「相馬野馬追」24年から日程変更 5月末開催有力、酷暑を考慮
2023年08月11日 09時55分
国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の開催日程についての検討会の初会合が10日、南相馬市役所で開かれ、これまで「7月最終土、日、月曜日」としてきた日程を来年から変更し、5月末~6月初旬に移行することを決定した。関係者によると、5月末の開催が有力という。明治に復活して以降、7月以外の開催は例がなく、相双地方の伝統行事は大きな転換を迎える。
日程変更は2011年以来、13年ぶり6回目。変更は当初、「最短で2年後」としていたが、今年の野馬追で熱中症による救護者が相次ぎ、馬2頭が死んだことなどを受け、関係者の間に危機感が広まり、変更を前倒しした。
検討会には約20人が出席し、来年からの日程変更を満場一致で決定した。お盆明けに2回目の会合を開き、具体的な日程を協議する。
ただ、新日程の決定には野馬追を重要無形民俗文化財と指定する文化庁の了解が必要になる。南相馬市によると、すでに文化庁から「関係者の理解を得て、伝統文化を守ること」との指摘があるという。検討会は文化庁や県に理解を求めながら、年内に新日程を最終決定する。
執行委員長を務める門馬和夫市長は「人と馬が一体となって続いてきた他に例のない行事。伝統文化を途絶えさせないためにも、日程変更が必要と判断した」と述べた。
「野馬追」継続のため工夫
当初は最短でも2年はかかるとされていた相馬野馬追の日程変更は、10日の検討会で酷暑を避けた5月末~6月初旬、しかも来年からの早急な導入が決まった。関係者の間では「武者にとっても、馬にとっても過酷な状況だった」と、今年の猛暑が決断を早めたと指摘する声が多い。一方で伝統行事として地域ぐるみでの協力体制を整えるには、慎重な議論も必要だとする指摘も上がっている。
猛暑時における実施の影響については、今年の野馬追の現場でも聞かれていた。雲雀ケ丘祭場の神旗争奪戦に出場した武者は「馬がけいれんを起こしながら走っていた。馬の祭りなんだから馬を大切にしなきゃだめだろう」と訴えていた。また別の参加者は「武者行列の途中で脱水症状になりかけた。身をもって酷暑を体験した」と明かす。
そのため、急転直下ともみえる決断にも理解を示す騎馬武者は少なくない。あるベテランは「執行部の決意が見て取れる。日程を変更しても伝統行事として継続していくために工夫していくことは可能だ」と受け止める。
野馬追に関わる獣医師は「馬は暑さに弱く、寒さに強い」、観光業界の関係者も「暑さが和らぐことで観光客が来やすくなると思う。日程変更はプラスと思う」と語る。
一方、決断の速さを懸念する声もある。ある関係者は「2011年の日程変更の議論で『変更するならば5月』という案があったが、『7月最終土、日、月曜日』になった経緯があった。前回の議論の時から暑さを避けることもできた」と指摘する。
5月や6月は多くの学校行事と重なることから、地域ぐるみの開催に影響するとの見方もある。学校だけではなく野馬追の実施には、行列の構成などで地元企業の協力も欠かせない。「野馬追を支える多くの人の意見を十分に聞き取って決めてほしい」。相馬市の関係者は心から訴えた。
Posted at 2023/08/11 10:41:49 | |
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