
中国 習近平国家主席をトップとする3期目の最高指導部が発足
2022年10月23日 19時05分 中国
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中国では23日、共産党の重要会議が開かれ、異例の3期目となる習近平国家主席を党のトップとする新たな最高指導部が発足しました。
習主席は、指導部のメンバーを関係の深い人物で固め、みずからへの権力集中が一層、進んだと示した形です。
中国では23日、中国共産党大会の閉会を受けて、重要会議「1中全会」が開かれ、習近平国家主席を含む最高指導部、政治局常務委員会のメンバー7人が選ばれました。
習主席は現在69歳で、引退年齢の慣例を破り、党トップの総書記に選ばれ異例の3期目に入りました。
新たな最高指導部は日本時間の23日午後1時すぎ、内外のメディアの前に姿を現しました。
新たな最高指導部7人がメディアの前に
新たな最高指導部には習主席のほか以下の6人が選ばれました。
▽李強氏。習主席が浙江省のトップを務めた際に省の幹部らの取りまとめを行う秘書長として支え、現在は上海市トップを務めています。
▽趙楽際氏。党の幹部の汚職などを摘発する中央規律検査委員会トップを務めました。
▽王滬寧氏。習主席のブレーンとしての役割を担ってきました。
▽蔡奇氏。福建省と浙江省で長年にわたって習主席の部下として支え、北京市トップの書記を務めています。
▽丁薛祥氏。習主席を補佐して党の事務を取りしきる中央弁公庁トップの主任を務めています。
▽李希氏。広東省トップの書記を務め、新たに中央規律検査委員会のトップに就任。
また、党指導部で最高指導部を含む政治局委員は、これまでより1人減って今回24人となり、習主席と関係が近いとされるメンバーが多く選ばれました。
このうち、今月末までに69歳になる外相の王毅氏が引退年齢の慣例を破って政治局委員に昇格し、楊潔※チ氏の後任として外交を統括するとみられます。
一方、副首相を務める胡春華氏は政治局委員に再選されませんでした。
胡氏は、胡錦涛前国家主席や李克強首相に近いとされ、習主席らの次の世代を担うホープの1人とも言われていましたが、降格した形です。
習主席は、指導部のメンバーを側近や地方で勤務してきた時の部下など関係の深い人物で固め、みずからへの権力集中が一層、進んだと示した形で、今後、長期間にわたり、最高指導者にとどまることを視野に入れているとも指摘されています。
※チ=竹かんむりに褫のつくり。
習国家主席 6人のメンバーと共に会見
習近平国家主席は、新たに最高指導部に選出された6人のメンバーを率いて、人民大会堂に設けられた記者会見場に姿を見せました。
そして、みずからが引き続き、党トップの総書記を務めると述べたうえで、新たなメンバーを紹介しました。
そのうえで「われわれはみずからの使命と責任を忘れず忠実に職務を果たし、党と人民の負託に決して背かない」などと、3期目に向けた決意を示しました。
さらに「中国式現代化によって、中華民族の偉大な復興を全面的に推進する。われわれは常に意気揚々とした精神状態で社会主義現代化国家を築かなければならない」と述べ欧米とは異なる独自の発展モデルを目指す「中国式現代化」を推し進める姿勢を強調しました。
副首相務めた胡春華氏は異例の降格に
中国共産党の指導部で最高指導部を含む政治局委員は、これまでよりも1人減って今回24人となり、習近平国家主席と関係が近いとされるメンバーが多く選ばれました。
一方、副首相を務め、これまで政治局委員だった胡春華氏(59)は今回、選ばれず降格した形です。
胡氏は、共産党の青年組織、共青団=共産主義青年団の出身で胡錦涛前国家主席や李克強首相に近いとされ、習主席らの次の世代を担う「第6世代」のホープの1人とも言われていました。
胡氏は、これまで習主席への忠誠を示す立場を明確にしてきました。
胡氏は、党の重要な政策や人事を決める新しい中央委員205人には選ばれていますが、今回の党大会で最高指導部のメンバーに入り、次の首相になる可能性も伝えられていただけに異例の降格となりました。
何立峰氏 経済や米との貿易交渉など担当か
