在の162試合制よりも少ない中での達成でした。
ルースは1919年にも当時のホームラン記録を大幅に更新する29本を打ちましたが、ピッチャーとしては9勝で、2年連続の「2桁勝利、2桁ホームラン」は逃しています。
1920年にヤンキースに移籍してからは、ほぼバッターに専念し、1935年に引退するまでに当時の大リーグ記録の通算714本までホームランを積み重ね、豪快なホームランで人々を熱狂させました。
一方、中心選手だったルースを放出したレッドソックスは1918年を最後に2004年まで実に86年もの間ワールドシリーズ優勝から遠ざかったため、ルースのあだ名をとって「バンビーノの呪い」と言われました。
ルースは子ども好きな性格でも知られ、子どもたちのために熱心にチャリティー活動を続け、重い病気に苦しむ子どもに「君のためにホームランを打つ」と約束し、実際にワールドシリーズでホームランを打つと、その後、子どもが回復したというエピソードが今も語り継がれています。
【ベーブ・ルースの通算成績】
<打者>
打率3割4分2厘 ホームラン714本(歴代3位) 2213打点(歴代2位) 123盗塁 2873安打
<投手>
94勝46敗 防御率2.28 奪三振488
黒人選手の「ニグロリーグ」でも100年前 達成
大谷選手が達成した「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」の記録は、黒人選手のプロ野球リーグでも100年前の1922年に達成されています。大リーグ機構はおととし、黒人選手のプロ野球リーグ「ニグロリーグ」で、1920年から48年にかけてプレーしたおよそ3400人の選手の個人成績を公式記録として認定することを決めています。このリーグでは、1922年にブレット・ローガンがピッチャーとして14勝、バッターとしてホームラン15本を打って「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」を達成しているということです。大谷選手の歴史的な活躍によって、かつての名選手たちの記録も掘り起こされ、脚光を浴びています。
大谷 104年ぶり偉業達成は“フィジカルの向上”
エンジェルスの大谷翔平選手が大リーグでベーブ・ルース以来104年ぶり2人目となる「2桁勝利、2桁ホームラン」の偉業を達成した背景には、日々の全力プレーを支えるフィジカルの向上がありました。
大谷選手は昨シーズン、ピッチャーとして9勝2敗、バッターとしてホームラン46本とすばらしい成績を残しましたが、10勝に王手をかけてから登板した終盤の3試合で勝ちがなく、「2桁勝利、2桁ホームラン」の偉業は惜しくも逃しました。
今シーズンも2桁ホームランは開幕から49試合目の5月29日に軽々とクリアし、この試合でも25号ホームランを打ちました。
ピッチャーとしては開幕から2連敗を喫したものの、その後は持ち直して6月9日のレッドソックス戦からは自身6連勝で一気に勝ち星を伸ばし、オールスターゲーム前の7月13日に早くも自己最多に並ぶ9勝目をあげました。
去年、10勝に王手をかけたのはシーズン終盤の9月3日でしたが、ことしは前半戦で9勝をあげ、ふた桁勝利は確実な状況でした。
今シーズンの大谷選手はストレートやスライダー、スプリットの球種で2キロから4キロ程度球速が上がっている上、ストライク先行のピッチングで長いイニングを安定して投げられるようになりました。大谷選手自身も「何も不安なく毎試合全力でプレーできるフィジカルのレベルが整っている」と充実ぶりを話すほどで、大リーグ1年目の2018年9月に受けた右ひじのトミー・ジョン手術から3年以上が経過し、ようやく不安なく腕を振れるようになったことがピッチャーとしてのパフォーマンスを大きく押し上げました。
また「相手の本拠地に弱い」という弱点も今シーズンは克服の兆しを見せました。昨シーズン、大谷選手は本拠地では6勝0敗、防御率1.95と圧倒的な強さを見せていた一方で、相手の本拠地での登板は3勝2敗、防御率5.02と苦手にしていました。
今シーズンも相手の本拠地では4月のレンジャーズ戦や先月のブレーブス戦でそれぞれ6失点を喫して負け投手になる試合もありましたが、全体で見れば相手の本拠地で5勝3敗、防御率3.18と向上しました。今シーズン初勝利をあげたのも6回をヒット1本、無失点に抑えたヒューストンでのアストロズ戦、そして節目の10勝目をあげたのもオークランドでのアスレティックス戦でした。
ルースは、レッドソックスに所属していた1918年に23歳でピッチャーとして13勝、バッターとしてホームラン11本を打って「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」を達成しました。
ルースが記録を達成したのは10勝目をあげた1918年8月8日で、それから104年と1日がたった2022年8月9日に日本から来た28歳のスターが「野球の神様」以来、大リーグ史上2人目の偉業を成し遂げました。
また大谷選手はここまで11盗塁を決めていて、ルースも達成していない「2桁勝利、2桁ホームラン、2桁盗塁」という前人未到の記録を作り、また1つ、大リーグの歴史を塗り替えました。
大谷翔平 昨季はシーズンMVPも
大谷翔平選手は岩手県奥州市出身の28歳。2012年、岩手・花巻東高校3年の時に投手として球速160キロ、打者として高校通算56本のホームランを打って注目され、ドラフト会議の直前にはプロ野球を経ずに大リーグに挑戦する意向を表明しました。
しかし、ドラフト1位で指名した日本ハムから、大リーグでプレーする夢を後押しして投手と野手の「二刀流」で育成するという異例の提案を受けて入団を決意し、2年目の2014年にプロ野球史上初めてシーズンの「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成しました。
翌年には「最多勝」、「最優秀防御率」、「勝率第1位」の3つのタイトルを獲得、2016年にはプロ野球最速の165キロをマークして史上初めて投手と指名打者の2部門でベストナインに選ばれました。
エンジェルスに移籍し大リーグ1年目の2018年は投手として4勝、打者としてホームラン22本を打って新人王に輝きましたが、その年のオフに右ひじのじん帯を修復するトミー・ジョン手術を受けました。
翌2019年は打者に専念し、日本選手で初めてサイクルヒットを達成して打率2割8分6厘、ホームラン18本をマークしましたが、終盤の9月に左ひざを手術してシーズンを終えました。
新型コロナの影響で60試合の短縮シーズンだった2020年は投手では0勝1敗、打者でも打率1割9分、ホームラン7本に終わり、長くけがに苦しんだことからアメリカのメディアが「二刀流を諦めるべき」と大谷選手を特集するなど逆風にさらされました。
しかし、翌年の2021年、開幕から投打にフル回転し、投手として9勝、156奪三振、打者としてホームラン46本、100打点、26盗塁と歴史的な活躍を見せ、日本選手では2001年のイチローさん以来となるシーズンMVP=最優秀選手に満票で選出されました。