
コメ「概算金」基準を4000円引き上げ JA全農福島県本部
09月06日 18時07分
JA全農福島県本部はことし生産されるコメについて、農協が農家に前払いする「概算金」の基準を去年から4000円引き上げることを決めました。
記録が残る平成6年以降で最大の上げ幅で、新米の価格も値上がりする見込みです。
「概算金」はJAがコメ農家に支払う前払い金で、JA全農福島県本部は6日の会議でことしの基準を決定しました。
それによりますと、主力品種の「コシヒカリ」の1等米60キロあたりで、会津産は1万6800円、中通り産と浜通り産は1万6400円で、いずれも去年より4000円引き上げました。
記録が残る平成6年以降では、最大の上げ幅だということです。
JAは、ここ数年で肥料などの生産コストが上昇している一方でコメの価格は低い水準にあり、農家がコメ作りを続けることができる水準ではなかったことや、「コメあまり」と言われてきた需要と供給のバランスが改善してきたことを踏まえ、引き上げを決めたということです。
一方、今回の引き上げだけでは生産コストの上昇を十分に補えず、農家が安心してコメづくりを続けていくための水準に達したとは言えないとしています。
概算金は、業者間の取り引きの目安となることから、これから流通が本格化する新米の価格も値上がりが見込まれ、消費者にとっては大きな負担となりそうです。
【県内のコメ農家は】
JA全農福島がことし生産されるコメについて農協が農家に前払いする「概算金」の基準を去年より4000円引き上げることを決めたことを受けて県内のコメ農家からは歓迎する声が聞かれました。
大玉村の農業法人の専務、伊藤一男さん(71)は、会社の50ヘクタールの田んぼで年間300トンのコメを生産しています。
この農業法人では毎年、早場米やコシヒカリなどを首都圏に出荷していますが、肥料や資材などの高騰で、ことしは栽培にかかった費用が去年と比べて全体で2割から3割ほど増えているということで、ことし、新米の収穫が本格化するのを前に概算金の引き上げを歓迎しています。
伊藤さんは「ある程度評価はできる。今までの値段より頑張ってくれたと思う。ただ、4000円上がったからこれで安心して農業経営ができるとは一概に言えない。これからのことも考えればもっと上がってもいいと思う」と話していました。
その上で「日本の農業を守り、農家が安心してコメ作りができる環境作りのため、消費者にも価格が上がることに理解が広がってほしい」と話していました。
【スーパーでは】
郡山市のスーパーでは、先月中旬からコメが品薄となり、卸業者に注文しても希望する量が確保できない状況が続いています。
郡山市のスーパー「ブイチェーン荒井店」では、現在、週に数回、わずかな量のコメの入荷があり、5日入荷した20袋は当日に売り切れ、6日も急遽、25袋を確保できましたが、次々と売れていました。
入荷が安定しないため、コメの売り場には餅やパックごはんを並べていて、餅の売上は、例年に比べ4.5倍に、パックご飯の売上は2倍に増えているということです。
先週から新米が少しずつ出回り始めていますが、仕入れ価格が大幅に上昇していて、6日入荷した茨城県産のあきたこまちの新米は5キロで税込み3219円と、去年より1000円前後高くなっています。
コメを購入した75歳の男性は「お店を数軒回ってようやく買えて安心しました。こんなことはこれまでにありませんでしたが、毎日パンを食べるわけにもいかないので、コメが買えないと困ります」と話していました。
ブイチェーン荒井店の須藤健一店長は「日本人の主食のコメは、欲しい時に買える状況にしないといけないし、店としてはできれば安く提供したいが、新米の価格が通常よりもかなり高くなっている状況だ」と話していました。
【民間のシンクタンクは】
コメをめぐる状況について、郡山市出身で東京にある民間のシンクタンク「流通経済研究所」で首席研究員を務める折笠俊輔さんに聞きました。
折笠さんは、現在の状況について「去年のコメは、記録的な猛暑の影響もあって精米する過程で割れてしまうものが多かった。それによってコメの供給量が減っていたところに、インバウンドの回復などによる需要の増加が重なった。さらに、南海トラフ地震や台風への備えとして備蓄する動きが加わり、報道を目にして買いだめをする消費者が増えたことも拍車をかけ、結果として一時的に店頭のコメが不足する状況となっている」と分析しています。
今後の品薄の解消の時期については「現在も飲食店向けやコンビニのおにぎりなどはしっかり流通していて、本質的にコメが足りないという状況ではなく、“平成の米騒動”とは様相が異なる。福島県では9月中旬から稲刈りが本格化するが、遅くても10月中旬ころには十分な量の新米が店頭に並ぶのではないか」と指摘しています。
また、価格の動向については、「隣県でも福島県と同様に概算金が大幅に引き上げられていることを踏まえると、店頭の小売価格は1キロあたり200円程度値上がりするとみられる。安価なコメではこれまで、5キロあたり2000円を割る価格帯だったが、2500円から3000円の間で推移することになるのではないか」として、品薄が解消されても割高の状況が続くとしています。
その一方で「光熱水費や肥料・農薬、人件費などの原価が上がり、コメの生産コストは上昇している。生産者には、収穫量を増やしたりコストを下げたりする努力を続けてほしいが、原価を回収できないような価格になってしまうと、若い担い手がいなくなってしまう。10年後や20年後も福島県でコメを作り続けてくれる生産者を確保するためにも、こうした状況だからこそ積極的にコメを食べて需要を支え、農家に安心して生産を続けてもらうことも重要だ。それが結果的に価格の安定にもつながるのではないか」と話していました。
Posted at 2024/09/07 08:03:07 | |
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