ことしのノーベル生理学・医学賞に「人類の進化」の研究者
2022年10月3日 20時17分 ノーベル賞2022
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ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に、絶滅した人類の遺伝解析と人類の進化に関する研究で大きな貢献をした、ドイツの研究機関の研究者で、沖縄科学技術大学院大学にも在籍するスバンテ・ペーボ博士が選ばれました。
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スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の3日午後6時半すぎことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者を発表しました。
受賞が決まったのは、スウェーデン出身で、ドイツのマックス・プランク研究所のスバンテ・ペーボ博士です。
ペーボ博士は4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていたDNAを解析し、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較しました。
そして、ホモ・サピエンスは絶滅した人類のゲノムを引き継いでいることを明らかにし、人類の進化の過程を理解する上で大きな貢献を果たしたとしています。
ペーボ博士はOIST=沖縄科学技術大学院大学の客員教授も務めています。
“ペーボ博士 とても喜んでいた”
選考委員会の担当者によりますと受賞の知らせはペーボ博士に電話で伝えたということです。
このときのようすについて「彼は圧倒され、ことばを失いそしてとても喜んでいた。妻に話してもいいかと聞かれたので、私は大丈夫だと答えた」と述べ、博士が受賞について感激していたことを明らかにしました。
沖縄科学技術大学院大学でも研究
スバンテ・ペーボ博士は、2020年から沖縄科学技術大学院大学の客員教授を務めています。
大学によりますと、ペーボ博士は沖縄科学技術大学院大学ではネアンデルタール人やデニソワ人から私たちホモ・サピエンスに受け継がれたDNAや、現代人にしか見られないDNAの機能を解明する研究を行っているということです。
ペーボ博士は古代人の骨からDNAの断片を抽出して解析する遺伝学的手法を取り入れて世界で初めてネアンデルタール人のゲノム解読に成功したことなど、今の人類の誕生や進化の解明に新たな光を当てたとして、2020年の「日本国際賞」に選ばれ、ことし4月に東京で開かれた授賞式に出席しています。
新型コロナ重症化リスクと遺伝子の関係も研究
ペーボ博士は、ネアンデルタール人から受け継がれた遺伝子が、新型コロナウイルスの重症化リスクにも関わっていることを国際的な科学雑誌「ネイチャー」や「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しています。
沖縄科学技術大学院大学によりますと、ペーボ博士の研究チームは、おととし9月、新型コロナの患者3000人以上を対象に分析した結果、重症化リスクを増加させることが確認された遺伝子が、ネアンデルタール人から引き継がれたもので、この遺伝子を持つ人ではリスクが倍増すると、「ネイチャー」に発表しました。
また、去年2月には新型コロナに感染して重症化した患者2200人余りの分析で、同じくネアンデルタール人から引き継がれた、別の遺伝子がある人では、逆に重症化が22%抑えられることを明らかにしたと「アメリカ科学アカデミー紀要」に報告しました。
大学のウェブサイトでペーボ博士は「およそ4万年前に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の私たちに良い意味でも悪い意味でも影響を与えているのは驚くべきことです」とコメントしています。
Posted at 2022/10/03 21:15:51 | |
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