
終戦から79年 武道館で全国戦没者追悼式
2024年8月15日 13時34分
終戦から79年を迎えた15日、およそ310万人の戦没者を慰霊する政府主催の全国戦没者追悼式が都内で行われました。
目次
岸田首相「国際秩序の維持・強化を進め 課題の解決を」
天皇陛下のおことば 全文
東京 千代田区の日本武道館で開かれた追悼式には全国から遺族の代表などおよそ4000人が参列しました。
ことしは新型コロナウイルスの感染拡大以降、最も多くの遺族が参列し、5年ぶりにすべての都道府県から遺族が参加しました。
天皇陛下が皇后さまとともに菊の花で飾られた式壇に着かれたあと、参列者が国歌を斉唱しました。
続いて岸田総理大臣が式辞を述べました。
岸田首相「国際秩序の維持・強化を進め 課題の解決を」
岸田総理大臣は式辞で戦争の惨禍を二度と繰り返さないという誓いを継承し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を進め、世界が直面する課題の解決に取り組む必要があるという認識を示しました。
この中で岸田総理大臣は「今日のわが国の平和と繁栄は戦没者の尊い命と苦難の歴史の上に築かれたものであることを私たちは片ときたりとも忘れない。改めて衷心より敬意と感謝の念をささげる」と述べました。
その上で「戦後、わが国は一貫して平和国家として歩みを進め、歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきた。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。戦後79年がたつが、この決然たる誓いを世代を超えて継承し、貫いていく」と述べました。そして「いまだ悲惨な争いが絶えることのない世界にあって、わが国は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を進め、『人間の尊厳』を中心に据えながら、世界が直面するさまざまな課題の解決に全力で取り組み、国の未来を切りひらいていく」と強調しました。
そして正午になると参列者全員で1分間の黙とうをささげました。
このあと天皇陛下が「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります」とおことばを述べられました。
天皇陛下のおことば 全文
本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来79年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います。
ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
父が戦病死の遺族「戦争の悲惨さ 平和の大切さ 今こそ語り継ぐ」
さらに遺族を代表し、父親が中国で戦病死した福島県の安齋満さん(86)が「平和の大切さは、私たち遺族が身に染みて知っております。世界では、いまなお戦争が絶えることがなく、多くの戦争犠牲者が出ており、一日も早く平和が実現することを祈るばかりです。戦争の悲惨さと平和の大切さを、今こそ、語り継いでいかなければなりません。記憶の薄れゆく今日にあって、教訓を伝えていく機会が失われつつある現在、語り部として、子・孫へと継承していくことが大切であり、遺族の使命でもあります」と追悼の辞を述べました。
最年長97歳の遺族「平和の実現に力を」
最年長の参列者として追悼式に出席した北海道に住む97歳の長屋昭次さんは、戦争で8歳年上の兄の保さんを亡くしました。保さんは昭和20年に肺結核のため出征先の中国・天津で戦病死しました。
長屋さんは「兄は体が弱く、これほど体の細い兄が兵隊として行かなければならないことを知った時には子ども心にかわいそうだなと思いました。
兄は私たち兄弟の面倒をよく見てくれていたので感謝の気持ちは今も忘れません。
ことしで97歳になり、歩くのもやっとのような状態ですが、兄や戦争で亡くなった先輩たちを慰霊することが生き残った私の使命だと思い、生きている限り、何とか追悼式には参加したいと思います」と話していました。
また、いまも世界で争いが続いている現状について「私は空襲を受けたときの爆音など、あの怖さを忘れることができません。ただ、いまは戦争の怖さを知らない人たちが多いです。戦争は絶対にやってはいけないし、世の中が落ち着いてほしいと思っています。来年は戦後80年ですが、政治家には戦争の方には決して向かわず、平和の実現に力を入れてほしい」と話していました。
追悼式には若い世代も参列
追悼式には戦争の体験を直接知らない18歳未満の若い世代も遺族として参列しています。
このうち、最年少となる3歳の都内に住む酒井清凪さんは高祖父の市丸利之助さんが硫黄島で戦死しました。
清凪さんは祖母や母親とともに追悼式に参列し、母親の星来さん(29)は「息子はまだ戦争のことを分かっていないと思うが、追悼式に出席するとは伝えていて、これから少しずつ分かっていくかなと思います。息子の高祖父は当時から恒久的平和を考えていた人で、安心して生活できる今の環境が当たり前でないことを伝えていきたいと思う」と話していました。
また、京都府から参列した12歳の堤帆南さんは、曾祖父が朝鮮半島で戦病死しました。
堤さんは「ひいおじいさんはシベリアの寒いところで働かされて病気になり、朝鮮半島に連れていかれ、栄養失調で亡くなったと聞きました。苦しかったと思うので、きょうはここで、戦争で亡くなった人の気持ちを考えたい」と話していました。
上皇ご夫妻と愛子さま 御所で黙とう
宮内庁によりますと、上皇ご夫妻は、東京・港区の赤坂御用地にあるお住まいの仙洞御所で、テレビを通じて戦没者追悼式をご覧になりました。そして、正午の時報とともに黙とうをささげられたということです。
また、天皇皇后両陛下の長女の愛子さまも、皇居にあるお住まいの御所で黙とうされたということです。
岸田首相 千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花
岸田総理大臣は政府主催の「全国戦没者追悼式」に出席するのに先立ち、東京 千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、花束をささげて戦争で亡くなった人たちの霊を慰めました。
千鳥ヶ淵戦没者墓苑には第2次世界大戦で海外の戦地などで戦死し、名前が分からないため、遺族に引き渡すことのできない遺骨が納められています。
岸田総理大臣は花束をささげて深々と頭を下げ戦争で亡くなった人たちの霊を慰めました。
Posted at 2024/08/15 14:05:29 | |
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