中国共産党の指導部でトップ24人の政治局委員には、習近平国家主席が沿海部・福建省で勤務していた頃の部下の何立峰氏(67)が昇格しました。
何氏は、経済政策を統括する、国家発展改革委員会のトップを務めていて、香港メディアは今回、政治局委員に選ばれなかった劉鶴副首相の後任として経済やアメリカとの貿易交渉などを担当するという見方を伝えています。
何立峰氏は、67歳。
およそ25年にわたって沿海部・福建省でキャリアを積み中心都市・福州市やアモイ市のトップなどを歴任しました。
何氏は、習近平国家主席が、福建省で勤務していた頃の部下で、習主席との関係が近いと言われています。
何氏は、2009年に、当時、急速に経済発展していた天津市の幹部となったあと、2014年に経済政策を統括する、国家発展改革委員会の副主任になりました。
2017年には、国家発展改革委員会トップの主任に昇格し、今も習主席の地方視察や外国出張にはほぼ同行しているとみられます。
香港の有力紙「明報」は経済やアメリカとの貿易交渉などを担当する劉鶴副首相の後任の有力候補だとする見方を伝えています。
王毅氏 外交を統括か
中国共産党の指導部でトップ24人の政治局委員には、今月末時点で69歳の外相の王毅氏が「68歳で引退する」という慣例を破って昇格しました。
王氏は、副首相級の国務委員と外相を兼任していて、これまで習主席の外国訪問にはほぼ同行しているとみられます。
今回、政治局委員に選ばれなかった楊潔※チ氏の後任として外交を統括するとみられます。
王毅氏は、北京出身で、文化大革命の時期に黒竜江省の貧しい農村での生活を命じられ、7年余りを過ごしました。
文化大革命のあと再開された大学入試で北京の大学に入学し、日本語を専攻しました。
卒業後は中国外務省に入り、政府要人のスピーチを起草する名文家として知られ、堪能な日本語をいかして日本課長も務めています。
2004年から3年間、駐日大使を努め、当時の小泉総理大臣の靖国神社参拝などで日中関係がぎくしゃくする中、日中関係の立て直しに尽力し、2006年10月の安倍総理大臣の中国訪問につなげました。
中国外務省の中でも日本の事情に精通している人物の1人とされています。
山登りが趣味で、富士山など日本各地の名山を登っています。
また、駐日大使になる前の外務次官時代には、北朝鮮の核問題を話し合う6か国協議の初代議長を務めたほか、2008年からは台湾問題を担当する閣僚として、経済面を中心に台湾との交流を積極的に進めました。
2018年には中国で外交を統括する副首相級の国務委員に昇格し、外相を兼任しています。
王氏は台湾の情勢や歴史問題をめぐって日本をけん制するなどしていて、ことし8月にカンボジアで開かれた東アジアサミットの外相会議では、予定されていた林外務大臣との日中外相会談を直前にキャンセルしています。
※チ=竹かんむりに褫のつくり。
政治局委員に女性は選ばれず
中国共産党の指導部でトップ24人の政治局委員には、今回、女性が選ばれませんでした。
今回の党大会では、これまでの政治局委員の中で唯一の女性だった孫春蘭副首相(72)が再選されませんでした。
政治局委員に女性が、選ばれなかったのは1997年以来、25年ぶりです。
中国軍 制服組トップに台湾方面で実務経験がある幹部を起用
23日に開かれた「1中全会」では、習近平国家主席が、中国軍を統括する「中央軍事委員会」のトップである主席を、引き続き、務めることも決まりました。
また、主席に次ぐポストで、制服組トップの副主席の2人には習主席の信頼が厚いとされる陸軍出身の張又侠氏(72)が引退年齢の慣例を破って、再任されたほか、中国軍で東部戦区の司令官を務めていた何衛東氏(65)が新たに選出されました。
東部戦区は、台湾方面などを管轄する戦区で、ことし8月にアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことに反発して大規模な軍事演習を行いました。
また、香港メディアは、何氏について、習主席が長くキャリアを積んだ沿海部・福建省の部隊でも要職を歴任し、習主席との関わりが深いと伝えています。
台湾方面で実務経験がある幹部を、制服組トップに起用したことで、習主席が強い意欲を示す台湾統一に向けた態勢を強化するねらいがあるという指摘も出ています。