ローカル線...「特色」輝け 福島県内、利用客増へあの手この手
2022年12月02日 09時10分
新型コロナウイルスの感染拡大で観光客の利用が減少する中、野岩鉄道では車両の改修で利用者の増加を図る。写真は改修車両の同型車両=南会津町・会津高原尾瀬口駅
地域の足として欠かせないローカル線が、生き残りに向けて奔走している。県内でも少子高齢化や新型コロナウイルス感染拡大、さらには度重なる災害などでローカル線を取り巻く状況は厳しさを増す。一方で10月のJR只見線全線再開により、その魅力にも光が当たっており、運行各社は利用者増に向けて知恵を絞る。
改修費ネット調達
「驚きのスピードで改修費用が集まった。多くの方々に愛されている路線だと再認識させられた」。首都圏と南会津町をつなぐ野岩鉄道(栃木県日光市)の担当者は、驚きを隠さない。新型コロナウイルスの感染拡大で厳しい状況が続いていた今年8月、開業から運行する車両「6050型」の改修に向けた初のクラウドファンディング(CF)を実施、わずか約1カ月で目標額の1500万円が集まった。
同線の利用者数は減少の一途をたどる。1991(平成3)年の約117万人をピークに新型コロナ禍前は三十数万人程度、昨年度は約17万6000人に落ち込んだ。打開策としたのが、86年から運行する6050型の改修だった。
ボックスシートが基本の6050型は今春のダイヤ改正で、運行しているのは野岩鉄道のみとなった希少性の高い車両だ。改修では、車内に運転気分を味わえる模擬運転台や家族がくつろげる畳スペースなどを設ける予定で、同社は「家族で乗って楽しい車両」を目指すという。追加募集も行い、CFの総額は2000万円を超えた。改修した車両の運行は早ければ本年度中の予定で、同社担当者は「雪が降るこれからが(鉄道での)旅シーズン」と意気込む。
乗り放題切符販売
3月の地震で被災し、6月末に全線復旧した阿武隈急行(伊達市)は、1日から福島―槻木駅(宮城県)間を自由に乗り降りできる「復旧応援ありがとうきっぷ」の販売を始めた。このほか運転免許を返納した人が対象の割引や自転車を持ち込めるサイクルトレインの導入などで利用促進を図っており、担当者は「度重なる災害と新型コロナで厳しい状況は続いているが、地域密着のイベントや得な切符で誘客につなげたい」と話す。
ただ、少子高齢化で沿線の人口は減り続けており各路線とも利用者減に歯止めはかからない。JR東日本が11月発表した地方路線の収支では、収支を発表した路線のうち県内4路線9区間が赤字だった。会津若松市と南会津町間を走る会津鉄道(会津若松市)の渡部浩二総務企画部長は「沿線人口が減少しており、何かしらの取り組みをして地方路線を守る必要がある」と指摘する。
ライブカメラ映像
会津鉄道では、地酒やハイキングなどを組み合わせたイベント列車が好評だ。そのほかにも下郷町が設置したライブカメラの映像をホームページから確認できるようにするなど独自の取り組みも続ける。ただ、列車のスペースを活用した荷物輸送サービスは、新型コロナ禍の影響もあって昨年と今年の利用者はゼロ。渡部部長は「ただ運行するだけでなく、地方の特色を生かしたイベントや誘客方法を考えないといけない」と訴える。
Posted at 2022/12/03 10:03:53 | |
トラックバック(0) |
鉄分補給 | 日記