
東電 福島第一原発 核燃料デブリ取り出し “着手した”と発表
2024年9月10日 11時47分
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東京電力は10日午前、福島第一原子力発電所で、装置の取り付けミスにより延期されていた核燃料デブリの試験的な取り出しに2号機で着手したと発表しました。
事故の発生から11日で13年半となる中「廃炉最大の難関」に向けた取り組みがようやく始まりました。
福島第一原発の1号機から3号機の格納容器内部には、2011年3月の事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリがあわせておよそ880トンあると推定され、極めて強い放射線を出し続け容易に近づけないことから、その取り出しは「廃炉最大の難関」とされています。
8月22日に事故後初めてとなる試験的な取り出しに、2号機で着手する計画でしたが、当日の準備作業で取り出し装置を格納容器内に押し込むためのパイプが誤った順番で並べられているミスが見つかり、直前で延期されていました。
東京電力は再発防止策をとった上で、10日午前6時半すぎに装置を押し込む作業を再開し、午前7時20分に格納容器の内部に通じる配管に装置を入れて、核燃料デブリの試験的な取り出しに着手したと発表しました。
計画では、細いパイプ状の装置の先端からケーブルで下ろした器具で格納容器の底にあるデブリを数グラムつかみ回収することになっていて、作業はほとんどが遠隔操作で行われます。
東京電力は、前回のミスも踏まえ慎重に状況を確認しながら進めるため、完了までには、順調に進んでも2週間程度かかるとしています。
核燃料デブリの取り出しは、2021年までに始めるとした当初の計画から3年遅れていますが、政府や東京電力は、試験的な取り出しで得られる核燃料デブリの性質や状態などのデータは、本格的な取り出し工法の検討など、今後の廃炉を進める上で欠かせないとしていて、成否が注目されます。
試験的な取り出しの計画詳細は
今回の試験的な取り出しで、東京電力は、2号機の原子炉を覆う格納容器の底にある核燃料デブリのうち、小石状のものをひとつぶ取り出す計画です。
この際、放射線量が高くなりすぎないよう重さを3グラム以下に抑えるとしています。
取り出しには専用に開発した「テレスコ式」と呼ばれる伸縮式の細いパイプ状の装置を使います。
はじめに、格納容器の内部に通じる直径60センチメートルの配管の中に装置を入れ、21メートルまで徐々に伸ばしていきます。
このとき、配管の手前まで装置を進めたうえで、後ろに5本のパイプを継ぎ足して押し込んでいく仕組みになっていますが、8月22日の準備作業では、このパイプを接続しようとしたところで5本の並び順が間違っていることがわかり、作業が中断されました。
東京電力は、パイプの順番を間違わないよう色分けしたテープを貼るなど対策を取ったほか、現場の準備に東京電力の社員を立ち会わせて確認を徹底したとしています。
格納容器の内部まで装置を伸ばして入れたあとは、先端部分からデブリをつかむ器具を数メートル下までケーブルでつり下ろし、底に堆積しているデブリをつかんで回収します。
格納容器の外に回収したデブリは、放射線量が基準を下回っていることを確認した上で容器に入れ、一連の取り出し作業は完了となります。
現場の放射線量が高く人が容易に近づけないことから、ほとんどの作業は遠隔操作で行われ、器具の先端についたカメラで状況を確認しながら装置を進めます。
さらに、作業員の負担や被ばく線量を考慮し、1日の作業時間は午前中の数時間に抑える予定です。
こうした事情に加え、前回のミスも踏まえて慎重に状況を確認しながら進めるため、東京電力は作業を完了するまでには、順調に進んでも2週間程度かかるとしています。
その後は、取り出したデブリを茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の研究施設に運び、半年程度かけて詳しい分析を進める予定です。
東京電力の担当者は午前10時からの会見で、着手を発表した上で「引き続き廃炉の貫徹へ向け、安全を最優先に緊張感をもって取り組んでいく」と話しました。
林官房長官「安全かつ着実に進めていく」
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「試験的取り出しで得られる原子炉内の状況や燃料デブリの性状などに関する知見も踏まえ、作業を柔軟に見直しつつ段階的に取り出し規模を拡大し、廃炉を安全かつ着実に進めていく」と述べました。
その上で「今後、廃炉の根幹となる最も困難な作業段階に入っていく中で東京電力にはこれまで以上に高い緊張感を持った対応を求めたい。国としても引き続き最後まで責任を持って対応していく」と述べました。
福島県 内堀知事「確実に作業進めて」
福島県の内堀知事は9日の記者会見で、東京電力が改めて着手するのを前に「県として東京電力に対し協力企業任せとならない安全管理の態勢の構築や県民目線に立ったわかりやすい情報発信などについて改めて強く求めた。核燃料デブリの取り出しは非常にリスクが高い作業で、県民に不安を与えることがないように万全の安全対策を講じた上で確実に作業を進めてほしい」と述べました。
Posted at 2024/09/10 12:29:19 | |
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